白ヤギさんから黒ヤギさんへ



謹啓 ウィンクレイス卿にはお元気の趣、何よりとお慶び申し上げます。
私の方は、相変わらず元気に暮らしております。




…なんて書くと、きっと苦い顔をされるんでしょうね。
冗談ですよ(笑)



こんにちは、エリオットです。



勿論、元気というのは本当ですよ。ナイツ一同もつつがなく過ごしています。
ジュリアさんは騎士団の指導を頑張ってますし、クルーズも少しずつですが慣れてきたようで す。ああ、
ライエル卿が戻られてから、仕事が少し楽になりました。流石ですねぇ。リーヴス卿 は相変わらずです。
僕も随分と執務に慣れました。毎日忙しいのですが、元気な分、暇を感じてしまいます。
いい加減、デスクワークにも飽きて来てしまいました。
でも、気分転換で表に出ようとすると、すぐにバレちゃうんですよ。一体、どこで見ているんでしょうか。


そんな訳で、僕の道楽は無くなってしまいました。
だから、身近にあるモノで愉しんでみようかと思い、『観察日記』なんて作ってみました。 意外に楽しいんですよv
書いてて思ったんですが、何ていうか、平和になったなぁ、と感じます。
…インペリアル・ナイツって、心技体を求めても、人格は気にしないんでしょうかね。難しいです。


それでは、失礼しますね。




ご自愛のほど、お祈り致します。
末筆ながら、皆様にも宜しくお伝えください。

謹白




P・S
お城の事気にしてくれましたし、アルナーグスさんにはちょっとだけ日記、見せてあげますねv
ノート同封したので、暇な時にでも見てみて下さい。みんなには内緒ですよ!








―*−*−*−*−





*日記*


 ■ 6月13日 【曇り】

まっさらなノートを見つけました。
ここ最近、外に出ようとしても直ぐに見つかっちゃうし、雨だと出るのもちょっぴり億劫なので、
コレを日記にして見ようかと思います。
でも、普通の日記だと面白くないですよね。だって、同じ事しかやってませんし。
平和すぎると、変化を求めちゃいそうで怖いですね。
何かないかなー。




■ 6月22日 【雨】

今日も雨でした。湿気でべた付いて、嫌な感じです。
ナイツの皆さんがよく集まる部屋の前を通ったら、やっぱり皆さんそこに居ました。
パッと見た感じでは、ライエル卿以外はぐてんぐてんでした。
僕には独りで仕事をしろと言ったくせに、皆さんは集まって仕事するなんて、何だかズルイです。
僕も手伝って貰いたいなぁと思って、覗いて見ました。


「ぅあっつー…」
「………」
「お茶どうぞ…」
「ああ、すまないウェイン」
「あ、僕にもちょうだい〜」
「はい、どうぞ。ライエルさんも、どうぞ」
「ああ」
「しっかし、どうにかなんないの?この湿気ー…」
「…ホントですよね。せめて湿気だけでもどうにかなってくれれば…」
「…はぁ…」
「あ、ジュリアン。髪、上げてあげよっか?」
「へ?」
「それだけ長いと、纏わり付いちゃって、あんま気持ちよくないでしょ?」
「まぁ、確かに…」
「じゃ、やってあげる。アップしたら、きっとカワイイよ〜v」
「か…!…からかうな、リーヴス!!それに今は執務時間だろう!」
「照れちゃって〜。きっと、アルナーグスも誉めてくれるよ〜?」
「………」
「…ぅ…!いや…、しかし…」
「ほらほら、おいでおいで」
「うぅ……」
「ジュリアンくらい量も長さもあると、重くなっちゃうかなー。痛かったら言ってね」
「髪、いじれるんですか?」
「勿論!この位の事は、朝飯前だよ」
「………」
「ウェインもこの時期は辛そうだねぇ。量、多いし。まぁ、僕も似た様なもんだケド、そっちは黒だし」
「うーん、コレが当たり前だから、いまいちピンとこないんですけど…」
「ああ、それもそ――」
「えーい、髪の毛なんぞ後でいい!仕事をせんか!!」
「うわぁ、はい!!」
「お前もだ!!」
「ああ、動かないで…。よっし、出来たー。ジュリアン、カーワイv」
「オスカー!!!!」
「…うるっさいな〜。バッカじゃないのー?髪の毛位で、イライラしちゃって」
「…何…?!」
「髪って、女性の命なのに。ねぇ?」
「そ、そうなんですか……?あ、ジュリア先輩、似合ってますよ」
「ど、どうも…」
「俺はジュリアンに言っているのではなく、お前に言っているのだ、オスカー!」
「…ああ、そういう態度取る。僕には随分と風当たり強くない〜?」
「お前だけが問題を起こしているんだろうが!!」
「嘘だね。アーネストはジュリアンにだけ甘い!!差別だ、差別。男女差別だ!
男女雇用機会均等法が施行されたんだぞ?!アーネストのやってる事は、ジュリアンへの差別だ!!!この頑固親父!!!
僕はフェミニストの名に賭けて宣言するよ!!男女差別・反対ー!!」
「話をすり替えるな!!!誰がそんな事を言った!!!お前がジュリアンを巻き込んでいるだけだろうが!!!」
「ホーラ、また庇う!!あ、ダメだよ!ジュリアンはアルナーグスのだからね!!」
「…頼むから、私を巻き込まないでくれ…」
「誰がそんな事を言った!!俺は髪で遊んでいる暇があるならば、仕事をしろと言っているのだ!!
ジュリアンはその状態でも仕事をしているだろうが!!少しは見習え!!!
大体、お前は最初っからやる気なんぞなかったろうが! 見てみろ!!お前が扇いでいたせいで、
書類が飛び散っているんだ!!!これでは纏めた意味がないだろうが!!!」
「ああ、やだやだ!そうガミガミねちねち言わないでよね、小姑!!そんなんだから、頭は白くなるし薄くなってるんだよ!!」
「誰が…!!」
「ああ!羨ましいんだ、アーネスト?君の髪じゃ、さっきの会話に入れないもんねぇ?そんな薄
くて、ギリギリのMパゲじゃ相槌すら打てないもんねぇ?ゴメンねぇ、僕達みぃんな、ムダに髪の毛多くって〜ェ!」
「言わせておけば好き勝手なことを…!!!」
「あーあー!何度でも言ってあげるよ!!この――」


…他力本願って良くないと思いました。
それにしても、ナイツって見ていて飽きないですよね。この日記、ナイツ観察日記にしようかな。





*ナイツ観察日記*



■ 7月1日 【晴れ】

結局、ナイツ観察日記にしました。でも、待ち構えているとなかなかネタになる事ってないんで すねー。
意識し過ぎなんでしょうか。


「あ、アーネスト。頭に…」
「ん?」
「ほッ!!!」
「―――ッ!!!」
「ちょ!信じらんない、アーネスト!何、避けてるのさ!!」
「避けるに決まってるだろうが!!なんのつもりだ!!!」
「蚊が居たの!!そうやって、人の親切心を無下にしやがってー!!」
「何が親切心だ!!!蚊退治に分厚い年鑑を使う莫迦が何処にいる!!!!」
「バカはどっちさ!!!この――」


…もしかしたら、身近に在り過ぎて判らないだけかも知れません。





■ 7月5日 【晴れ】

…暑いです。暑くて仕方ありません。
リーヴス卿が「暑い暑い」と連呼していたのですが、ハッキリ言ってコッチのがあっついです…。


「…陛下、機嫌悪そうだね…」
「暑いからな…」
「…ナイツ以上にきっちりとした造りだもんね、アレ」
「加えて、帽子にマフラーだからな…」
「今日、湿度高くて普通にむーん、だしね…」
「汗疹が出来なければ良いが…」
「脱ぐなって、自分で言ったくせに…」
「それは――」
「ひぃ!目が合った!!」
「――ッ!!」
「見た?!今の!?」
「あ、ああ…!」
「目で殺されるよ!!どうにかしてよ、アーネスト!!」
「ど、どうしろというのだ!?」
「ホラ!こう、なんか、気が紛れる様なモノ!」
「あー…!ど、動物と戯れるとか?」
「バカアーネストッ!このクソ暑いのに、ムダ毛の塊なんか仕向けてどうするつもりさ!ケンカ献上する気?!」
「では、お前はどうなのだ?!その萎んだ脳から、何か搾り出せ!」
「言われなくとも!ここはやっぱり、アイスとか甘くて冷たいので…!」
「莫迦はお前だ!この間、それで体調を崩させただろうが!!お前が、調子に乗って用意するから!!」
「だって!陛下、オイシソウに食べてくれるんだもの!!作り手にとって物凄い嬉しい事なんだぞー!!!」
「それで体を壊せば、本末転倒だろうが!」
「自分が作ったおかゆが不評だったからって、僕に当たんないでよ!」
「不評も何も、粥に味なんぞな――」
「ひぃ!また目が合った!!」
「――ッ!!」
「ちょ…!ホント!なんかネタ出してよ…!!」
「…そうだな…!何か考えねば…!!」
「…ネタネタネタネタ………」
「……………………………………………」
「…………………………………………」
「……………………………………」
「……………………………」
「…………………………」
「……………………」
「…………」
「…………。…なんて言うかさぁ…。簡単にネタが出たら苦労しないんだよね…」
「………………言うな……」
「…やっぱさぁ、手っ取り早く、避暑じゃないー…?」
「避暑、か…」
「…そうだよ、やっぱり避暑だよ。避暑!!行こうよ、避暑地!!コムスプリングス行きたい
ー!!温泉入りたいー!!!」
「俺はラシェルがいい…」
「ラシェルなら、僕がいつでも送ってあげるよ。心配しなくても片道切符でv僕と君の仲だし、
何なら永住させてあげてもいいよ!だーかーらー、コームースーー!!!」
「貴様…!!ええい、避暑も駄目だ!公務がお有りだろうが!!」
「持っていけばいいじゃない!」
「謁見もあるだろうが!」
「そんなモン知るか!公務員にはストライキの権利があるハズだぞ!?」
「特別国家公務員にそんな権利が有るか!しかも、お前の話ではなく、陛下の話だ!!」
「クッソー!横暴だぞ!!」
「やかましい!俺に言うな!!」
「大体、ナイツなんて体の良い雑用――ひぃ!目で怒られた!!」
「お前が五月蝿いか――ッ!!」
「ざまぁみろ…!アーネストも怒られてやんの…!」
「黙れ…!」


寝不足もあって、ちょっぴりイライラしてましたけど、怖いなんて失礼ですよね。
…それにしたって、どうしてあの二人はあんなに元気なんでしょうか。
やっぱり、服も慣れなんでしょうかね。
…アイス、食べたいなぁ。





 ■ 7月7日 【晴れ】

今日は『七夕』だそうですね。


「どういう日なんですか?」
「神話ですが、今宵が晴れれば、離れ離れになった恋人が年に一度会えるそうです」
「わぁ。ロマンチックなんですね」
「まるで、僕とアル…ガフッ!」
「――少しは黙っていろ…!!」
「アーネス…と…!いきなり…なにす…ッ…!」
「陛下の逆鱗に触れる気か…!」
「まだ…、何にも、言って、な…!!…ッどうでもいいから、く…び…!!襟を放、せ…!落ーちーるー…ッ!!」
「…お前なら大丈夫だ。もう暫く黙っていろ…!」
「死ぬっつーの…ッ!!!」
「巡り会いを祝うお祭りなんですか?」
「……ッ…!!」
「え、ああ、いえ。確か、短冊に願い事を書いて笹に掛けると、その願いが叶うとか…。
元々は、字や歌・裁縫の上達を祈るものらしいですが…」
「ぅ。」
「へぇー。お二人はやった事あります?」
「いえ、私は…。ああ、オスカーは毎年やっているみたいですが」
「………」
「陛下もやってみますか?」
「うーん。誰が叶えてくれるんですか?」
「…………」
「恐らくは、件の恋人二人だと…」
「ふーん。じゃあ、やらないです」
「は?何故ですか?」
「……………」
「え?だって、その二人、年に一度会えるか会えないかなんですよね」
「ええ」
「………………」
「だったら、他人の願い事に感けてる暇なんてないんじゃないんですか?自分達がどうなるか分からないのに」
「…そう…です、ね…」
「…………………」
「でしょ?願い事なんて、きっと眼中にないですよ。あ、じゃ、僕行きますねー」
「…はい」
「あ、いい加減離さないとリーヴス卿、逝っちゃいますよ?」
「………ああ、そうでした……」
「………………………………」
「では〜」
「…………………………………」
「……逞しいと言うか、何と言うか……」
「……………………………………」
「…オスカー、お前も少し見習ったらどうだ?」
「………………………………………」
「………逝ったのか………?」


僕もアルナーグスさんと年に一度しか会えなかったら、仕事どころじゃなくなっちゃいますね。頑張ろうっと!
そういえばあの後、医師団が慌てていましたね。
あ、僕、錯乱した人って初めて見ました!
リーヴス卿が、お花畑が見えた!とか、レテ川の向こうでリシャール様がおいでおいでしてた! とか、良く判らない事
言ってたんですよ。 鬼気迫るものがありましたねー。





―*−*−*−*−




拝復 陛下にはご繁栄の由、大慶至極に存じ上げます。
常々ひとかたならぬお心配りを賜り、衷心より深く感謝致します。




…さぁて。ここまで書けば、無礼には値しないか?
畏まった文章、判ってて書くなよ、全く。確信犯的な事ばっかやってると、ロクな大人になれないぜ?
…頼むから、オスカーみたいにはなってくれるなよ…。


しっかし、連中。何やってんのかね。バーンシュタインも平和な事だな。
エリオット。十中八九、ナイツっていうか、連中と一緒に居るんだろ?あんま、構うなよ?アホが移るから…。
ジュリアも大変そうだな。大人気ない親父二人の相手に、騎士団。無理しなきゃいいが。
ウェインも慣れた様で。結構なことだ。
それから、オッサン二人組には精々、目出度いオツムにカビが生えないよう気をつけろ、って
伝えておいてくれ。頭がカビて、ラシェルにでも来られたら堪ったもんじゃあない。


そう、日記。あんま送らないほうが良いんじゃないのか?
見る分には断然、愉快で良いんだけど。事故ったらシャレになんないだろう。
包み隠さず書いてるみたいだし。ナイツのアホっぷり、世間に知れ渡るぜ?
ああ、その時には古株二人を切れば良いのか。その前に懲戒処分でどうにかなってそうだがな。
どっちにしても、今のうち後釜見つけて、しっかりと育てとけよ。
まぁ、問題が無いんなら、また見せてくれ。こっちもウォレスのオッサンに酒止められてから、道
楽なくなってさぁ。
本読む時間もねぇのに、どうしろってんだか…。


なんか、愚痴っぽくなってきたな。
なんにしても、無理はするなよ。
じゃあ。




相変わりませぬご高配を賜りますようお願い申し上げます。
(うっわ。やっぱ顔見知りにこういうの、尻こそばゆいわ。じゃあな)



敬白



深浅:まめ鯖様より

やったぜ☆今ではすっかり威厳も尊厳も失われつつある(お前の所為だがな)
某二人組みのショートコントを頂きましたvvv
まあ、エリー何食わぬ顔というか無邪気な笑みで黒いなんて素敵ー!!
そしてライエル卿、オスカーに初勝利!(首絞めた辺りがv)
やったね!今夜はお赤飯だよアニー!!!

そんな訳で目いっぱい、力の限り笑わせて頂きましたv
流石です。愛してます(変な事言わない)
ありがとうございます、まめ鯖様vvv