GL学園モノ企画



第一話「運命の出会い(一方的)!の巻」








「あ〜、もうヒマー!!!」

とある初夏の昼下がり。
つい最近まで男子校であった私立インペリアル学園(長い)の執行部内に紫髪の優男のうだるような
呟きが漏らされる。

「だったら仕事をしろ。馬鹿オスカー」

そんな事は日常茶飯事とでも言わんばかりに白髪の(本人曰く銀髪)男というか青年は鋭く返す。
ちなみに紫髪の優男の名はオスカー、高等部三年の書記。そして白髪の青年の名はアーネスト。
同じく三年の副会長、もっと言えばこのシリーズのやられ役且つ主人公であったりする☆



と、軽く紹介が済んだところで先程のアーネストの言がお気に召さなかったのか、オスカーからは
黒い靄のようなオーラが飛び交っていて。
にっこりと顔に貼り付けられたエセ笑顔と相まって不気味さ倍増、かーなり不穏な空気を運んできた。
負けじとアーネストも【泣く子も黙るガン飛ばし】で即座に応戦(でも勝ったことない)
じっとりと汗ばむような陽光の下(と言っても室内だが)、火花散るブリザードの嵐!何故火花が
散るかと言えばとっくに臨界点を超えているから。それはともかくこの場に二人以外誰もいなかったのが
せめてもの救いというもの!(ええ、全く)



「ね、アーネスト。さっき何か聞き捨てならない台詞を聞いた気がするんだケド空耳かな?」

そこらのお嬢さん方なら頬染めてしまいそうなほどの悩殺スマイル☆を浮かべつつオスカーの毒々しい
先制攻撃!対するアーネスト、元々高慢ぶりが窺える怜悧な表情でカウンター攻撃を図る。

「ほう・・・?一度で聞き取れぬとは随分と耳が遠くなったものだな、オスカー。老化現象ではないか?」
「んなっ、何を小生意気な事言ってくれてるのカナ〜、アーネスト?
大体自分のがよっぽど年なんじゃないの?そ〜んな真っ白い頭しちゃってサ!」
「な、馬鹿!コレはライエル家始まって以来、代々受け継がれている銀髪だ。失礼な事を言うな!」
「失礼なのはそっちでしょ!?僕は小さい頃から【神童】って言われてきたんだから!
君みたいな、【なんちゃってお年寄り】に馬鹿なんて言われる筋合いないよ!!」
「貴様、人を愚弄するのも大概にしろ!と言うか表に出ろ!!海の藻屑にしてやる!!」※ここは学校ですヨ
「へ〜え、それはそれは楽しみだね。もと暴れん坊将軍(マジか)のお手並みを拝見させて貰おうじゃないの」



「「泣かす!!!」」

互いの詰襟を引っつかんでお決まりの一言。
室内はブリザードどころか一気に氷河期へと逆戻り。
取り敢えず決闘もどきを突きつけたアーネストが先に手を離し、荒々しくドアを開けて外に出る。
本当にここは学校か?と疑いたくなるような大理石の広い廊下をずかずか歩き、後ろから「ちょっと待ってよ」
などと言いながらもたついているオスカーを置いて校庭の方へ向かう。それもまあ、当然の事。

アーネストとオスカーではコンパス(脚の長さ)に差がありすぎる。別にオスカーが短足、というわけでなく
アーネストがむやみに背が高すぎるだけなのだが。とにかく元の身長が高いだけあって長い脚をしたアーネストが
オスカーより大分早く昇降口に着くと、苛ついていた為に注意力散漫になっていたらしく胸の辺りにぽすんと
軽い衝撃を受けた。要は誰かとぶつかったのだ。

「っと、すまん。大丈夫か?」

ぶつかった相手を確かめようと下げられた紅い視線は自分たちの学校の白い制服とは正反対の漆黒の制服に
身を包んだ人物を捉えた。顔は未だに胸の辺りに埋まっている為見えないが、制服と同色の短い髪の間から覗く
白く細い項に女の子だろうと当たりを付け、慌てて引き剥がす。副会長、アーネスト。高慢に見えて実は結構な純情
青年だったりする(アイタッ)

剥がしたおかげで露わになった顔は男か女かパッと見では判別がつかない。というか男だったらショックだと思うほど
綺麗な造作をした顔をしている。漆黒の髪に相反するように透き通った白磁の肌、鼻梁は高く、口唇は淡やかな桜色。
それだけでも目を惹かれるというのに、それ以上に長い睫で覆われた色違いの双眸が怖いくらいに華麗で・・・。
不味い事にアーネスト=ライエル(ちょっと無理があるが)19歳、ストライクゾーンである。

「あ、っと・・・そ、その、怪我はないか!?」
「え、いえ特には。それよりもすみません、俺よそ見してて・・・」
「いや、俺こそすまない・・・・って【俺】!?」
「・・・・・・・・・・・・?」
「(男、なのか・・・・・こんなに綺麗なのに)」

軽くショックを受けつつも、改めて見てみると確かに彼は美人ではあるが、女にしては全体のパーツがシャープすぎる。
引き剥がす為に掴んだままの肩も筋張って少し硬い。紛れもなく男だと判る。それでも目の保養には充分なので少々
不躾ではないかと思うほど、まじまじと名前も知らない他校生の顔を見つめた。

「あ、あの俺が何か・・・・?」

今まで黙って大人しくしていた他校生の少年も流石に困った風に首を傾げる。
さらりと黒髪が揺れて、表れた戸惑いの表情は綺麗、というよりもかなり可愛らしかった。

「あ・・・いや他校生が何故ここにいるのかと思ってな・・・」

ハハハと滅多に笑わぬ仏頂面が白々しい笑みを浮かべる。ちなみにアーネストの顔は若干紅い。
しかも心音も早まっている。

「(いかん、俺・・・・男相手にトキめいている!!)」

と、ここにきて漸くアーネストの後を必死に憑いてきたついてきたオスカーが合流して来た。
走って追いかけるのも癪なので出来うる限りの早歩きで来た為、かなり体力を消耗しているようだ。
ぜえぜえと息を切らせつつ、アーネストに罵声を投げかけようとすると、ブルーグレイの瞳にアーネストの向かい側に
立つ麗人が映り、咽喉に上った言葉を咄嗟に押し込む。

「あ、れ・・・・・君、誰?」

息切れを気にも留めず、オスカーは見知らぬ少年に声を掛けた。
アーネストもそれを訊こうとしていたところなので黙って視線をオスカーから再び少年へ向ける。

「あ、俺・・・こちらの姉妹校のグロー学園生徒会長、カーマイン=フォルスマイヤーと言います。
こちらの生徒会長さんに用事があって来たんです。別に怪しい者、というわけでは・・・・・・」

ジロジロ見られた事に少年―カーマインは自分が不審人物だと思われてると取ったらしく、
大変恐縮そうに肩を竦めている。悪いのはこっちの方なのに、とは心中で思いつつも自ら悪印象を残すこともないだろう、と先程まで争っていた二人はそうとは気取られぬよう、にっこりと微笑んで。

「なら、俺たちが案内しよう。偶々、執行部なものでな」
「ああ、でも今リシャール会長、部室(でいいんだろうか)にいないから僕らと待っててくれるかな?」
「あ、ありがとうございます。あ、えっと・・・あの・・・・・」
「あ、僕執行部三年の書記でオスカーって言うの。ちなみにこっちの白いのが副会長のアーネスト」

ちなみにとか、こっちとか、白い、という言葉に反応しつつもアーネストは普段のオスカー宜しく、カーマインの前では猫を
被る事にしたらしく、ちょっとばかし頬に青筋が浮いてたりするが(怖いよ)それでもにこやかに振舞ってみせる。

「オスカーさんに、アーネストさんですか。お二方共、親切なんですねv」

ふわり、と花がバックに飛ぶような微笑で返されて、妙に和む二人の青年。
笑顔のままで「そんな事はない」と謙遜して見せて、こそこそっと二人で向き合い小さな声でプチ会議なるものを始める。
当然、カーマインはわけも判らず、それでも笑顔で首を傾げていた。

「ちょっと君、いつもの他人に対しての無関心さはどうしたのさ」
「そういうお前も随分と惚けていたようだが・・・・?」
「当ったり前じゃない!あんな可愛い子にトキめかないで誰にトキめけって言うの!?」
「馬鹿、声がデカい。・・・・・言いたい事は判るが彼は男だぞ?」
「判ってるよそんな事。それでもあの美顔と可愛さは犯罪だと思うね」
「それは同感だ。むしろ男でもいいような気がしてきた」
「こんなところで君と気が合うなんて・・・・・すっごい複雑なんだけど」
「その台詞、貴様にそっくりそのまま返してやる・・・・!」

「あ、あの・・・・」

弱弱しい美声が割ってきた為、アーネストとオスカーはバッと振り返り、「何でもない」と首を振った。

「もう、仕方ないからどっちが彼の心を射止めるか勝負と行こうか」
「そういえば先程勝負をしようとしていたんだったな。いいだろう、受けて立とう」
「っていうかさっきのは君からふっかけて来たんだけどね」
「細かい事を気にすると禿げるぞ、オスカー」
・・・・・・・後で泣いても知らないからね、アーネスト

地獄から這い上がるような声が響いたところでプチ会議は漸く終了したらしい。
頭上に疑問符を浮かべるカーマインに二人で笑いかけて、表向きには仲良く、しかし裏では険悪に執行部、部室へと
案内する事にした。





そんなこんなで運命の出会い(一方的)を果たした三人。
というかこんなノリでいいのか!?



次回に続く(え、そうなの!?)







げ、学園モノ第一弾がこれでいいのか!?
取り敢えずのアップなので後日大幅に修正されるかもしれません☆
次回からはガンガンキャラが出てきますので夜露四苦デス。


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