お砂糖缶詰





疲れた時は甘いものってよくいうから。
ぐったりと項垂れた彼に少しでも疲れを取ってもらおうと差し出した苺のフロマージュ。
ふわふわした白いスポンジが口当たりのいい、自分としては結構気に入りなケーキ。
それを見た彼は嬉しそうに微笑んで、「じゃあ一緒に食べよう」とお茶の用意をしてくれた。
それはいいのだけれど・・・・・・・・。

「オスカー、食べないのか?」

テーブルにセイロンのミルクティーとケーキを用意してから腰掛けた彼は、目の前のケーキに
手を出さず、何故か碧い穏やかな瞳で俺の事ばかり見ている。

「もしかして、ケーキとか嫌いだったか?」

そういえば失念していた。自分がいくら好きだからといって目の前の青年もそうとは限らない。
甘いものは好きそうだったけど、でも好きだと本人から聞いたわけでないのが事実で。もし嫌いなら悪い事をした。
疲れを取るどころか余計にストレスが堪ってしまうだろう。初めに聞いておけば良かったか。
不安げに首を傾ぐと彼―オスカーはゆるゆると首を振って。

「いや、ケーキは好きだよ。ちょっと疲れてたし、嬉しい限りだね」
「そ、なのか。でも、だったら何で食べないんだ?」

良かった。嫌いではないらしい。ほっと安堵の息を吐く。
それにしてはどうして口をつけようとしないんだろう。顔色を窺えば視線は相変わらず俺に向いている。

「甘いもの、って確かに疲れを取るには最適だけど。僕にはもっと効果的なものがあってね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?」
「ま、甘そうなものではあるんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

一体、何なのだろう。疲れを取るのに最適なもの?
それでちょっと甘そうなもの。食べ物?う〜ん分からない。何の事を言ってるんだろう。
俺は降参とばかりにオスカーの顔を見上げる。

「何か知りたい?」
「・・・・・・・・ああ、何なんだ?」
「それはねえ・・・・・・・・・コ・レv」

カタンとオスカーが椅子から立ち上がって向かいにいる俺の方へと近寄ってくる。
すうっと真上に黒い影が出来る。気になってオスカーの動きをずっと見守っていると彼の顔が
近づいてきてふわり、と頬に何か暖かなものが触れた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!?」
「あ、やっぱり甘かったね、ご馳走様♪」

そろりと真横を見る。今、触れたもの・・・・・・・・・オスカーの唇?
えっと、それってあの・・・・・・・・・キス・・・・・・・・って事???しかも何?話の流れでいくと俺がオスカーの言う
疲れを取るもの・・・・・・・なの、か????

「うん、君のおかげですっかり疲れ取れちゃったよ。あ、ケーキ貰うね?」
「え、あ・・・・・・・ああ、うん・・・・・・・・・・ど、どうぞ」
「わっ、美味しそうだねぇ。君には負けるけど」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
「アハハ、君の事ばっかり気になっちゃってケーキ放っといてごめんね?」
「あ・・・・・いや、そう・・・・・・・気に、しないで」

言って何でもない風にオスカーはフロマージュを口に運ぶ。さっきのは幻か?
もしかすると俺の方が疲れてるのかもしれない。盛大に溜息を吐く。そしてちらりとオスカーへ視線を注ぐ。
来た時に見せていたぐったりとした顔はそこには欠片も感じられない、幸せそうな顔。

何だか色々とわけが分からない。でも、彼が喜んでるのならそれはそれでいいか。
まだ少し混乱している俺はそう結論付け、彼に習って目の前にある紅茶のカップへ口付けた。




fin…?




カーマイン氏視点での白オスカーxカーマインSSです。
オスカー、白い・・・・・のか?一応黒オスカーxカーマインSSに比べれば大分白いとは
思うのですが。先に黒オスカー版を見ると逆に黒く感じられるかもしれません。
やっぱりオス主は難しいです。はい。

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