※CAUTION

こちらは霧生様とのチャットから発生した特別設定です。霧生様発信なので霧生様宅のご令嬢カーミラ嬢と我が家の
ユリアが双子でリシャール生存→問答無用でアニー共々双子の執事にという設定です。
推奨CPはリシャール×カーミラ(女主)、アーネスト×ユリアです。




そして彼女は途方にくれる。
そしてアイツは有頂天。




執事が我が家にやってくる!





それは、三国大戦終結から二ヶ月ほど経過したある日のこと。
迷いの森を通って帰ってきたという兄弟……いや、今や姉妹となってしまった自分の双子、ユリアの連れてきたその存在を見て、
カーミラは一切の動きを止めた。
本棚に戻しかけていた本が落ちてしまったがそれも認識していなかったかもしれない。
活動を停止した思考回路の外でユリアが何か言っているのが目に入るが、目の前の現実を理解することで精一杯の彼女の
耳には一切合切届いていなかった。

「……というわけで、うちで面倒を見るわけにはいかないかなと」
「ユーリィ」

かろうじて復旧を遂げた聴覚が捉えたそれだけの文章で、事態を把握するには十分事足りる。
他の、恐らくは自分を説得するために並べられたであろう言葉を聞いていなくても、だ。

「元いたところに帰してくるように」

自分と全く同じ体格、したがって同じ高さにあるユリアの両肩に手を載せる。
続く言葉全てを遮って、それだけ口にした。

「どうしてもダメか?
 別に野良ユングやモンスターを拾ってきたわけじゃないんだし」

ああ、これが野良になったユングであったならいっそのこと思い切った対処も出来よう、そもそもユリアだって拾ってきたりしないだろう。
眩暈という現実逃避の甘美な誘いを跳ね除けて、ここで踏ん張らねばいつ踏ん張るとカーミラは重々しく首を横に振った。

「どうしても、ダメ?」

どこで覚えてきたのか、ジュリアンやミーシャ、エリオットあたりなら一発でころりといってしまいそうな顔。
二ヶ月前には確かに自分より少し高い位置にあったはずの顔をじっと見据えて、カーミラは内心で溜息を吐いた。

ああ、あの頃のユリアは一体どこへ消えうせてしまったのであろうか。
ユリアと自分、そして命がけの説得の末に力を貸してくれたリシャールの三人の延命と引き換えに、何の因果か
その代償の異変すべてを引っかぶってしまった彼、いや彼女。
体が女の子になり、当初こそそれは深刻に悩んでいたはずが、心配する周囲によってかえって次々と『女の子らしさ』というものの
スイッチが入ってしまったせいで、今となっては立派な乙女。
女の子みたいで嫌だ、ユーリィと呼べと新しい知り合いを作るたびに言い、ユリアと呼ばれるたびに顔をしかめていたアイツはどこへ?

たった二ヶ月、されど二ヶ月。
時の流れはかくも残酷であった。


「ダメ。
 ……それ、リーブス卿直伝?」
「あ、分かるんだな」
「私も教えられたけど、使ったことがない。
 ……自分と全く同じ顔でやられても」
「……だよなぁ」

とっておきが通用しなかった理由を知って、ユリアはそれもそうかと溜息を吐いた。
どうしよう、と後ろを振り返り、見上げる。
それを受けて硬い靴音が前に進み出て、そして。

「お嬢さん!
 貴女のご姉妹を俺に下さい!!」

声高らかにそう述べて、直角に礼をしたその頭の色は純白。
大柄なその男は、名をアーネスト=ライエル……そう、現在進行形で国外追放刑に処されているはずの、大罪人。

ガチャリ。

「ちょ、カーミラ、ダメだって!」
「?」

大真面目に『お嬢さんを俺に下さい』発言をしたその頭の上で、ユリアの慌てる声がする。
直角に礼をしたまま目を開けても、見えるのは脚だけ……顔を上げれば、そこにはしっかりと矢を装填されたボウガンが
構えられていた。

「……ああ、ごめん、つい反射で」
「反射でお前は人の命を狙うのか、しかもそんな無表情無感動に!」
「よろしければ猛毒攻撃もおまけでつけますが」
「いらん!!」

掴みかかってやりたいところだが、目が切れ長でスカートをはいている以外はユリアそのものの相手にそんなこともできず、
アーネストはギリギリと歯軋りする。

「ユーリィ、自分が今、恐らくは十中八九不可逆の変化で女の子になってるって分かってる?
 それがどういうことか、理解してる?」
「え」
「女になって、男だったころみたいに性別が同じだって気にしなくてすむのは分かるけど、
 どういう結果がついてくるか、分かってる?」

はっきりとは言葉にしないものの、己の姉妹の言わんとするところを理解してユリアは頬を赤く染めた。
初心な少女じみた(実際女の子としては初心者だが)その反応に、本日幾度目かの溜息が吐かれる。

「大体それ以前の問題として……」

じとり。
ユリア曰く『拾ってきた』大型犬、もとい大柄な人間を見上げる、ユリアと同じ左右色違いの瞳。

「国外追放刑に処されている人間を『拾って』きてどうするの」
「そ、それは……」

それが問題だと言うことはユリア自身理解していた、それでは刑が意味をなさないだろうということぐらい。
それでも……。

「でも、俺は……ああ、多分カーミラが言うとおり気にしなくてすむようになって浮かれてたんだと思う。
 男だった頃みたいにいろいろ悩まなくてすむからさ。
 女の子じゃないってこと、俺はずっと気にしてた。
 だから……」
「…………」
「カーミラは、リシャールといっしょにいたいとは思わないのか?」
「いたいとは思う、でもそれとこれとは違う話。
 罪は罪、罰は罰だから」

恋したことが罪、逢えぬ事は罰。
リシャールとカーミラ、その特殊を極める関係ゆえに、いっそ非情に聞こえるほどドライに彼女はそう述べる。
その言葉が自分たちのことをさしていないと分かっていても、ユリアはそこで答えるべき言葉を見失う。
男と男、今となっては男と元男の自分達もまた、特殊を極めたつながりだから。
ぐっと唇を噛んで何とか言葉を言い募ろうとした…………その言葉を別の言葉が掻き消した。

「つれないな、カーミラ。
 そこはウソでもいっしょにいたいと答えるところだろう?」
「リ、シャール」
「リ、リシャール様!?」
「おいリシャール!?」

何時の間に背後を取ったのか、カーミラの背後からリシャールがカーミラの顎に手をかけていた。
説得の最終兵器としてアーネストが連れてきた彼がいったいいつからそこにいたのかは分からないが、
この瞬間勝敗は決したも同然だった。
ゲヴェル由来の王様気質VS系譜としてはゲヴェルに、命令に従う側すなわち被支配者。
支配するものとされる者、この生まれついての格差の前にしかしカーミラは抵抗する。

「キミも一応国外追放刑に処されてる身じゃなかったかな……」
「確かにそうだがローランディア領はバーンシュタインの国外だ、何の不都合がある」
「仮にも元国王が法律を守らなくてどうするの」
「要するに国内に戻らなければいいわけだからな、一応法は守っているぞ?」
「そうじゃなくて……!」

さらに言い募るカーミラに痺れを切らしたリシャールの取った行動を前に、アーネストは咄嗟に両手の親指でユリアの両耳の穴を、
残った指で目元を塞いだ。
唐突に視界と聴覚を奪われてじたばたとユリアが暴れるが、こればっかりは見せてはいけないとアーネストは顔を青くする。
女性化して2ヶ月の彼女に、目の前で繰り広げられている光景は過激すぎる、多分。

「アーネスト」
「は、はい!」
「そうだな……30分ほどそいつを連れて席を外していろ、YESと言わせてやる」
「はっ!!」

半分泣きそうになりながら、アーネストはユリアを抱えて部屋を飛び出した。
後ろに蹴飛ばして締めた扉の向こう、この日運悪くスカートを着用していた犠牲者に先ほどのボウガン事件も水に流して祈りを捧げる。

専用スキル、ゴッドハンズ・E(RO)。
例え相手の服を脱がさずともいろんな意味でジェットコースター的な感覚を体験させるリシャールの伝家の宝刀。

「……南無阿弥陀仏、アーメン」

伝家の宝刀が抜かれた以上、もはや防衛線に勝機なし。


かくして、ローランディアの西端英雄領ファグラレーブに、二人の執事がやって来た。
名目上は、三国有数の戦力集中地……要するに英雄二人のお膝元に執事見習い扱いとして置くことで、
リシャールという一種のカリスマを中心とした新たな不穏分子の発生を防ぐため。
いざというときにもここでならすばやい対処が可能だとあちこちに根回しし(ゼノスにも手伝わせて)勝ち取られた結果は、
実質、監督役の英雄騎士二人と重罪人二人(主に後者)の非常に個人的な思惑のためであったのだが。

本来なら止めに入るはずだった人間が、『止めないのか?』と人に聞かれるたびにもげるほどに首を横に振ったのは
その後しばらくの語り草である。

どんな説得をしたのかは神と当事者のみぞ知る。
ただ、一種拷問と紙一重の体験だったことには変わりないと思われる。




■◇■  ■◇■




そんな一件からさらに二ヶ月。
深夜の領主の館の二階で、ユリアはベッドの端に腰掛けて爪を切っていた。

「お嬢様、私が致しましょう」
「アーネスト……他に人がいるわけでもないんだから、ユリアでいいよ」
「む、そうか?」

僅かにくすぐったさを覚える言葉に微妙な笑いを噛み殺しながら、ユリアはそれならと爪切りを渡す。
じゅうたんに膝を突いたアーネストの手の中でパチン、パチン、と再び響きだす音とともに、爪の形が整えられていく。

「本当は、ヤスリで形を整えたほうがいいらしいが……」
「ヤスリ?
 ああ、そういえばカーミラもそんなの使ってたな」
「まぁ、これにも付いていることは付いているんだが……」

小さな爪きりにおまけのように付属するヤスリで軽く仕上げをして、削りカスを吹き飛ばそうとアーネストは息を吹きかける。
と。

「ッ!」
「どうした?」

目の前の足の指がピクリと動く。
何のことか判らずにユリアの顔を見上げて、アーネストはにやりと人の悪い笑みを浮かべた。

「どうかしましたか、お嬢様?」
「アーネスト、ふざけてるだろ、くすぐったい」

わざと息のかかる距離で敬語で喋るアーネストを睨めば、今度は吐息ではなく

「……ひゃ!」

生ぬるい舌に包まれる。
湿った音をたてて一本ずつ舌で包まれて、ぞくぞくと背中を何かが這い回っているように感じた。
自分の脚の向こうに見える、跪いたアーネストが自分の足を愛撫している光景はどこか倒錯的で、目元を紅く染めながらも
ユリアはそこから目を放せない。
本当に執事と令嬢が禁断の恋情に身を任せているような、光景。

「抵抗なさらないんですか……?」

その辺はアーネストも理解しているようで、悪ノリしているのが明らかな敬語口調でそんなことを言う。
パジャマのズボンの裾を少しずつ足元から捲り上げながら歯を立てられ、軽く噛まれたそこからじわじわと
得体の知れない熱に侵食されていく。
それは段々と快感に姿を変えていって、それがあんまりゆっくり自分を飲み込もうとするものだから、
ユリアはなかなかそれに耐えられない。
じりじりと足の先から這い上がってくる手と舌の主はそれを知っているのかいないのか。

「ん」

ゆっくりとベッドに押し倒される。
腰掛けていた位置はそのまま、立ち上がりざまに相手の腕が自分を抱えて、逃がさないと言わんばかりに唇を重ねられる。
何度かついばむように押し当てられ、滑り込んでくる舌に自分のそれが絡め取られる。
胸のふくらみの形を確かめるように這い上がってきた手がパジャマの中で焦らすように這い回り、熾き火のような快感を
煽り立てていく。

「んぁ、あ」

首筋を這い回る舌、服の中に滑り込む手。
かつては多分自分もその程度に大きく硬かった『男』の掌が、『女』になった自分の体をするすると撫でて、
少しずつ肌を露にされるごとにその倒錯に落ちて、落ちて、底なしに落ちていく。

悪いことは、人をとりこにするものだ。
倒錯した感覚は、その後ろめたさでもって自分を取り返しのつかないところまで追い立てる。

「アー、ネスト……ッ」

熱に浮かされた体の中に、骨ばった指が忍び込む。
湿った音を立てて持ち主自身にもなじみのない場所を探り、ユリアを崖っぷちからさらに追い詰めて追い落とす。
逃げられないように押さえ込まれて、慣れない快感に思考回路を塗りつぶされた。

「ーーーーーーー!」

声にならない悲鳴を上げて、白くなるほどの力でシーツを掴んでいた指先から力が抜けた。
くたんと脱力仕切った体で必死に息を重ねて、体が希求する酸素を必死に取り込む。
ぼんやりと天井を見上げながら、女の子って大変だなぁと思った。

「どうした?」

服を脱ぎ捨てたアーネストの紅眼に覗き込まれて、問われる。

「いや……女の子って、大変だなって」
「?」
「いっつもこんな……感じなのかな」
「俺は女の感覚などわからんが……まぁ、苦にならんように出来ているんだろう」

そもそも次の世代をつなぐための行為なのだから、と呟いて、アーネストはゆっくりとユリアの中に押し入った。
頂点を見たばかりで敏感な体、その最奥まで入り込まれてまたユリアは細い悲鳴を上げる。
幾度も幾度も抉られ貫かれるうちに、熱波に焼かれた神経が溶けていくような感覚に襲われる。


17年間、男として生きてきた。
そうして女の子になった自分にとって、まるで未知だったこの体。
開花させられていくこの体は女の子なのに、頭はまだはっきりと男の部分を殊こういう部分に関しては残していて、
体の感覚と頭の認識の狭間にはまってしまった自分が抜け出せる気配はまるでない。
病み付きになりそうな倒錯は、きっとどんなワナよりたちが悪い。

二度目の、先ほどより遥か高い位置にありそうな終わり目指して駆け上がらされる。
もう何も考えられない頭で、必死に目の前の体にしがみついて。




知るはずもなかった熱に、落ちる。




■◇■  ■◇■




「大丈夫か」
「……何とか」

熱の去らない体で、ぴたりとくっつく。
毎度毎度どうしてこうも……と最中の自分を思い出して赤面するユリアの頭を撫でながら、アーネストはぽつりと言った。

「その、だな」
「ん?」
「ああ、その……なんだ、ありえないことだと思うんだが」

すぅ、と息を吸って言葉を続けるアーネストの耳は、赤い。

「もしも、その、戻る方法が見つからなかったら……俺は、責任を取るぞ」
「は?」
「いや、だからだな、お前がこうなったのもわれわれが関係ないわけじゃないしだな、何よりまぁこうして
 言ってしまえばお前を傷物にしてしまったわけでもあるしだな」

どもりながら早口で並べ立てるアーネストの挙動の不審さに、ユリアも何となくいいたいことを察して赤くなる。
しばしの間、余韻も何もかも吹き飛ばすような沈黙だけがあった。

「……取ってくれよ」
「!?」

ぼそりと呟かれた言葉が空耳であったのかどうかは、神のみぞ知る。


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(翌朝、なぜかキッチンのテーブルで書類の山に突っ伏すカーミラ&非常に眠たそうな鬱モードのリシャールにつかまる
 朝食当番のアーネスト)

「……お前達」
「なんですかリシャール様?」
「……もう少し、静かにできんのか」
「!!」
(カーミラ、むっくりと起き上がって書類を机の端に寄せつつ)
「愛はお静かにお願いします、ライエル卿……書類は部屋で片付けたいんです。
 そしてちゃんと部屋で眠りたい……」
(力尽きてテーブルに再び突っ伏す)
「!!!」

ゴン、というテーブルに突っ伏す鈍い音も、コーヒーを入れるリシャールの動作も全て脳みそからシャットアウトして、
アーネストは恥ずかしさで立ち尽くす。
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END


夜更けの乱気流霧生更夜様より

四周年記念に頂きました!!当家のユリア設定を使ってのアー主!
まあ、素敵!!うちの子のおとぼけっぷりなら本当にアーネスト拾ってきますよ!(笑)
そして殿下とカーミラ嬢の関係もアダルティで!!ゴットハンド・E(RO)素敵すぎです殿下!
プロポーズまでしてもらって・・・感無量です。本当に有難うございました!
是非ともこの設定、私も乗っからせて頂く所存です!!(ヲイ)


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