=蜜月夜= 幼いころからの事情で、僕は人と触れ合うことになれていない。 ましてや、この不吉な瞳をまっすぐに見つめて触れてくるような人など、家族以外、周りにはいなかった。 ・・・いたたまれなくなり、瞳をそらすと怒られた。 逆のことなら何度もあったのに。 ・・・何故この人が、僕が子供のころ傍に居てくれなかったのだろう? そんな理不尽なことを考えていたら、また怒られた。 強く下唇をかまれ。 「口付けの時に他の事は考えないでくれ。」と。 ごめんなさい。 でも、どうしてわかるの? 「・・・どうしてだろうな・・・分かってしまうような気がするんだ、お前の事なら全て。」 ・・・ふしぎだね。 僕も分かる気がする、あなたの事が。 強くて、優しくて、暖かい。 でも・・・。 「ねえ、教えて、もっと貴方のことを。」 知りたい、この気持ちの先にあるものを。 そう僕が言うと 穏やかに僕を眺めていた彼は、薄く笑い 「・・・悔やむなよ?」 と、はじめて僕に見せる獣の表情で覆い被さってきた。 密度の濃い、熱と闇があたりを支配する。 懇願は何とか聞き届けられ、辺りを照らすのは蜂蜜色の月だけ。 ぼんやりと、今夜は満月なのかと意識を飛ばすと。 「・・・頼むから、今は他の事は考えないでくれ。」 ・・・ごめんなさい。 お仕置きとばかりに耳に悪戯を仕掛けられる。 言葉と共に。 「せっかく、二人きりなのに・・・俺が寂しいだろ?」 口調とは裏腹に、彼の表情にはいつもの余裕が無い。 ふと、どちらともなく、息のかかるほど近くで見詰め合う。 ・・・僕の大好きなルビー色の瞳には、妙に神妙そうな顔の僕が映っていた。 もう一度、口付ける。 深く、深く。 息もできないほど求められて、痛いほどに抱きしめられて。 触れ合う素肌から、求められる唇から。 聞こえる、原始の歌声。 それは見事な二重奏で。 「この人が欲しい。」と高らかに謡う。 ほろり・・・と、堪え切れずに涙がこぼれた。 「・・・いや・・なのか?」 急に泣き出した僕の顔を覗き込んで心配そうに、不安そうに彼が尋ねた。 違うと横に振った首を、彼は誤解したようで。 悲しそうに僕から離れる。 違う、そうじゃない。 「欲しかったの・・・貴方が。」 僕はやっとのことでそう言った。 「全部、欲しかったの。」 去りかけた背中を、後ろから抱きしめる。 怪訝そうに、振り返り。 「無理強いするつもりは無い、大丈夫だ傍に居るから、そのくらい待てるから。」 そう彼は、言ったけれど・・・。 やっぱり誤解だ。 僕は、なおも言い募った。 「・・・悲しかったの、(今)傍に居るのは僕だけど、 遠い(未来)は、貴方が僕から離れるかもしれない、なんでもっと(昔)から出会えなかったのかって。」 ・・・言葉にしたら、また悲しくなって、涙があふれ出た。 僕はいつの間に、こんなにも弱く欲深くなったのだろう? ふいに、口付けの雨が降る。 頬に、瞳に、唇に。 悲しみを洗い流すように。 そして、骨がきしむほど強く抱きしめられた。 「・・・お前のものだ、俺の全ては、 (これから)もずっと、 出会えなかった過去は(今)巡り会うためのものだと思えば、許せないことも無い。」 ・・・そうだね。 考えたくも無いけれどもし、もっと(昔)に出会っていて、 傍に居るのが当たり前だと思ってしまったら。 きっと、この愛おしさには気が付かなかった。 ・・・涙が止まる。 「このまま、離さないでね?」 この腕の中から。 ずっと。 「頼まれても・・・手離すものか。」 二人で。 蜂蜜色の月だけが見ていた。 ハニームーンの夜。 END ・・・甘いですね、思い切り。 書き逃げごめん。 と、言うのは嘘ですが。 ・・・人間、己の力量以上の事はしてはいけないのですね。 失敗の香りが仄かに・・・。(いつもか)くすん。 なんか、「家出してやる~」と大見得を切ったのに、近くの公園で泣いている所をあっさり保護された小学生の心境です。 ▽ 管理人戯言 やだ、マーヤ君可愛い!(いきなりそこか) ラブラブすぎてちょっと今わたくし照れております。でも好き。 「俺が寂しいだろ」って格好よすぎですよアーさん!優しいアーさんも好きですが獣的なアーさんもやはり捨て難いです。 惚れ直しました!(いやお前に惚れ直されても・・・・by.アーネスト) あわわ何だか艶のあるお話にまた裏モノ書きたくなってきた腐れた綺月の脳みその阿呆。(いや本当に) 本館かなんかで裏が更新されることがありましたらもう、花丸様に影響されたと思って下さい←おい う〜ん人様のSS見てたら非常に書きたくなってきました。 これから頑張ってみようと思います。そのように思わせて下さる素敵で尚且つ綺月の妄力を煽る艶やかなSSを書いて下さった 花丸様に感謝です。ああ、それにしても最近幸せすぎて恐いよぅ。何か不幸が起きなきゃいいな〜心配です。 |
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