The heart by which it was caught



不安


悲しみ


戸惑い


彼の瞳から感じ取れるものはそんなものばかりだった。
彼とは言葉を交わした事も少なく、剣を向け合っていたのだから仕方ないと言えば仕方ないのかも知れない。
それなのに・・・なぜだろう?
なぜこんなにも俺は彼に惹かれてしまったのだろうか?




ウェインになぜこんな所にいるのかと、それでいいのかと問われても何も思わなかった。
守りたいと、守らなければと思っていた者を失った今、何のために剣を振るえと?
もう・・・放っておいて欲しかった。
俺に構うなと。

俺を見るなと―――――――――






ウェインの言葉も頭に入らずただ通り過ぎる。
彼が諦めるまでの辛抱だと思っていたその時、不意に彼と目が合った―――――――――


それはすぐに逸らされてしまったが、俺の心を揺るがすには十分な時間だった。
悲しみ――苦しみ――――
彼の瞳から読みとれたのはそんな感情。
いつか見た事のある色。
いつだっただろうかと考えすぐに思い当たる。
リシャール様を失った時の―――――――――


誰かを責めるのではなく、自分を責めている目。



今の俺は彼を苦しめている――――――――――――?




胸がズキリと痛み出す。
それは長い間忘れていた痛み。



誰になんと罵られようと構わない。
そんな思いは数秒にも満たない彼の瞳を前に消え去る。


どんなに罵られても構わない。
どんなに傷つけられても構わない。
でも、彼が傷つくのは許せない。
それが俺のせいならなおさら―――――――――!!





彼と共に過ごし、言葉を交わす。
流れる時と共に、彼の瞳に込められる思いが少しずつだが、変わってきた。



不安や悲しみ、それは柔らかな笑顔へ。
戸惑いはまだ消え去りはしないが、少し和らいできたような気がする。
そして――――――


「ライエル」
苦しげに紡いでいた俺の名を柔らかな声で紡ぐ。
それに返せば、とても綺麗な笑みを見せてくれる。
たったそれだけで俺の心は安らぐ。






彼は知っているのだろうか?
彼が悲しみに瞳を揺るがすだけで、俺の心に闇が宿ることを。
彼が微笑むだけで、俺の心に明かりが灯ることを。



知ればどう思うだろうか?
この思いを受け止めて欲しいなど望みはしない。
望むのは彼のその笑顔が消えない事。
それを揺るがすものが、二度と現れない事。
そして――――――

「ライエル」

彼のその柔らかな声がずっと俺の名を紡いでくれること―――――――――。




fin




色褪せぬ記憶:結城様より

ぎゃー!!アニー!!(落ち着け)
片思いなアーネスト話をリクさせて頂いたのですが、
切ないです。でも彼視点だと切ないだけでなく温かみがあって
とても好きですvvvアニー、いい人だー。片思い大好物なので
狂喜乱舞であります!!どうか幸せになって欲しいものです。
毎度素敵な作品を私一人でガメてすみません!
そして有難うございます!結城様〜vvv