消える事は無い…。 忘れ去る事も出来ない…。 …己の肢体は赤黒く染まり、 …己の心は、血の涙を流す…。 「柘榴」 手に持つ剣は重く錆び付き、赤い海に足を取られる。 歩みを進める度に、心に痛みが走る。 逃げ出したい…。 何度思った事か…。 だが、それは叶う事無く、今もこうして歩みを止める事は無い。 大切な人の為…。 まるで己に言い聞かせるように、何度も呟く。 それが足枷になっていると分かってはいても…。 重い剣を上げ、立ちはだかる壁を切り裂く。 錆び付いた剣は切れに冴えは無く、生々しい衝撃が手に伝わる。 己の感覚は麻痺し、感情さえも見失いそうになってしまいそうな…。 光のない暗闇は、永遠だった。 ……。 違和感。 この世界ではありえない、音が耳に触れた。 ……イン。 足を…止める。 いや、もう進まなくなっていたのだ。 剣だけではなく、服までもが赤い海を吸い重く圧し掛かる。 それはまるで、人の重さのように…。 ずるりと嫌な音が背後で聞こえた。 振り返ってはいけない。 だが、足を?まれ、腕を?まれ…それは這い上がってくる。 剣を振るう度にそれは増え、重さを増す。 そう、まるで海へと沈める為に…。 嫌だ…。まだ、まだ俺は…。 もがき、抗う。 だが、それは敵わず、体は徐々に海へと沈んでいく。 この闇より、もっと深い所へと…。 覚悟はしていた…。 いずれはそこへ帰るのだと…。 だが…。 だが今は…。 まだだ…! カーマイン! 光の声…。 その声に、思わず手を伸ばした。 「…大丈夫か?」 伸ばした腕は、声の主を見付けていた。 「…あ」 暗闇の中、蝋燭の光が銀糸の髪を暖かく揺らす。 それは、夢より美しい光だった。 「うなされていたぞ…」 彼の言うとおり体は汗をかき、冷え切っていた。 「………」 そっと、顔にかかった髪を払われる。 心配げに覗き込むその顔に、心が温かくなった。 …見失わなかった…。 この手を、声を…瞳を。 「…アーネスト…」 両手を差し伸べ、求める。 …抱きしめてくれ…。 「………」 彼も、それを待っていたかのように腕を取った。 優しくその腕の中に包まれる。 言葉はない…。 だが、互いの肌から伝わる温もりが、物語っていた。 離したくない…。 今はまだ…。 だが、いずれそれも叶わなくなるだろう…。 そう思うと、震えた…。 「…寒いか?」 優しい囁き。 これほど落ち着けられる音は、自分は知らない。 「アーネスト…。温めてくれ…」 回した腕の力を強める。 もっと近くに感じたくて…。 …闇は、消える事は無い。 …存在を忘れる事も出来ない。 己の肢体は、血に染まったままで…。 己の心は、今もなお血の涙を流す…。 だが…。 決して自分は一人ではない。 暖かく抱きしめ返してくれる、相手がいる。 それだけで…。 それだけで、救われる…。 たとえ、この先何処に堕ちようとも…。 Fin ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ラブラブです(>w<)g しかも、前作の二作から一気に話が飛んでいる…。いつの間にこんな関係になったんでしょうねぇ(#^o^#) 間の話は、また書きたいと思います。 あ、この話は、某ゲームのDVDを見て思い付きました。 過去の闇に囚われ、光ある世界で自分を見失ってしまっている彼が、たまらなくカーマインのイメージにあってて…。つい…(−w−)ゞ カーマインの場合、暖かい光はライエルって事で♪ で、タイトルは悩んだんですけど、ギリシャ神話のペルセポネの物語から取りました。 冥府の王ハーデスが地上に帰したくなくて冥府の食べ物を食べさせた(色々説はありますが)のが、 柘榴だったと言う訳で、 闇に囚われたカーマインをダブらせてみました(^w^) 美人さんだと言うし〜♪ 毎度ですが、こんな二人で宜しければ、受け取って下さい(≧◇≦)/ 神月 陵 ▽ 管理人戯言 来ました。切ない系ラブラブ話! 悩んでも迷っても結局のところラブラブなのね。悩ましげな美人って妄想力を煽りますよね!(同意を求めるな阿呆) こちらのアーさんも包容力があるというか忍耐強いというか。どのような経緯があってこの関係になったのかが非常に気になります。 やっぱね〜アー主好きなんですよ綺月。(それはもういい) アー主な話ならやっぱりなんだって好きですね〜。でもそれは書いて下さる方々が皆様とも腕があるからなんですね。 本当にもう綺月も精進しなきゃ!っていうか書かなきゃ、ですね。神月様の短い中に凝縮された素敵な雰囲気を持つ作品の数々、 非常に勉強になります。どうやったらこういう綺麗な話が書けるのかしら。やはり精進するのみであります。 というわけで。 綺月のたるんだ精神を引き締めるかのような表現力ある、お美しい作品をどうも有難うございます。 なんかもう、一生かけても恩義が返せなそうです〜(T□T) |
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