ねえ結構親友って言うのも微妙でさ?
◆ ◇ 天 気 の 良 い 日 は 一 緒 に お 茶 を ◇ ◆
うん、あれは凄く天気の良い日だったな。
「綺麗だねえ・・・・・・」
思わず僕は呟いてしまったよ。
視線は窓の外。空がホントに綺麗でさ。
自然って凄いよね。どんなに高価な絵の具混ぜてもきっとあんな青は出ない。
隣でアーネストが「手を休めるな仕事が減らん」なんて言ってるけど無視。情緒ってモノが欠落してんじゃないの君?
「こーんないい天気なのにさ、『仕事』って言われてもやる気なんか湧かないって・・・・・・」
ちらりと横目で書類の残量確認して後悔した。手を休めたら仕事は減らない。わかるんだけどアーネスト、君の言う事も。
だけどさ、やっぱり。
どうやったって無理は無理。そういうものじゃない?
「・・・・・・あぁ〜あ。」
盛大にため息をついてから、僕はついに立ち上がった。がたん! って椅子が思ったより大きい音立てたけどまあ
そんな事はどうでも良いんだ。
こっそり抜けだそうったって同じ部屋に居ちゃ不可能だし。
「・・・・・・どこへ行く」
「休憩だよきゅーけい。気分転換しなきゃやってらんない。その方が仕事も絶対はかどるって」
そのため息は承諾とみるよ、いいね?
「じゃーね。一時間くらいしたら戻るからさ。君もちょっとは休憩すれば?」
「・・・・・・・・・・・・・・待て」
「何?」
「俺も行く」
「えぇえ?!」
「・・・・逃げ出そうという魂胆が見え見えだ。そうはさせん。」
まったくなんて言い草だろうね?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・否定はしないけどさ。
さすがシンユウ。お見通しってわけ?
降参、の証に僕は肩をすくめて見せた。
ねえだけど多分さ、アーネストも実は書類の山にウンザリしてたトコだったんだよ、きっと。
伊達につきあいは長くないのさ。
お互いにね。
うん、ホントに”偶然”だったんだ。
つまりさ、廊下歩いてた僕らと、こんなにいい天気なのにやっぱりオシゴトに精だしてた”彼”がばったり
出くわしたのがって事なんだけど。
ちょっとびっくりしたな。最近顔見てなかったしね。
ああ、勿論彼の事は知ってるよ? 結構仲は良いんだ。会えばちょっとした会話交わすしさ。以前、少しだけ、
ホントにほんの少しだけだけど一緒に行動した事あるし。
それでも、彼はあくまで”他国の特使”だったからね。会話もちょっと硬かったかな。
「・・・・・・やあ。来てたんだ?」
「ああ。書簡を届けに」
「こんないい天気なのにご苦労様だねえ」
「別に・・・もう終わったし。そっちは休憩?」
「そ。気分転換」
書類が溜まっててさ〜、なんてちょっとばかり大げさに僕は嘆いてみせて、それからなんの気ナシに
アーネストの方に目をやった。
───ねえ、例えばさ、信じられないもの見た時って一瞬息止まったりするよね?
あの時の僕が丁度そんなカンジ。我が目を疑ったよ僕としたことが。
・・・・・・・・・・・笑ってたんだ。誰ってそりゃアーネストがさ。
もちろん嘲笑とかそんなんじゃないよ?
正真正銘、どこからどう見ても”微笑み”そのものを”彼”に向けてたんだよ。
見たこともないような優しそうな顔。もっと言えば”嬉しそうな”顔。
「大変そうだな」
”彼”はそれがどんなに珍しい事なのか全然気付かないみたいにちょっと笑って。
「・・・久しぶり。」
「・・・・・・ああ」
「元気みたいだな」
「ああ」
・・・・・・「ああ」、って君、アーネスト。それしか言えない訳?
僕はまだ驚きから立ち直ってなかったから突っ込みは心の中でだけ虚しく響いたけど、それでも凄く。
凄くなんていうかヘンな気持ちだった。
胸のあたり。
制服の上から手で探る。
「エリオットと少し話をしたよ。」
「そうか」
「ブランクを感じさせない働きぶりだとあんたを褒めてた」
「・・・・・そうか」
「ジュリアも元気そうだったし」
「・・・・・・これから帰りか?」
「そう。」
不可解な混乱から僕がようやく立ち直ったのがこの時。
ねえ言っておくけどさ、僕がこんな状態になるのはホント、珍しい事なんだからね。
「・・・・・・ぁ、じゃあさ!」
何で僕こんなに焦ってるんだろうとか思いながら、でも間違いなく僕は焦ってて、自分の声が妙に乾いて聞こえるし。
まだちょっと頭がマヒしてるし。
胸のあたり。手はそのままの位置に。
色違いの目がこっちを向く。
金と銀。
綺麗だ。
「一緒に行こうよ」
「・・・・・・行く?」
「良いカフェ知ってるんだ。ね、時間あるでしょ?」
「それは問題ないが・・・・・・」
困ったように”彼”は眉をしかめて、僕が「嫌?」と聞く前にアーネストに先を越された。
「・・・・・・どうした?」
「・・・・・・邪魔じゃないか?」
「邪魔だと?」
「二人の」
「・・・・・・何故そう思う」
「いやなんとなく。違うのか?」
「・・・・・・どこをどう間違えばそんな勘違いが出来るんだ・・・・・・」
アーネストはため息をついたけどまあそれは無理からぬことだと思う。
僕も思わず隣で深々頷いてしまったよ。
ナニが嬉しくてこんな情緒欠落人間と二人でお茶しなきゃなんないのさ。
可愛い子がいた方が断然楽しいに決まってるじゃない、ねえ?
「・・・良い天気だよねえ」
日差しも暖かいくらいだから、やっぱりアイスティーにして正解だったな。勿論香りも味も文句なし。満足。
空は相変わらず綺麗な青。
「本当に」
向かいの席で”彼”も頷いて、窓の外の色に目を細めた。
ああなんていうか和むなあ。幸せってこういうことだよね? 隣で涼しい顔してお茶飲んでるアーネストが邪魔だけど。
それでも僕の前にある横顔の方が重要。
ホント、僕でも見とれてしまうくらい。
優しい表情をする。
なんだかヘンな感じ。
「一年前には想像もしなかったのにさ」
僕の呟に”彼”は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにやわらかい顔で笑った。
「・・・・・・本当に。」
息が止まった。
こんな顔、初めて見る。
っていうか僕、なんだかどきどきしてるけど何で?
ちょっとヤバイ気がするんだけど?
ええと。
僕は誤魔化すみたいに視線を彷徨わせて、そしたら。
凄く、物凄く苦々しい顔のアーネストが居たから。
・・・・・・やっぱりヤバイ気がする、のは気のせいじゃないみたいだと思った。
ああでも本当。
もう一年前の事になるんだよね。
戦争真っ只中の時に知り合って、ほんの少しの間だけど一緒に行動して。
あの時。
よりによってリシャール様に剣を向けた”彼”に僕は協力した。
”彼”を信じた。
それは勿論アーネストと交わした約束のせいでもあったけれどそれ以上に”彼”は信じられると思ったから。
その選択が間違いなかったのだと笑える。
後悔がまったくないと言えば嘘になるけれど。
あの時僕に出来る事を僕はしたって。
胸を張れる。
疲れて、青ざめた顔をしていた。
今にも倒れそうな顔をして、”彼”はそれでも戦っていた。
覚えてる。
でももう一年前になるんだね。
凄く貴重な事だとあらためて思う。
のんびり昼下がり、カフェなんかでお茶を飲んで、空が綺麗だなんてどうでもいい事で幸せになったり、
廊下でばったり顔あわせたり、
仕事が大変なんだと嘆く事も、過去を思い出すことも。
それから、笑うことも。
貴重で、不思議。
そんな事に、今になって気付く。
世の中、どうなるかホントにわかんないもんだよね。
でも、それが嬉しいんだ。
僕はどうにか気持ちを落ち着けて・・・っていうかアーネストがあまりにも不機嫌な顔してたから、
ついつい悪戯ゴコロが芽生えたんだけど。
グラスを気障っぽく傾けたりしてみたわけ。
「『運命』、かもね。」
コレがワインとかならもう少し格好よかったんだけどさ。アイスティーだし。
でもいいんだ。
笑ってくれるなら。
なんとなくほのぼのとした雰囲気台無しにしてくれたのは情緒欠落人間。
それが誰なのかは言うまでも無い事だけど。
「・・・・・・・・・そろそろ一時間だ」
「ぇえ!?」
つまり仕事しろって事?! ちょっとそれはないでしょアーネスト!
「すまんな。仕事がまだ残っている」
僕の抗議にまったく耳貸さないで、相変わらず苦々しい顔で僕の腕がっちり掴んで、
席立ち上がりながらアーネストは”彼”にそう言った。
”彼”は「大変だな」と廊下で話した時と変わらない表情で笑って、それから「俺もそろそろ帰る時間だ」と
グラスを机に置いた。
・・・・・それでまあ一緒に店を出て、それじゃサヨナラ、ってわけなんだけど。
あれほど”惜しい”と思ったことはちょっと無いな。
もっと話したかったとか。
もっと笑って欲しかったとか。
でもどんなにお願いしてもアーネストに通用するはずないし。
城で待ってるのは書類の山。
僕は観念してため息をついた。
引き際が肝心、だよ、ね。
「それじゃあ」
「ああ」
”彼”の簡単な別れの言葉に、アーネストはやっぱり簡単に頷いた。
言葉だけ聞けば、なんて愛想のないやり取り。
だけど、アーネストの顔。
あの、表情してた。
”微笑み”。
それを受けて綺麗に笑う”彼”。
ああ、なんだろ。
胸のあたり。
やっぱりヘンな気がする。
ちくちく刺すみたいな。
ぎゅうぎゅう締め付けるみたいな。
ねえ、これってもしかしてナニかの症状に似てる気がするんだけど。
「うわ、マズイ気がするなぁなんとなくコレ」
「・・・何がだ」
思わず呟いた独り言だったんだけど、隣のアーネストには聞こえたみたいで訝しげな顔された。
「いいの? 言っちゃって。後悔するかもよ君。」
「・・・・・・・」
アーネストのため息に、僕は笑う。
言わなくてもわかるか。長い付き合いだもんね。
親友ってさ、ライバルにもなっちゃうわけ。
ほんと、微妙。
ねえお互い、相手は手強いようだね?
綺麗な空。
綺麗な青。
遠ざかってく真紅のジャケット。
その色合いが鮮やかで、思わず名を呼んだ。
「───”カーマイン”!」
振り返る彼に僕は手を振ってみせる。
「また一緒にお茶しようね!」
綺麗な空。絵の具も適わない青。
彼は笑って手を上げた。
それは約束のしるし。
たぶん、また天気の良い日に。
・・・・・・・・・・・・・・ああ、ところでこれはちょっとしたおまけなんだけどね。
そう、サービスって奴さ。
つまり、その後の僕達なんだけど。
アーネストの顔があんまり不機嫌だからさ、ついついからかいたくなっちゃったんだよね。
「仲良いんだね、彼と」
「・・・・・・別に。」
「そう? 嬉しそーな顔してたけど君。」
「・・・・・・」
「それにしても彼、ホントに綺麗だよね」
「男に”綺麗”はないだろう」
「へえ? 君はそうは思わないんだ?」
「・・・・・・・・・」
「カーマイン、かぁ。ふふ、もっと仲良くなれるといいなあ。」
「・・・・・・・・・帰るぞ」
「え?」
「仕事が残っている」
「うっ、わ!! アーネスト! 逃げたりなんかしないからいい加減ウデ離してよ〜」
「うるさい。お前は信用ならん」
まあこんなカンジだったわけ。
それと・・・・・・。
城に帰って。
僕の前に”どーん”と積み上げられた書類の量はどう見てもアーネストの倍くらいあった事も一応。
付け加えておこう。
ああ見えて、あいつも割と大人気ないトコあるんだよ。
生真面目な顔してるくせに、ねぇ?
それじゃ、つきあってくれてくれて有り難うね。
─────── End.
◆ ◆ ◇ ◇
今から二時間ほど前のことなんですが。
パソ立ち上げた瞬間、誰かがこう囁きました。
「・・・・・・ふふふ。僕をココまで無視し続けるなんて、本当に良い度胸してるよね」
─────怖ェ!!!!!
イノチの危険を感じました。奴はホンキだと思いました。氷花、もうしばらく生きてたいです。
・・・・・・・・・そんでできあがったのがコレかよ。命が惜しくないのか私。
こんにちわ氷花でございます。毎度毎度すみませんホントに。
己の駄文っぷりにつくづく嫌気がさす今日この頃。
・・・・・なんとか手軽に上手くなる方法は無いものか・・・(真剣。特に手軽にのあたり。)
今回は”アノ人”視点です。ここまで思い切ったことしたのは初めてです。
・・・・・・というか、それにもかかわらず、なんかものすっごい書きやすかったのはなんでだろう・・・・・・。
心情的に、”きのどくな騎士に〜”より早かった気がします。パソの前で悩む事もほとんど無く。
・・・・・・ってことはナニか!? 私ゃオスカーに共感を覚えてるって事か? オスカー属性か!!??
いいや違います断じて。そうだなんか憑いてたのに違いありません。最近肩重いし。(はっ、駄文の神様なのか!?)
人間、自分の命に関わる事になるとそりゃ必死にもなりますって。
違います。私は温厚かつ良識派。
・・・・・違うったら違うんです。
でも一応アー主はクリアしてますよね? 私的にはそう思ってるんですがコレは皆様的にはオッケーなんでしょうか?
・・・・なんか皆様のお気に召すモノではないような気がしてきました。いや今まで召してたとは思ってないですけど。
でも微妙だしなあ・・・・・・。アー主・・・?・・・。
でもラブ度は高いかと。そう思いません? (何故か毎回ラブ度を気にする私。)
なんとなく、「テンポ良く」した方が読みやすいかと思ったんでしたが駄目でした色々。
そもそも「テンポ」の意味わかって書いたのか。
文章力とか表現力とか、全部ひっくるめて修行不足だと痛感いたしました。
こんなふざけた口調のオスカーは絶対違うと皆様が思われるのはもっともです。
良い家柄なんだからもっときちんとした喋り方するんでしょうけど、私の中ではこんなカンジなので許してください。
軽めの口調でさらっと話す人かなあと。気障な台詞も平気みたいだし。仕事は好きじゃないっぽいし。
そしてところどころで黒い。・・・・なんでだ? ゲームの中ではそんなでもないのに。(いやそれでも”白”では決してないけど)
アレですね、GLサイト様結構まわりましたけど、その影響みたいです。
しかも今回アーさん何となく可愛いんですけど。
リーさんはねぇ、ココだけの話、あんまり”お気に入り”ではないです。
まあアーとカー君に比べたらどのキャラも似たようなものかもしれませんが。
(あ、リーさんってのはオスカーの事ね。”オッ君”とか”オッスィー”とかは自ら滅却しました。でもなんか中国っぽくて
イマイチ。”リーヴス”だから”ルーさん”とか? まあいいや。)
いえ皆好きですけどね?
つまりいつもの二人がダントツ、なわけですが。
例えばアーさんとリーさんの”カー君争奪戦”はとても楽しそうだなあと思います。
今回ちょっとだけやってみたです。生ぬるいけど。
やっぱり楽しかったので満足。(お前だけな)
・・・・・・ごめんなさいもうしません二度と。
だって皆様”アー主”な方々なわけじゃないですか。勿論私もそうですけど。
同盟作品欄にもステキSSとかステキイラとか増えてきたので〜、「こりゃそろそろ私の出る幕じゃないな」と。
だって皆様のアー格好いいし! カー君美人だし! ・・・ウチのアーはヘタレでカー君は天然ボケだからなあ・・・・。
今回もカー君、天然っぷりは健在だったしなあ・・・。
そろそろ隠居しよーかとか思わず真剣に考えました。皆様のステキ作品を糧に。・・・いいかもしれない。むしろその方が世のため?
というわけで(なにがだ)アー主では太刀打ちできなさそうなのでイロモノで攻めてみる私。我ながらせこいですね。
(ていうかイロモノってお前。)「いやここって帝国騎士×主だし! 間違ってはないはず!」とか自分を誤魔化しました。
身に危険が迫ってましたし。
・・・・・なにとぞ、氷花のイノチに免じてお許しを。
それから前BBSでちらっと”カフェ”ネタやったじゃないですか。『とある騎士の華麗なる休日』、あれです。
(誰が覚えてると言うんだろう・・・)書き終わってからああそう言えばと思い出しました。
やっぱりカフェは窓際が好きみたいです私。美形が三人・・・・。ウェイトレスが少し羨ましいかも。
リーさん「僕はアイスティー(にっこりv)。」・・・・・騙されるなお嬢さん。
でも実は書けて良かったとか思ってます。アーさんの表情の事とか、リーさんが一年前カー君をどう見てたとか、
カー君が二人といる事を”嬉しい”と思うこととか。(今回彼の笑顔が多いのはそのためのようです。大サービス。)
凄く、凄く楽しかったです。
・・・・って、また今回もいらん事喋りすぎました。これではいかんなとは思ってるんですが。(なら削れ。)
無駄話が楽しいんですよ。駄目ですねえ。精進あるのみ、ですか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がんばります。(隠居は?)
それでは。
2003 10/30
23:45(おおなんてキリが良い!)
氷花 真夜枷