好きかと聞かれれば俺は迷い無く「嫌い」と答えることが出来る。
「気味が悪い・・・」
子どものころから何度も何度も言われた言葉。
そのたびに胸は鈍い痛みを訴えたが、次第に笑顔を浮かべることを覚えた。
「言わないで」そういったところで周りの人たちの認識が変わるわけではない。
不快な思いをさせることしか出来ないのなら、こんなもの隠してしまおう。
伸ばした髪はその色を隠し目立たなくしてくれた。
人と目をあわさないようにすれば、気付かれないことが多くなり傷つくことは少なくなった。
優しい暖かな仲間と出会え、いつしか劣等感は薄れていった。
だから忘れてしまっていたのだろうか?
どんなに人と同じに見えても、俺は人ではないということを。
「金と銀・・・?」
たったそれだけの言葉でこんなに胸が痛むとは思わなかった。






   The moon and the sun





金と銀のヘテロクロミア。
どんなに髪を伸ばしても、俯いても。
わかりにくいだけで決して消すことはできない化け物の証。
人と相容れない存在の証。
「弱いな俺・・・」
彼は無意識だったのだろう。
口にした後慌てて謝罪を述べてきた。
「気にするな」と返したくせに、それ以来彼の顔を見ることが出来ないでいる。
目を合わせれば、彼が怯えた顔をしているのではないだろうか?
気味が悪いと思っているのではないだろうか?
一度そう考えてしまうと見ることが出来なくなってしまった。
「カーマインさん!」
明るい太陽のような笑顔で笑う彼は俺と正反対で、傍に居ることが辛い。
彼と一緒にいると俺の異質さがさらに際立ちそうで・・・怖い。
彼が太陽なら俺はこの道を閉ざす闇だろうか?
全てを覆い隠す、人に恐れを抱かせることしか出来ない――――――。
「眠れないんですか・・・?」
ぼーっとしていると、控えめな声がかけられる。
振り向くと先ほど思い浮かべていた彼が両手にカップを持って立っていた。
「ホットミルクです。あったまりますよ」
「ありがとう」
差し出されたカップを礼を言いながら受け取ると、彼は俺の向かいの岩に腰掛ける。
「何見てたんですか?」
彼の性格どおりまっすぐな目で俺に問いかける。
「闇・・かな?」
これだけ暗ければ、彼に俺の瞳の色が見えることはないだろう。
あの日以来始めて俺は彼の目を見ながら返事を返す。
「人と話すときは相手の目を見ろ」
旅の間何度もウォレスに言われた言葉を守れないことは後ろめたい気持ちがあったので、この闇は俺にとって嬉しいものだ。
「闇?ああ、夜空ですか?」
「いや、空って訳じゃ・・・」
「本当だ。綺麗な満月だ」
違うと訂正しようとしたが、彼はもう俺の言葉を聴いていないらしく、夜空を見上げている。
彼の言葉につられ俺も見上げると、そこには煌々と光を放つ満月。
闇だけだと思っていたのに、こんなにも光があったのかと驚いた。
「綺麗ですね」
嬉しそうににっこりと笑う彼に「そうだな」と返事を返す。
「あ、やっと笑ってくれましたね!」
「え?」
返事を返したとたん、がばっと身を乗り出してきた彼に俺は思わず仰け反る。
「俺が笑うのがそんなに珍しいか?」
「珍しいですよ!」
俺だって日ごろ笑うことぐらいあると思うのだが、彼は俺の言葉を否定する。
「だって、カーマインさんの笑顔正面から見たの俺初めてです!」
「そうだっけ・・・?」
「そうです!!」
少し拗ねたような顔で言い切る彼に慌ててしまう。
今まで彼に目を見られないよう俯いて話していたから、それは当然のことで・・・。
「カーマインさん俺にだけ目を見て話してくれませんよね?」
どうしてですか?と不満気に言われ、どきんっと心臓がなる。
「それ・・は・・・」
俺の目気味が悪いだろう?なんて言えるわけが無い。
どういえばいいかと考えていると信じられない言葉が俺の鼓膜を叩いた。
「俺、カーマインさんの目大好きなんですよ」
「好き・・・?嫌いの間違いじゃないのか?」
彼の言葉が信じられなくて問い返せば、彼は不思議そうに首を傾げる。
「嫌い?どうしてですか?カーマインさんの目、すっごく綺麗じゃないですか」
お世辞ではないまっすぐな言葉で言われ俺は戸惑う。
「綺麗って・・・ウェイン始めてあったとき俺に謝ったじゃないか」
そういえば、今まで強気だったウェインはうっと一瞬言葉を詰まらせる。
「そっそれは・・・綺麗だなって思ったら口に出ちゃって・・・。初対面の人に失礼だなって思ったんです・・・」
おどおどとした口調だが、彼の目から嘘は見つけられない。
「だいたい、どうして気味が悪いだなんて思うんです?貴方の瞳って海と月の色でとっても綺麗じゃないですか」
「海と月?」
またしても聞きなれない言葉に鸚鵡返しに返してしまう。
だが、その言葉は彼の気をよくさせたようで、「そうです!」と彼は身を乗り出す。
「穏やかな海は安心させてくれる。月は優しい気持ちにしてくれる。それって貴方みたいです」
にっこりと本当に嬉しそうに彼は笑う。
「そんなこと言われたこと無かった・・・」
気味が悪いと言われ続けてきたこの目をそんな風に見てくれる人がいるなんて思わなかった・・・。
「海と月・・か・・・」
どうしよう・・・。嬉しい。
「俺が海と月なら、ウェインはやっぱり太陽だな」
「太陽ですか?」
どういう意味です?と不思議そうな顔をする彼に笑みを返す。
「ウェインの笑顔や言葉は俺の心を照らしてくれる。それって太陽みたいだろう?」
「そっそんなこと俺してませんよ!!」
顔を真っ赤にして両手を振り否定する彼が面白くて、抑え切れない笑いが零れてしまう。
「笑わないでくださいよ!」
「ふふっゴメ・・・」
「俺のほうこそカーマインさんに助けられてばっかりで・・・」
すみませんといきなりしゅんっとなってしまったウェインに思わず苦笑する。
俺は彼に助けられていると今言ったばかりなのに彼には伝わらなかったのだろうか?
「そんな事気にするな」
「でも・・・」
気にするなといったのに、まだ申し訳なさそうな顔をしている。
どういえば彼に伝わるだろうか?
ああ、そうだ・・・
「なぁウェイン俺は月なんだよな?」
「え?あっはい」
俺の質問の意図が分からないウェインは戸惑いながらも素直に返事をする。
そんな彼にふわりと笑いかける。
「月が太陽の傍にいるのは当然だろう?」
だから気にするなと再度言うと、彼は先ほどより真っ赤になった。
火が出そうと言う言葉はこういうときに使うのだろうか?と思ってしまうほど真っ赤だ。
「あの・・カーマインさ・・いいいいい今の言葉の意味分かってます??!」
「意味って?」
「・・・・・・・・・やっぱり」
「やっぱりって?」
「もういいです。忘れてください」
「よくないだろう。俺が気になる」
「いいったらいいんです!!ほら、もう寝ますよ!明日も早いんですから」
おやすみなさいと毛布をかぶって丸くなるウェインの体を揺さぶっても彼は頑として教えてはくれなかった・・・。



 Fin



すみません。こんなものを送りつけてしまって・・・。
素敵同盟に参加させていただいているので、なにか私も作品を!!と思い、書いたのですがこんなものに・・・
ウェ主で一番乗り☆と思ったのですが・・・あれ?な話になってしまい申し訳ありません。



▽ 管理人戯言
きゃあ、結城様ウェ主一番乗り!(笑)
そしてもう、カーマインさんって何でこんなに可愛いのかしらと思わず身悶えてしまいます。
彼には強いイメージがありますので、こういう弱い一面が垣間見れるのは不謹慎ですが嬉しかったりします。
庇護欲を駆られますね!それに付け加え、無防備で無意識に人を惹きつける魅力に万々歳です!
そしてウェインは素直に感嘆の言葉を告げられるその度量が愛しいです。見ていて和む二人ですねv
個人的には「よくないだろう。俺が気になる」のカーマイン氏の一言が物凄く彼らしくて好きです(お前の主観はいい)
素敵な作品有難うございましたーvvv


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