良い夢を





最近発見した事なのだけれど。
普段は澄ました顔が目立つ長身の彼。
でもその研ぎ澄まされた緋色の瞳が閉ざされてしまうと、案外その顔は幼い。
眉間に皺よる事もなく、穏やかな表情。思わず頭を撫でてしまいたくなるような。

そういえば普段仏頂面な人ほど寝顔は可愛いとか、聞いた事がある。
という事は彼もその例外ではなく。成人しきったしかもかなり大きい青年に対して言うのも変だけど
可愛い、のだろう。自分のそんな考えに笑って、眼下ですうすうと規則正しい寝息を立てる白銀へと手を伸ばす。
短い銀髪は手入れがよく行き届いているのか乾いた音を立て、するりと手指をすり抜ける。意外と触り心地がいい。
起こしてしまうかもしれないからすぐにやめようと思っていたのに、これではなかなか手放せないではないか。
そんな自分に呆れたように笑って、暫くそのまま髪を梳くように撫で続ける。すると。

「・・・・・・・・・ん」

小さな呻き声が形の良い薄い唇から漏らされる。
起こしてしまったか!?と慌てて手を退けるが、目下の青年は寝返りを打って変わらず眠り続けていて。
安堵の溜息が漏れた。そして再び健やかな寝顔へと視線を移す。やはり何度見てもあどけない。
普段の彼を知っているからこそそのギャップに笑いたくなる。今の俺の瞳にはきっと物珍しいものを見た
好奇の念と彼を思う愛おしさが滲んでいる事だろう。起きている時にそんな瞳をしようものならきっと
貞操の危機、になってると思うが。

「・・・・・・・・・・・・・アーネスト」
「・・・・・・・・・・・・・・・ん」

思わず名を呼ぶと返事をするように声が漏らされて、苦笑してしまう。
全く、こんな大の男を可愛いと思うなんて俺もどうかしてるな。それは苦笑の意味。
誤魔化すように首を振って、そっと白い額へと顔を寄せる。軽く、音を立てて口付けると、待っていたと
ばかりに力強い腕が俺の腰へと回されてそのままかなりの力で引き寄せられた。

「・・・・・・・うっわ・・・・・・」

ぽすん、と大きな肢体に受け止められる。ひょっとして狸寝入りかと思い、顔を窺うが本当に寝ている様子。
つまりは寝ぼけている、という事か。その割には随分と強い力だな。腕を突っ張って離れようとしても
全然動きそうもない。もしかしてアーネストが起きるまで俺はこの体制なんだろうか。

今の体勢、それは俺がソファで横になっているアーネストの真上に乗り上げている状態。
がっちり腰を抑えられて身動き一つ取れない。別に嫌ではないが、うつ伏せでしかも腰の拘束が強くて
少々息苦しい。いっそ叩き起こそうか。でもここ数日ろくに休んでないと聞いた。
起こしてしまうのは少し可哀想だろう。俺に選べるのは、彼の安らぎか、自分の身の安全か、で。
自分か彼かどっちかを取れといったら・・・・・・彼を選んでしまう程度には自分は彼が好きで、大事だと思っている。
だから。

「・・・・・・・・・ふう、・・・・・・・・この借りは高くつくからな?」



諦めたように息を吐き、気持ちよさそうに寝こける青年に呟く俺の姿がそこにあった。





fin…?




白アーネストxカーマイン。白Ver.は何故かカーマインさんの視点ですね。
ちなみに筆頭、この後起きるのは夕暮れ時。目を開けると逆に救世主様が自分の上で
寝ているので物凄く驚いた模様(適当だなー)

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