欲しいものは無いかと聞かれ、いつも答える事はできなかった。
特にそう望むものは無かったから。



   欲しいもの


  生きていてくれればいい。
  側にいたい。
  側にいて欲しい。
  仲良くなりたい。
  好きになって欲しい。



アーネストにあってから随分と自分は欲深くなったと思う。
次から次へと望んでしまう。
十分だと思っていたのに、すぐ物足りなくなってしまうから。



今だって、アーネストの側にいられるというのに、なんだか面白くない。
邪魔しちゃいけないって解ってるけど・・・
「どうかしたか?」
いけない。見過ぎていたらしい。
俺の視線が気になったのかアーネストが俺を見る。
それが嬉しくて自然に笑みが浮かぶ。
本当は構って欲しいけど、俺だってそこまで子供じゃない。
「何でもない。気にするな。」
そう言うと、アーネストは不思議そうな顔をしながらも、机上に顔を戻す。
・・・・・・あっ。なんかまたムカムカする・・・。
俺の視線がアーネストの邪魔になるって解ってるけど、見るのをやめられない。

「・・・何か言いたい事があるなら言え。」
今度は俺の方を見ずに話しかけてくる。
何かこれってないがしろにされてる気がする。
「べ〜つ〜に〜」
うわぁ・・・腹立つ言い方だな俺。
アーネストも俺のこの言い方にムッとしたのか、苛々したように髪を掻き上げお得意のため息をつく。
「それが別にという態度か?」
「そうだよ。俺の事はいいからさっさと仕事やれば?」
ふんっと顔を逸らして言う。これじゃまるでだだをこねる子供だな。
解っていてもムカムカして、やめられない。
「お前がそんな態度なのに仕事出来るか・・・。」
「しないのかv」
しまった!思わず嬉しそうに反応してしまった・・・。
これじゃバレバレじゃないか!!
「―――お前もしかして・・・」
「ちっ違う!!そんなんじゃない!!」
「すねているのか?」
「違――う!!!」
自分でも顔が真っ赤になってるのがわかる。
せっかく我慢してたのに自分からばらしてどうするよ俺!!
赤い顔を見られたくなくて俯いていると、ギシッとアーネストがイスから立ち上がる音が聞こえた。
「ディオン」
「っ!」
優しい声で呼ばれ、抱き締められる。
「どうして欲しい?」
・・・・・・アーネストはずるい。
解ってるくせにわざわざ聞いてくるなんて・・・。
「ディオン・・・」
耳元で囁く声に思わず素直に答えそうになってしまう。
でも、言ったらアーネストは呆れるんじゃないだろうか?
俺自身なんて欲張りなんだって思うんだから・・・。

何時までも答えない俺に焦れたのか、
「答えぬのなら、仕事の続きをするが。」
そう言い離れていくアーネストの体。
アーネストと離れた事により触れる冷たい風が嫌で、
「やだ!!」
考えるより先にアーネストの袖を掴んで叫んでしまった。
そんな俺の反応が予想外だったのか、アーネストは一瞬目を見開いた後、くっくっと喉の奥で笑い出す。
「笑うなバカ」
悔しくて彼の髪を軽く引っ張るが、アーネストは気にせず笑い続ける。
そんなに笑わなくてもいいじゃないか!
「すまん。それで、俺を引き留めたんだ。言う気になったか?」
さっきまでの笑いは引っ込んだものの、まだにやにや笑っている。
アーネストの笑っている顔は好きだが、この笑いは好きじゃない。
いつもいつも自分ばっか余裕あってずるいよな。
本当は言いたくないけど、言わなければ本当に仕事に戻ってしまいそうだ。
「・・・・・・俺のコト見て欲しいって思ったんだ。」
そう言うと、アーネストはさっきまでとは違う笑顔になった。
ふわりと優しい綺麗な笑顔。
この顔は好きだな。
恥ずかしかったけど、こんな顔を見ると言って良かったと思ってしまう。
「ライエ・・・アーネストは、俺にして欲しい事は無いのか?」
俺だけ頼み事するなんてずるいよな。
そう思い聞くと、さっきまでの優しい笑顔から俺の嫌いな顔に変わる。
・・・・・・なんか俺、やっちゃった・・・?
「言っていいのか?」
何だかとっても嫌な予感はするが、言ってしまったものはしょうがない。
「ああ。」
そう答えると、アーネストの顔が近づいてきて――――。
「アアアアアアアアーネスト!!!!」
「どうした?お前が言ったのだろう?」
「俺は言えと言ったんだ!しろとはいってないだろ!」
「早いか遅いかの問題で、結果的にはかわらないだろう?」
「そう言う問題じゃない!!」
「嫌だったか?」
さっきまでにやにやしてたくせに、今度は悲しそうな顔をする。
どうせ演技なくせに!
・・・・・・・・・演技・・・のくせに・・・
・・・・・・・・・・・・・演技の・・・・・・・・・・
――――くっそぉ―――!!!!
「・・・・・・嫌じゃない」
ホントずるいよな。
いつも大人で俺をガキ扱いするくせに、俺が弱いとわかっててそんな顔をするんだから・・・。
そっちがその気なら俺だって困らせてやる!!
「今日はもう仕事するの禁止!!ずっと俺の側に居てよね!!」
どうだ!困るだろ?ライエルもちょっとは困ればいいんだ!!
・・・そう思ったのに、なんで嬉しそうな顔してるんだ?
「仰せのままに。」
そう言い騎士のように(騎士だけど)俺の手の甲に口づける。
困らせるつもりだったのに、なんでか逆に喜ばせてしまったようだ。

でもよかった。俺の本当の願いを聞いても、呆れなかったから。
これからも俺の願いを聞いても、呆れないかな・・・?


ずっと止まらないんだ。次から次へと願いが出てくるから。


  生きていてくれればいい。
  側にいたい。
  側にいて欲しい。
  仲良くなりたい。
  好きになって欲しい。

  俺だけを見て。
  いっぱい抱き締めて。
  好きだと言って。




止まりそうにないこの想い。
この想いに終わりなんてあるのかな?
どうかその日まで、彼がずっと俺を好きでいてくれますように 





fin




色褪せぬ記憶:結城様より

いやもう、何ですかこの愛おしさ!!
1主君めろめろに蕩けるほど可愛いんですが!!
アニーに上げるの勿体無いくらいですよ(消される)

でもこういうアニーさん好きですvv余裕ぶっていながら内心では
もう1主にぞっこんだと信じてます!!(お前の妄想はいい)
愛って素晴しいですよね!素敵小説有難うございました〜!!!