※CAUTION ・ゼオンがルーファスの副官で上官×部下なパラレル設定 ・被災地はカーマインIK化パラレルのバーンシュタインで ・今回の被害者はカーマイン+相手が美系の男達と知って付いてきた過保護な恋人二人の三人で 以上が今回頂いたキリ番リクエストです。 パラレルにパラレルを重ねた特殊設定ですので読む際にお気をつけ下さい。 大丈夫だぜ!何でも来いやああ!!という頼もしい やって来た異邦人 鈍く光る灰色の空から止まることを知らぬように降り続く雪は深々と儚い音を奏でる。 冷たい窓ガラスの向こう、広がる幻想的な光景。口を開くことすら憚られるほどに。 ―――けれど。 「ここは一体何処なんです。ああ、それよりもあなた方、私のゼオンに勝手に触らないで下さい。 一体誰に許可を取っているのですか。幾ら彼が可愛いからと勝手は許しませんよ!」 「「・・・・・・・」」 運び込んだ医務室で、目を覚ました片割れが小鳥の囀りの如く、かしましいことこの上ない。 一瞬、鳩尾に一発決めて黙らせてやろうかと不穏なことを考えたのは、アーネスト。 初見の相手にそこまで思ってしまうのは、何となく目前の相手が誰かに似ているからだろう。 その誰かを横目で見れば他人事のように微苦笑を浮かべている。同類の、くせに。 「・・・・オスカー」 「何、アーネスト?」 「・・・お前が面倒見ろ」 「何でよ」 「ドッペルゲンガーみたいなものだろう」 何が、とは敢えて告げずに細面を傾ける。緋色の瞳に僅かに残る悪戯っぽい光にオスカーは全てを語られずとも 言いたいことを察したらしく、あからさまに眉間へと皺寄せた。 「・・・僕はあそこまで酷くない」 「鏡より良く似ていると思うが?」 「何処が」 「かしましい上に人の話を聞かない」 「そりゃ君でしょ」 「なんだと?」 起き抜けで半ば癇癪を起こしていた異邦人を完全に無視してアーネストとオスカーはいつもの調子で 取るに足りない子供の喧嘩を始める。双方が貴族で軍人最高位ということもあり、中々その下らぬ争いを 止めることが出来る者は存在しないのだが、例外で存在する彼の人はそっと二人に近寄り。 「・・・いい加減にしろ、二人とも」 「「いっ・・・!」」 ぎゅうとそれぞれの腕辺りを抓って背後から現れたカーマインは呆れ返った瞳で二人を見やった後、 置いてきぼりを食らった異邦人へとその視線を向ける。 「・・・不安にさせて申し訳ない。俺はカーマイン=フォルスマイヤー。この国の・・・軍人だ。 君たちが急に空から降ってきたため、一応簡易だが手当てをさせてもらった。不快に思われたのなら謝る」 「・・・・いえ。私こそすみません。取り乱してしまいました。助けて頂き感謝します・・・カーマイン殿。 それから後ろのお二人も。私はルーファス。気を失ってる方がゼオンシルト。我々二人ともグランゲイルの士官です」 落ち着いた対応を見せたカーマインに、僅かに警戒心を薄れさせたルーファスと名乗る青年は 未だベッドで眠りについているゼオンシルトの髪を愛おしげに撫で、軽く三人に向けて頭を下げた。 それを受けてふとアーネストは小首を傾げる。 「・・・グランゲイル?何処だそれは。聞いたこともないな」 「ひょっとしてあの未開の遥か東の大陸にある土地かな?」 「違うんじゃないか?そこは確か倭の国とか言う・・・随分と我々から掛け離れた独自の文化を持つ国と聞いている」 「じゃあ他にグランゲイルなんて何処にあるっているのさ?」 「・・・だから、俺が知るか」 はっ、と鼻で笑って肩を竦める長身。睨みつける蒼灰の瞳。一度収まりかけたいつものこと、が再度始まりそうな気配に カーマインは一つ咳払いをする。途端、ばつが悪そうに顔を合わせる年長者。どんな人間でも大概が好きな相手には弱いもの。 余計なことは口にしないよう、とアーネストとオスカーは口を噤んで一歩後ろへと下がる。必然とカーマインとルーファスが 向き合う形になった。両者ともやや戸惑いがちに。けれどルーファスはカーマインに対しては警戒心を解いている。 それは彼が他の二人に比べればまともだと思ったのか、それとも”ある意味”で危険がないと判断したのか ほんのりと口元に微笑を浮かべた。 「・・・貴方は大丈夫そうですね」 「・・・?何がですか」 「フフ・・・貴方からはゼオン同様、受けの匂いが「待てぇぇぇ」」 怒声と共に、漆黒髪の少年の耳が背後の男によって塞がれる。急に聴覚を遮断されて異彩の瞳はきょとりと瞬く。 次いで背後を振り返れば焦ったような、怒ったような緋色の瞳が自分を通り越してルーファスを見ていた。 「貴様!俺のカーマインの耳を汚すことは許さん」 「はあ・・・。何を過敏に。受けなんて所詮、XXXをXXXされるだけじゃないですか」 「だから言うなと言ってるだろうが!斬るぞ!?」 ジャキン、と抜き放たれた長剣に穏やかな相貌は僅かばかり眉間を顰め。 「乱暴ですねえ・・・。まあ、あなた方はどうやらその子がお気に入りの様子。変に疑ってすみませんでした。 それも偏にゼオンが可愛すぎるから・・・!!私は心配で心配で仕方ないのです・・・!」 「それはもういい。と、いうか話が長い」 「それについては珍しく同意見かな」 「・・・・・・・・・」 自分達でも口にしているように、珍しく意見の合った二人の後ろ。何とも言い難い表情でカーマインは思うところがあるのか、 否定もしなければ肯定もしなかった。ふと、ゼオンと呼ばれた恐らく青年へと視線を降ろす。気を失っていると言うよりは、 幸せそうに眠っているように見える。きっと寝るのが好きなのだろう。すよすよと心地よさ気な寝息を立てて、ルーファスに 擦り寄るよう眠り続けていた。多少声を掛けたところで起きそうもない。 「・・・何か、幸せそうだな彼は・・・」 それなりに騒がしいにも拘らず、寝息は途切れない。 「ゼオンはお昼寝が趣味みたいなものですから」 「・・・・あんまり寝すぎると脳細胞って死ぬらしいよ」 「ちょっとそちらの紫の貴方。それはゼオンが馬鹿だと言いたいのですか?」 「いやいや、僕そんなこと一言も言ってないでしょ?むしろ君の方がバカっぽいと思うんだけど」 挑戦的な科白に金色の鞭が抜き放たれる。 ふわりと微笑んでいながらもその瞳は明らかに敵意を乗せていた。 つられてかオスカーの瞳も険悪さを隠そうともせず含ませる。 「バーンシュタインとやらの軍部は随分と口が悪いようですね?」 「フフッ・・・。頭が悪い、よりはマシじゃないかな?」 にこり。 お互いこれでもかと言うほど綺麗に微笑む。 氷点下の空気を纏って。 故に。 悪寒に背筋を震わせる傍観者二名。 「・・・なあ、さっきから震えが止まらないんだけど」 「・・・安心しろ。それは恐らくお前の錯覚じゃない、カーマイン」 「・・・だよな」 撤退準備だけはお互いしておこう、と目配せで合図しあうとそろりそろりと後退していく二つの躯。 しかし、ドアノブに手が掛かるその一瞬前に鋭い声で呼び止められる。 「「二人とも何処へ・・・?」」 「「!!」」 冷や水を浴びせられたように、全ての行動を遮られる。恐る恐る振り返れば何とも威圧的な笑みが迎えてくれた。 思わずアーネストとカーマインは抱き合うように互いの身を寄せ合う。そうしたからといって、 目の前の恐怖から逃れられるわけでもないのに。 「「ヒッ!!」」 追われているわけでもないのに、一歩後退さる。コツリと響く靴音が妙にその場の静けさを強調した。 冬だというのに、じわりと指先に汗が滲む。震え乾く喉が緊張にヒクつく。 「・・・何を怯えているの。早くこっちに来たら?」 「そうですよ。そんな端っこにいたら寒いでしょう?」 提案の体を取りながらも、早くこっち来いやと瞳が言っている。行きたくない。それが言われた本人の率直な感想。 ふるふると小さく首を振って意思表示をしてみるが、本来一人でも扱いが大変な部類の人間が同じ空間に二人もいる。 抗おうにも抗いがたい状況で、精神的には袋のねずみ状態であるカーマインとアーネストは盛大に溜息を吐くと、 仕方ないと無駄な抵抗はやめて一歩ずつ離れた相手へと近寄っていく。 「ほら、もっとこっち」 「「・・・・・・・」」 「貴方がたには、どちらが愚かか判断して頂かなくてはならないのですから」 「「・・・・・・・・」」 にこやかに尋ねられて二人の脳裏に浮かぶ言葉はどちらも愚かだと思う、なのだがそれをそのまま告げられるほど 命知らずではない。幾ら民草に英雄だとか鬼神だとか呼び称えられていたとしても、だ。 そんなわけで未だ支えあう二人は、目で責めてくる二人と決して目を合わそうとしない。捕まったら最後だというのを 本能的に感じているからだろう。何とも言いがたい沈黙が部屋を支配する。 「「「「・・・・・・・・・・」」」」 そうして数分が経ち、どんなに我慢強くても耐え切れぬほどのプレッシャーが押し寄せる中、間がいいのか悪いのか 漸く今の今まで寝こけていたゼオンシルトが紅い瞳を空気に晒した。うーんと暢気な呻き声を上げて、重い瞼を こしこしと指先で擦る。それからぼさぼさの頭を気にするべくもなく、ぼんやり視線を彷徨わせ、ルーファスの姿を 捉えるとやはり能天気に微笑む。 「お早う、ルゥ」 きっと彼にはこの緊迫した空気は全く伝わっていないのだろう。いっそ大物の予感をカーマインとアーネストは 拭えなかった。対してルーファスは、見て分かるとおり愛しい彼の可愛らしいお目覚めにご満悦のようで だらしなくその稜線を弛緩させている。はっきり言ってその緩みようといったら見ていられないほどだ。 「ああ、もう可愛いですね貴方は!」 「きゃふ!」 「「「・・・・・・・」」」 顔だけに留まらず、理性すら崩壊したようで人前にも拘らずルーファスはゼオンシルトを腕の中に閉じ込める。 どころか、頬に鼻に瞼にと顔中にキスを。ここまで行くと公然猥褻なんじゃないかと、取り残された三人は思う。 窓際で深々と降る雪が、溶けた気がした。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 そんな調子で五分、十分と過ぎ初めのうちは見ているのも恥ずかしいという思いがあったのだが、段々と麻痺してきたのか 見守る目は何処か白けている。というかこの場に自分達がいる必要は果たしてあるのか、という疑問が脳裏から離れない。 むしろ、離れられるものなら離れたいと切に願う。これ以上見ていると、何だか精神に異常を来たしてしまいそうだった。 「ん・・・ルゥ、擽ったいよ」 「ゼオン・・・」 離れた位置で囁きあう声の語尾には恐らくはぁとまぁくなるものが付いているのではないだろうか。 顔中のキスからいつの間にか首筋辺りへと移動しているそれ。止めないでいたらこのまま致してしまうのではないかとすら思う。 かといって止めたところで緑頭の方は止まりそうにない。唖然と突っ立っていたアーネストも次第に危機感が沸いてきて、 カーマインの目と耳を己の手で塞ぐと徐々に距離を取る。 「・・・アーネ・・・?」 「見るな、聞くな、近寄るな。汚されるぞ」 「けが・・・?」 「今度ばかりは全面的にアーネストは正しいと思うよカーマイン。近寄っちゃ駄目」 オスカーも一緒になってカーマインを半ば引き摺るように非難させ始める。もし緑頭の方がこのまま暴走し続けるなら 絶対にこの部屋に留まっているわけには行かない。何より純真無垢なカーマインに毒だ。窓辺の雪が更に溶ける。 じゅ、と聞こえるはずのない気化する微かな音でさえ聞こえてくるような気すらした。 再度ドアノブに手をかける。正直身元不明の人間から目を離すのはインペリアルナイトとしてどうなのか、 甚だ疑問であるが相手が悪い。関わるだけ損をする、そう確信出来る。故に指先を捻り、ドアを開け音を立てぬよう 静かにその場から離れようとした、その時。 見覚えのある光と魔方陣が天井に輪を描いた。 「「「あ」」」 円の中心が滴り落ちる雫のようにしな垂れ、何者かの足が生える。そのまま円を捻じ曲げて落ちてくる光と共に 人影が現れた。赤と黒を貴重とした軍服に包まれた銀糸の持ち主。印象的な緋色の瞳と目が合うと三人は叫ばねば ならぬ言葉があるはずなのに、つい口を噤んでしまった。 ―――危ない、と。 故に。 「ぐはっ」 「・・・・・・・」 「「「・・・・・・・」」」 人前で過剰なスキンシップをしていたルーファスの頭上にその彼は落ちた。と、いうよりは着地した。 新緑色の髪を土足で踏みつける。そして潰れた恋人をゼオンシルトは呆然と見守った。 「・・・うむ。いいところに出たな」 「・・・ギャリック大尉」 「・・・・・・・・っっ」 すぐさま退くこともなく、その場に居座り続ける新手の違法侵入者。ぐにぐにと恐らくは怒りと痛みに震えているだろう ルーファスを足で突付く。そうして程なく、怒りが臨界点に達したらしいルーファスは懇親の力を振り絞り、素早く 上体を起こし上にのさばる青年を振り落とそうとするが、より早く青年が動く。ひらりと床へと舞い降りて室内を見渡す。 簡素な寝具と衝立、薬品。どうみても医務室、なのだろう。そう判断するも証明や整った調度品が己の知りうる世界と 違うことに気づきぽりぽりと後ろ髪を掻く。 「・・・・ん?別大陸に飛んじまったか?」 「〜〜〜ギャリック〜〜〜」 恨みがましい声が確実に耳に届いているはずだが、聞こえないフリをして青年は戸口で固まっている三人へと 目をやる。やはり、見た事のない・・・恐らく軍服だ、とやや困り顔で腕を組んだ。言葉を、探す。 「・・・やれやれ、実験は失敗か?出来れば国内にゲートを開きたかったんだが」 「ちょっと貴方!人を足蹴にしておいて無視ですか?!」 「俺の下にいるお前が悪い」 「なっ!元はといえば全部貴方のせいなんですからね!」 「違う。色ボケしてるテメエのせいだっつの。お前がバカすると必然的にそいつも巻き込まれんだから少しは自重しろ」 「言−わーせーてーおーけーばー」 ズケズケと言いたい放題の青年に対し、ルーファスは常に懐に忍ばせてある鞭を取り出すとさっと掲げた。 ゼオンシルトやカーマインらは完全にのけ者にしている。取り残され、何やら険悪な雰囲気になっていく場に どうしたものかそれぞれ考えはするが、特にどうするわけでもなく傍観に務めた。 鞭が放たれる。撓る革の音と風切り音が室内に響く。武器を向けられた青年は一つ息を吐くと何やら慣れた様子で 弧を描く飛び道具をふわりと避わす。それがまた癪に障ったのだろう。更に続く二撃目を今度は手袋に包まれた掌で 受け止めると振りかぶれぬよう、宙に固定する。 「フン、もう何度も過去に喰らってんだ。いい加減見切れるわ!」 「クッ。ギャリックのくせに生意気ですね」 「そりゃこっちの科白だ。折角わざわざ迎えに来てやったのになんつう態度なんだお前は」 「「・・・迎え?」」 きょとんとしたルーファスとゼオンシルトの異彩の声音が重なる。ぱちり、数度瞬く。顔を見合わせ首を傾いだ。 気を失っていたからというのもあるが、さほどこの場所に飛ばされて時間が経った気がしない。 多めに見積もってもせいぜい半日ほどだろう。自分から追い立てるようにゲートを潜らせたくせに随分と迎えが 早すぎるのではないか。二人は思う。そしてその疑問のままに口を開く。 「・・・迎えって・・・ゆっくりしていろとか言ってませんでしたっけ?」 「ああ、言った。だからといって一週間もテメエらを野放しにするのもどうかと思ってな」 「「一週間?」」 完全にいないものとされている面々もルーファスらと同じようにその単語に引っかかった。何せ彼らはルーファスと ゼオンシルトが空から落ちてくる瞬間に立ち会っている。あれからまだ四時間程度しか経っていない。 彼らの元居た所と、こちらでは時間の流れが違うのか。ふと、そういう考えが脳裏を過ぎる。 「あちらではもう、一週間も経っているのですか?」 ルーファスもその考えに至ったらしく、確認する。返ってくるのは随分な言い様だった。 「ああ・・・十分な休養になったろう?いても目障りだがいないのもいないで困る」 「何を勝手なことを言ってるんですか!人のこと勝手に得体の知れないところに飛ばしといて!」 「だーから、わざわざこの俺が迎えに来てやってんだろーが」 「未知の土地に一週間もほったらかしにしといて言うことですか!」 「お前らが殺して死ぬような命か」 「だからと言ってですねぇ・・・大体私達はまだほんの数時間ほどしかこちらに「いいからとっとと来い。お前もだ」 「ひゃあ」 激昂を上げる中性的な声音を割って、ルーファスとゼオンシルトの首根っこを掴むと青年は結局名乗ることも 状況説明もすることなく、手にした小さな機械を作動させ、もう数度は見た魔法人を出現させ、その中へと飛び込む。 恐らくアレが彼らのいうゲートというものなのだろう。柱状に天井まで光が伸び、飲み込まれた三人の姿は光が 消えると共に跡形もなくなっていた。 「「「・・・何だったんだ」」」 わけも分からず放置され、巻き込まれただけのナイツ三人はと言えば、仲良く同じ言葉を唖然と呟いていた。 狐に抓まれた、そう思おうと何とも言えぬ空気の中、結論付ける。窓辺の雪はこの寒いのにやはり溶けていた。 ◆◇◇◆ それから。お騒がせな二人組み+一名は母国―正確に言えば一人は違うが―に帰還した。 やはりゲートを繋げた世界とは時間が異なるらしい。迎えに来た青年―ギャリックは己が裂きに飛ばした二人を 追った日から約三日ほど経っていることに驚いていた。 「・・・滞在時間はほんの数分だったと思うが・・・まさか三日も経ってやがったとは」 「貴方という人は〜〜〜!何の資料も情報もない全くの異世界に人を放り込むとはどれだけ無責任なんですか!!」 「だーから言ってんだろ。まさか違う世界に繋がってるとは俺も思わなかったんだよ」 「完全な実験失敗じゃないですか!だから貴方は色々と杜撰なんですよ!」 「うるっせーな、杜撰なのはテメエのトチ狂った思考回路だろうがっ!」 「私の、何処がトチ狂ってると言うのです!」 「何処でもかしこでも発情してんじゃねえか!その手をいい加減離せっつの、見苦しい!」 どさくさに紛れてしっかりと手を握り合っている二人。まるでその手を離されたら死んでしまうとでもいうかのように しっかりと。そんな様子を見せられても嬉しくないというか、各自に何かにダメージを受ける。己の精神衛生を守るために わざわざ予定外とはいえ異国まで飛ばしたのに、戻って来て早々にまた繰り返されるのであればあまり意味がない。 おまけに業務は滞りっぱなし。もう何から責めたらいいのか分からぬほど怒りが沸点に到達し始めているギャリック。 そんな彼を煽るように手を握るだけに留まらず、転移の際乱れた髪の手入れと称しまたいちゃつき始めるルーファス。 「だから、お前ら〜〜〜!」 「煩いですよギャリック。騒ぐなら何処か行って下さい。ねえ、ゼオンシルト?」 「え・・・う、うーん・・・あ、あのぉ」 「だあああ、喋るんならしゃっきり喋れ!」 言い淀むゼオンシルトに苛つきを隠せぬギャリック。そして責められている恋人の姿を目にし、逆に怒り心頭の ルーファスは再度鞭を取り出し、ギャリックの意識が己から逸れているのをいいことに、振り抜く。 当然。 「いいってえええええ」 「・・・私のゼオンを苛めたのですから当然です」 「ルゥ・・・!俺のために・・・!」 「て、テメエらなあっ〜〜〜〜」 何事か続けたいのに言葉にならない。血が滲むほどの痛々しい蚯蚓腫れを押さえ、涙目の負傷者は放っておいて また二人だけで盛り上がっている。その様を見守る―つもりなどなかったが、視界に捉えてしまったギャリックは盛大な溜息を。 もうこうなったら自分こそがこの国から出てった方がいいのではないか。半ば本気でそう思う彼が、耐え兼ねて例の異国に 自ら飛び込むのはまた別の話。 益々熱を上げる二人を他所に深々とこちらでも降り続く雪。けれどもやはり室内と接している窓際だけは 白い結晶は蒸発し、雨降りのように平らな硝子を水滴で濡らしていた――― fin...? 思いっきり遅くなりましたが、な、なんとか後編をUPです。 本当に何でルーゼオってこんなに書くのが大変なんでしょうかね。 内容量的にはそんなに大したことはないはずなんですが思いっきり疲労してます。 こんなバカップルが実在したら嫌です(嗚呼・・・) 何はともあれ、大変お待たせ致しました繭美様ー(全くだ) Back |