キレイすぎて目が潰れそうになる。





儚い思い







棄てた方がいいと分かっている、こんな気持ち。
無実の人間を疑ったばかりか、命をつけ狙ってしまった。
会うたびに違うと言っていたあいつの言葉に耳を貸さず、オレを騙していた
張本人の言葉を信じて。馬鹿だ馬鹿だと言われてきたオレも確かにそうだと頷いた。


違うと叫んだ時のあいつの目。金と銀、色違いの瞳はとてもまっすぐだった。
一目見れば嘘なんてついてないのはよく分かった筈なのに。むしろ分かっていたんだ。
それでも分からないフリをしていた。そうでなければ自分が完全な悪者になってしまうから。
辛いのはオレだって同じ。そんな手前勝手な言い訳で何度あいつを傷つけたろう。


何度謝っても気が済まない。
とても悪い事をした。許して欲しいと思う。同時に許さないで欲しいと願う。
許されてしまえば、勘違いも甚だしい思いを告げてしまいそうになるから。
命を狙った奴から「好きだ」なんて言われても嬉しい筈がない。


最悪、嫌悪しか生み出さないだろう。今は仲間として共に在れるけれど、勘違いした
思いを告げれば、きっとオレは見捨てられる。二度と口も利いてもらえないかもしれない。
そんなものは、耐えられない。傍に在れるならそれだけで充分な筈なんだ。

「・・・・・ゼノス、どうした?」

じっと後姿を見つめていた視線に気付いたらしい、カーマインがこっちを向く。
綺麗な目。嘘なんてつけやしない。こんな澄んだ目をした奴が。何故疑ってしまったのか。
きっと、初めて会った時から惹かれていたから。だから、無性に裏切られた気分になったんだ。
愛憎と言う言葉。愛している者に裏切られた時こそ憎らしいと思うもの。きっとそれだった。
既に好きだったから、あいつがオレを騙していると聞いてカッとなった。よりにもよって
あいつがオレを騙したのかと。傭兵という身の上、裏切りなんて慣れていたはずなのに。

「・・・・・・・・・・・ゼノス?」
「・・・・・なんでもねえ」
「そう、か?」

心配そうに顔を覗き込んでくるカーマインをなるべく視界に入れないようにする。
そうでなければ、咽喉から勝手に言葉が出てしまう。好きで好きで仕方なくてドロドロした気持ち。

「疲れてるんなら、そろそろ休憩取るぞ?」
「馬鹿言ってんなよ、オレは無茶苦茶元気だっての」
「・・・・・ゼノスがそういうなら・・・・・まあ、いいけどさ。疲れたら言えよ?すぐ休憩にするから」

何て言ったって俺、リーダーだし。そう言ってカーマインは他のメンバーのところへ踵を返す。
思わず、その細い腕を掴んでしまいそうになるが、何とか堪える。

「何、馬鹿やってんだオレは・・・・・・」

伸ばしかけた腕を、もう片方の手で引っ込める。随分と遠ざかった後姿。男にしては随分細い。
これだけ離れていれば小声でなら、きっと何を言っても耳に届きはしないだろう。だから、
追いかけてその細い肢体を抱きしめてしまいそうになる身体を押し留める為にも呟く。

「お前が・・・・好きだ、カーマイン」

案の定、振り返りも、止まりもしない細い肢体。安堵するような残念なような妙な気分だ。
そして何故か、胸の辺りから熱が上がってきて、不覚にも泣きそうになる。

「ったく、実るどころか花も咲く前に散るなんて儚いでやんの・・・・・」

自分には全く似合わない言葉の羅列に笑いそうになるが、仲間のところに戻ったカーマインが
手を振って呼んでいるので後にする。それにしても随分と光り輝く奴だ。オレには眩しすぎる。
焦がれたって手に入らない。いくら馬鹿でもそれくらいは分かっているから、いつかこの思いを
棄てようと思う。・・・・・・・きっと棄てられやしねえんだろけど、な。



―――眩しすぎる光の中、目を潰さないようにと目を伏せ、オレは歩き出した。





fin…?




ゼノ→主でしょうか。ゼノスが気にしてるほど
カーマインさんは気にしてない筈なんですが、やっぱり後ろ暗いんでしょうね。
ゼノ主はラブラブ(死)より悲恋の方が何となく好きです(イジメか)

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