スキナオト 例えば怖い夢を見た時。 例えば震えが奔るほど不安でたまらない時。 例えば辛くて辛くて泣きそうになる時。 ぽんと壊れ物でも扱うような手つきで頭を撫でてくれたり、 母親が子供を抱き締めるように暖かく包んでくれる、大きくて力強い腕を望んでしまう。 甘えてはいけないと判っているのに、【彼】は俺をいつも甘やかしてくれるから、つい甘えてしまう。 本当はそんな事、許されないはずなのに。 俺は【彼】の事、たくさん傷つけてしまったから。 嫌われても、突き放されても文句は言えない立場であるのに。 俺は心のどこかで【彼】に拒絶されたくないなんて、贅沢で傲慢な事を願っている。 それ以上に。無根拠に【彼】は俺を拒絶したりしないなんて思っていたりして。 そんな思い上がりに自分でも時々嫌気がさす。 でも仕方ないだろう・・・・? 【彼】が俺を呼ぶ声はとても優しくて。 低く、良く通る柔らかな声で、拙くて短いけれど俺を喜ばせる言葉を囁いてくれるから。 まるで心音のように安らげる、その音。俺がとても好きな音。 安っぽい賛美歌よりも高潔で、大地を流れる清水よりも透明で。 そんな【彼】の声が聴きたくて、用もないのに何度も名前を呼んだりして。 「・・・・・ライエル」 「・・・・・・・・”アーネスト”だ」 「ライエル」 「・・・・だから”アーネスト”だと言っているだろう」 うん、判ってるよ。 でも「ライエル」って呼べば、「アーネストと呼べ」って返してくれるから。 ほんの少しでも長くその声が聴けるから。ちょっとだけ融通が利かないフリなんかして。 ・・・・・・・・そういう不機嫌そうな声も好きだし。 だって本気で怒っているわけじゃなく、それは拗ねている時のものだから。 拗ねてくれるという事は少しは好いてくれてるわけだろう? そう思うとやっぱりその声も好き。 でも・・・・・・ 「・・・・アーネスト」 「・・・・・・それでいい」 「アーネスト」 「・・・・何だ?」 「呼びたかっただけ」 「・・・・?変な奴だな」 嬉しそうに、照れたように甘さを含んだ優しい声はもっと好きなんだ。 だから、確かめるように煩わしいくらい、何度も何度も繰り返してしまう。 「・・・・・・アーネスト」 「・・・・本当にどうしたんだ、カーマイン」 「・・・・・・・・・うん、何か・・・君の声が聴きたくて」 「!!?」 不意打ちで掛けられた言葉に緋眼を見開く【彼】。 色白だから赤くなるとすぐに判ってしまう。頬はおろか耳まで真っ赤。 「ひ、人をからかうのもいい加減にしろ」 「からかってなんていないんだけど・・・・」 「な、尚更性質が悪いぞ・・・・・」 「・・・・君の声を聴いてると安心するんだよ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・怒った?呆れた・・・・・・・?」 「・・・いや、こんな声でいいならいくらでも聞かせてやる」 それでお前が安心出来るのならな、と前置きしてサラリと髪を撫でられる。 とてもとても優しくて大好きな声。でもきっと声を聴きたいと思うのは、【彼】の声が好きだから、だけじゃない。 きっと、俺は・・・・・・・・・ きみがすきなんだ。 心の中でそっと囁いた声は多分、【彼】に負けないくらい、優しい声音だったような気がする。 fin 同盟用のお題。ちょっとお気に入りなので本館にも引っ張ってきました。 なんでアー主部屋に置かないかというと珍しくアー←主な感じなのでちょっと雰囲気違うかなと。 久しぶりに甘い感じです。いやん、恥ずかすぅい(お前の存在自体が恥だ) |
Back |