大空を。 自由に翔けるあの鳥は。 本当に自由なのだろうか・・・・? + I want set the bird free + 彼を初めて見初めた時。 まるで気高く、優美に空を舞う鳥のようだと。 誰に縛られることもなく、白く穢れない翼を広げる自由な存在だと。 そう思った。 しかしその実態は。 鳥が空を飛ぶのを当然とするように。 彼は戦場で剣を振るうことを強いられていた。 的確に。 眼前の敵を屠る剣を握るその腕は。 容易く折れそうな程に細く、白いのに。 不敵に笑んでいながら、その双色の瞳は確かに哀しみに暮れているというのに。 何故。 誰もが彼を檻に捕らえようとするのか。 綺麗に微笑む仮面の下で苦しみ足掻いているか弱き存在を。 決して。 強くなどなく、簡単に握り潰せる程に弱いはずなのに。 人は彼を強固な者だと信じて止まない。 英雄だと。 口々に持て囃すことで彼がどれだけ傷ついているのか知りもせずに。 傷だらけの翼を。 必死に羽ばたかせ、空を舞っているのに。 人は鳥が自由であると、思い込んでいる。 彼が望んで戦いに身を置いていると。 人を救うために存在するのだと決め付けている。 本当は。 休みたいはずなのに。 空など飛びたくないはずなのに。 誰よりも優しいから。 何もかもを、受け入れてしまうのだろう。 『お前は本当に自由なのか?』 どうにも。 居た堪れない気分になって一度だけ尋ねたことがある。 そのとき彼は。 ただ、ひたすら曖昧に笑んで。 『俺はこうして生きているだけでも、幸せだから・・・・』 だから自由なんて必要ないと。 そう言われたような気が、する。 鎖に縛られることを、檻に閉じ込められることを。 許容して。 鳥は、何時まで羽ばたき続ける・・・? 彼は、何時まで戦い続ける・・・・・・? もう見ていられない。 それ程に。 翼は傷ついている。 もう助けてやれない? そう思うまでに。 彼は遥か高見に位置していて。 それでも。 俺は、例えこの手が届かずとも。 彼を救ってやりたい。 何もかも。 失ったとしても。 彼を助けてやりたい。 大空を。 義務のように飛び続けるあの鳥を。 多くの柵から解放してやりたい。 だから。 俺は。 華麗に舞う、あの優美な存在の。 心優しい彼の、あの翼を。 無理やりにでも手折って。 美しい羽根をもぎ取って。 地上へと引き摺り降ろして。 一時の。 そんな自由でもいいから。 与えてやりたい。 『お前は偶には我侭を言ってみたらどうだ?』 聞き分けのいい。 完璧な。 心なんて持ち合わせていないような。 人形と変わらない。 そんな生き方などしなくていいから。 偶には。 聖人君子な振る舞いなんて捨てて。 誰のためでもなく。 自分自身のために。 勝手気ままに生きたっていいだろう? 『辛いのなら俺の胸と腕は、いつでもお前のためだけに空けておくぞ?』 半分以上、本気で。 しかし悪戯に笑みながら言えば。 彼は一瞬。 驚いたように目を見開いて。 だが、次の瞬間。 彼は肩の力を抜いて。 花のような、優しい微笑を。 俺にくれたから。 お前を救えたと。 助けてやれたと。 檻の中の鳥を解放出来たと。 少しくらい。 自惚れたっていいだろう。 なあ、カーマイン? その日は。 鳥一羽飛ばない。 どこまでも青い、一面の空だけが広がっていた。 END ▽ 管理人戯言 いかん間違って上書きしちゃったから書き直しじゃないですか。 これはいつもお世話になっている氷花様に捧げたSSなんですがもう駄文すぎて言葉も出ませんよ。 カップリングもよく判らないですし。でも一応アー主なんですよ? なんとなくカーマイン氏に呼びかけるアーさん視点の話が書きたかっただけなのです。 それにしても暫く書いてないと大分書くの下手になりますねー、どうしたもんでしょう? |
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