※初めに。 この話は、アーネストとオスカーが兄弟で、しかも吸血鬼となっております。 原作はもう、一切関係ないと言っても過言ではありません。それを踏まえた上で 別にOKよんという方だけスクロールされて下さいまし〜。 月夜の宴 夜空を女王のように満月が支配する頃。 ふわりと軽い動作で舞い降りる一つの影があった。 冷たい夜風を受け、反り返るマントを気にした風もなく、コツリコツリと硬い足音を響かせ、大きな屋敷の テラスからその影は難なく屋敷内への侵入に成功する。 途端、室内のカーテンと影の纏う漆黒のマントはバサバサと高い音を立て翻り、窓から差し込む月光が 影の正体を妖しく照らし出した。 紫の柔らかな髪に、碧い瞳、女性的な相貌には似つかわしくない牙を生やした男―吸血鬼。 若く美しい者の血を極上の食事とする彼は、たった今侵入した部屋の主である、良質のベッドの上で眠る 男とも女とも取れる美しい造作の顔をした青年の下へと歩み寄った。すうすうと穏やかな寝息を立てる、 その青年の幼さを残した寝顔へそっと手を伸ばす。長い漆黒の前髪を割って顕わになった白い頬へと顔を 近づけ、口付けようとしたその刹那。 ズガゴンッ! 何とも形容詞し難い、ものすっごい音がした。 それは何の音かと言えば・・・・・ 「〜〜っ、たいなぁっ、いきなり本なんて投げつけてこないでよ、アーネスト!!」 「・・・オスカー、貴様・・・強制猥褻罪の現行犯(未遂)で憲兵に突き出すぞ」 「はあ!?今時どこに頬にキスくらいで猥褻罪うんぬんなんていう奴がいるの!?」 「相手に意識がないだろうが。手前の身勝手な思想で物事を図るな」 「な、そんな奇麗事ばっか言ってロクに"吸血"もしないから貧血でパタパタ倒れるんだよ、君は! それに偉そうな事言って君もちゃっかり不法侵入してるじゃないか!」 「公然とセクハラを働く貴様よりはマシだ!この愚弟が!」 「あーっ、言ったね僕よりたかだか23秒早く生まれてきただけのダメ兄のくせに!」 バチバチと火花を散らし、話から察するに兄弟らしい男たちが怒鳴り合う。 ちなみにこの部屋の主の寝込みを襲った方がオスカー、見兼ねて、というか嫉妬心丸出しで本を放った 方がアーネストである。オスカーが女性的であるなら、アーネストはその逆で、研ぎ澄まされた鋭い眼や、 顔の造り、体格全てが男性的であった。容姿が正反対なら、性格もまるで違う二卵性の双子は何かと ぶつかり合う習性があり、今も尚一触即発な雰囲気を醸し出している。 だがしかし、この二人の降って湧いたような騒ぎに流石に目を覚ましたらしい青年の少し掠れた声が割って 入った為にそれも長くは続かない。 「・・・・・・・・・・・ふぁ、おはよう・・・ございます・・・・・」 ぺこりとお辞儀してぼーっとした瞳を一心に、今にも胸倉を掴み合わんばかりの二人の男に向けた。 どうやらまだ完全に覚醒したわけではないようで、う〜と唸りながら一生懸命金銀妖瞳を擦っている。 あまりに緊張感のない青年にアーネストとオスカーはすっかり毒を抜かれて脱力し、そして先程までケンカして いたとは思えぬほどに同調した思いを抱いていた。 ((・・・・・この子、連れて帰りたい・・・・・・・・)) この時、彼らの思考からは吸血鬼としての本能は消え失せ、男としての本能が働いていた(アイタッ) 初めは"吸血"する事が目的であったが、今やその目的は青年自身へと移り変わってしまったようだ。 こうなったらもう捨て身でアタック☆しかない。ちなみにあまりにも短絡的だとか思っても気にしないで頂きたい。 何故ならそこを突っ込まれると話が先に進まないからであるv とにかく、今隣りにいる相手よりも先に行動を起こさなければならない。妙な使命感を感じつつ、オスカーが 青年に声を掛けようと身を乗り出す。が、そんな事は予想済みとばかりにアーネストはオスカーのマントの裾を 踏みつけ、足止め作戦に出た。案の定。 「のわぁ!??」 奇声と共にオスカーがスッ転ぶ。はっきり言ってこんな姿滅多にお目にかかれない。端的に言えば激レア映像である。 打ち付けた場所が悪かったのかオスカーは半分涙目で腰の辺りと顎を擦っている。その隙にアーネストが代わりに 青年の傍へ寄った。その青年はといえばオスカーの声ではっきり覚醒したらしく、綺麗な異彩の瞳を見開きながら言う。 「あの・・・・そちらの方、大丈夫ですか?」 「心配するな。むしろ気になどかけなくていい。それよりもお前の名を訊いてもいいか?」 普段では見せぬような穏やかな表情でアーネストは首を傾ぐ。足元のオスカーには一切気が向いていない。 対する青年は状況が全く分からず、少し混乱していた。だが目前でほんのりと微笑するアーネストに促され、 可愛らしい桜色の口唇を開く。 「あ、俺・・・カーマインと言います。でも、あの・・・・・貴方たちは・・・・・・・?」 「・・・・・・・・・ああ、俺はアーネストと言う。見て判るかと思うが・・・・・吸血鬼だ」 「・・・・・・・・吸血鬼?・・・・・あれ、俺まだ夢見てるのかな・・・・??」 突然、突きつけられた絵空事のような内容にカーマインは真面目な顔で自身の頬を抓った。 白く滑らかな頬をあんまり強く抓るものだから、痛みに感応してその場所はじんわりと紅く染まっていく。 見兼ねてアーネストがカーマインの手指に自分のそれを重ねてゆっくりと外す。 優しく擦ってやりながらふと思いついたように。 「夢などではない。俺はちゃんとここにいるだろう・・・・?」 掴んだままのカーマインの手を自分の頬へと触れさせようとした。 しかしタイミングを計っていたかのように、今まで転んだ時の姿勢で大人しくしていたオスカーが身を起こし、仕返しとでも いうようにアーネストに足払いをかける。 「さっきはよくもやってくれたね、アーネスト!」 「・・・・・・・・・ッ!??」 がくんとバランスを崩し、アーネストはカーマインの横につんのめった。すかさずオスカーはその背に肘を打ちつけた。 脊髄にヒットした為、呼吸が一瞬止まり、アーネストはゴホゴホと噎せ返る。そのままの姿勢でオスカーはカーマインに 柔らかな微笑を送った。 「やあ、カーマイン、だっけ?僕はオスカー宜しくねv」 「え・・・はい。あの、アーネストさん苦しそうなんですけど・・・・」 「ん?ああ、気にしない気にしない。何てったってアーネストはほら、頑丈だからv」 「でも、息が出来てないみたいだし、顔色が・・・・」 「この人が顔色悪いのなんていつもの事だからvそれより僕と仲良くお話しようよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・はあ」 三流のナンパ者宜しくオスカーは肘の下で足掻いているアーネストを無視してカーマインと少しでもお近づきになろうと 会話を交わす。その度に他人を圧倒するような迫力ある美貌と打って変わって、素直で可愛らしいカーマインに惹かれて いきあまりの可愛さに話の途中であるにも拘らず勢いでぎゅうと抱きつく。すると当然オスカーの腕はアーネストから 離れるわけで、漸く自由になったアーネストは身を起こし、呼吸を整え、困惑顔のカーマインに抱きつくオスカーを力ずく で引き剥がし鼓膜を破らん勢いで叫ぶ。 「貴様、殺す気かぁっ!!」 「あれ、生きてたの、残念」 「ぐぬぅ、危うく三途の川を渡りかけたぞ・・・・・・」 飄々としたオスカーにアーネストは、はき捨てるように言う。すると。 「・・・・・あ、大丈夫ですか?」 控えめに言ってカーマインがアーネストの背を優しく擦った。本当に羽根を辿るような手つきで。 別に彼に悪いところなど何一つとしてなかったのに。それが嬉しくてアーネストは常は引き結ばれている口元を綻ばせた。 対するオスカーはそれが面白くない。自分でその原因を作ったにも拘らず、だ。 むうっと頬を膨れさせ、そしてパッと何か思いつき、企んだような笑みをこっそり浮かべながら自分もさっきのアーネストの ように噎せ始めた。 「ごほ、ごほん・・・・あ、さっき打ったとこが痛い〜」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あ、だ、大丈夫ですか、オスカーさん」 今やもう吸血鬼だ何だとかはすっかり頭から抜けているカーマインが今度はオスカーを気にかける。 それに意図的なものを感じたアーネストは細い眉を吊り上げて、しかし子供ではないのだからと言い聞かせ、黙っている。 ふと気を落ち着かせようと窓の外を見る。するといつの間にか空が白み始めていた。アーネストはここに来てやっと 吸血鬼としての本能を取り戻し、嫉妬心80%、親切心2%、仕方なさ18%の割合でオスカーの首根っこを掴んだ。 「ぐえっ、・・・・ちょ、何アーネスト」 「一体いつまで馬鹿な事をしている。夜が明けるぞ」 「え、嘘、マジで!?あ、ほんとだ。まだカーマインと一緒にいたかったのに〜」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あの・・・・?」 「ああ、悪いがそろそろお暇させてもらうぞ。我々は陽の光が苦手でな」 「え、あ・・・もう朝ですか。そういえば貴方たちは吸血鬼なんでしたね」 「そうだ。・・・・・そういえば先程は信じていなかったのではないか?」 「え、はい・・・・でも貴方たちは嘘を吐かれるような人ではないようですし・・・・」 「なら、怖いとは思わんのか?今日はこれで帰るが、次はお前の血を吸い殺すかもしれんぞ?」 「いいえ?その、事情は未だに良くわからないんですけど・・・、でも貴方たちと会えて楽しかったですよ?」 「・・・・・・・・・・そうか」 オスカーの首根っこを押さえたまま、アーネストはカーマインの頭を撫で、自分はしっかり邪魔したくせにそれには全く 気付かなかったフリをしてカーマインの頬に口付けた。 「・・・・・////!」 「あ〜、アーネスト抜け駆け!!!自分は邪魔したくせにぃ!」 「喧しい。それではカーマイン、また夜に会いに来る」 「・・・・・・・・え、は、はい。あ、あのじゃあ気をつけて」 「ああ」 言うが早いかアーネストはオスカーを抱えて、窓から飛び降りた。漆黒のマントを翻し、鮮やかに飛翔するとすぐに姿は見えなくなってしまった。その背を見送りながらカーマインは先程のアーネストの言葉を反芻する。 「・・・・・夜また会いに来るって・・・・・何でだろう???」 そもそも彼らは一体何をしに来たのだろう。 何となく腑に落ちなかったが、まあいいかとカーマインは寝入ったばかりのところを起こされ、夜明けまで起きてた所為か急激に眠気が押し寄せ、ベッドに戻って再び眠りについた。この後、毎日のように煩い吸血鬼に付きまとわれて何日も眠れぬ日々を送るハメになるとは夢にも思わぬまま・・・・・。 おまけ オスカー「あ〜、結局僕、何にもイイトコなしじゃない。しかも血吸えなかったし!」 アーネスト「日頃の行いが悪いからだろう・・・・・」 オスカー「何言ってんのさ!自分だけ美味しいとこ取りしたくせに!」 アーネスト「お前が悪いんだろうが。人の所為にするな」 オスカー「む〜、これだからむっつりは!」 アーネスト「んな、むっつりとか言うな!そういうお前は色魔じゃないか!」 オスカー「はあ!?僕は自分に正直に生きてるだけです〜」 アーネスト「開き直るな。そんなに叫ぶと貧血で倒れるぞ」 オスカー「君じゃあるまいし、そんな事、ってアレ・・・・?(貧血でふらつく)」 アーネスト「・・・・・だから言っただろうが」 オスカー「・・・・まさか僕がオチに使われるなんて・・・・屈辱だぁ〜」 アーネスト「・・・・・・・・・・・(何で俺、こんな奴と兄弟なんだろう/嘆)」 オスカー「あ〜誰か血〜!!!」 アーネスト「喧しい!」 〜以下エンドレス〜 fin え〜言い訳していいですか?(ダメだろ) これは26500を踏まれた高橋様のリクで「アー主でオス主な吸血鬼モノのパラレル」と いうリクだったんですが、自分、吸血鬼モノのSSとか見た事ないんでどういうの書けば いいのかさっぱり判らず5回書き直してこれですよ(刺すよ?) ついでで互いに足を引っ張り合うアーとオスというわけで何というか足を引っ張ると 言うよりも殺しあうに近いものがあったりなかったり。 しかも意味わっからーんとい言う内容に自ら涙を禁じえません(イタタ) え〜書き直し、いつでも準備はOKですので、遠慮なく言って下さいまし! それでは26500のリク有難うございました高橋様〜vvv |
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