秋色ノスタルジア 涼やかな風吹く、秋の午後。 木々は紅く染まり、世界の色共々移り変わっていく。 道端に築かれた木の葉の絨毯はどんな高級なそれよりも鮮やか。 艶やかさと、哀愁を封じたこの季節はまるで至宝のよう。 何かと過ごしやすいこの時期が僕はお気に入り。 同じ過ごしやすい季節でも春と違って花粉症もないしさ。それすっごく大事だと思うよ? ただ、毛虫とか害虫が頂けないけど。でも紅葉は綺麗だし、涼しいし。やっぱりいいよね、秋・・・。 なんてこんな事言ってると、まるで縁側で茶ー啜ってるご老体みたいだねぇ〜。ヤダヤダ、美しい僕に そんなの似合わない!似合うのなんてアーネストだけで充分サ!(失礼) 「・・・・・・あ〜、それにしても暇〜」 アーネストに聞かれたらネチネチ文句でも付けられそうな科白。でも今ここにはいないから、ぼやいてみる。 ちなみに視界に入らないように置いた机の端っこには手をつけてない白紙の書類がてんこもり。締め切りは明日。 死ぬ気にでもならなきゃ終わんないかも。そうなったらアーネストに死んでもらおう。うん、それがいい。 葬儀の場には玉葱と目薬、どっちを持っていこうかな。主演男優賞もびっくり!な程素敵に華麗に泣いたげよ。 ああ、僕ってなんて親友思い・・・・(どこがだよ) 「・・・・どっかに面白い事でも落ちてないかなぁ・・・・・」 全く、サービス精神乏しい世の中なんだから。どこぞの国では王様が裸で歩いちゃったりするくらいサービス満天 だっていうのに。うちの国なんて、仕事の鬼が一匹デショ。色気ない乙女(むしろ男前)が一人に〜、純情・従順かと 思ってたら結構そうでもない後輩一人に〜、ひょっとしたら僕以上にトラブルメーカーな王様が一人・・・・・う〜ん。 アーネストがいなけりゃ割りと楽しいかも。でもツッコミがいないっていうのもどうかと思うし、やっぱいた方がいいか。 むしろアーネストが一番遊び甲斐があるし。ああ、でも何て言うか、癒しがないよねこのメンツ。安らぎは大事なのに。 癒し系はいないのか、癒し系は。ああ、カーマインが恋しい。僕の花嫁さん・・・・・・・。 「・・・・・・・さっきから、何ブツブツ言ってるんだ?」 窓の外に広がる紅葉に目を留めていた為か、少々ぼんやりしていたらしい。 急に背後から聞こえた声に、頬杖ついてた頭がカクンとつんのめっちゃった。あらら、ちょっとマヌケ。 じゃー、なくて今の声って確か・・・・・・・ 「か、カーマイン!?いつからいたの!!?」 「いつからって・・・・・・今来たばかりだけど?」 「あ、そ、そーなの?とにかくそっちのソファにでも座ってて、今お茶出すから」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん」 彼の事を考えていた為に急に本人が現れて思わず狼狽しちゃったよ。ああ、格好悪い・・・・。 それにしても本当にいいタイミング。これって以心伝心って奴かい?愛の力が成せる技だね(言ってろ) そんな事を思いつつ、トレイと茶器一式を取り出して、一度給湯室へ向かう。折角だから何かお菓子も付けてあげよう。 何がいいかな。マフィンとか、シューケーキとかもあったかも。いいや、両方持って来ようっと。 「ちょっと待ってて」 「うん、分かった」 コクンと素直に頷くカーマイン。サラサラの黒髪がはらりと揺れる。ああ、もう相変わらず美人さんだなぁ。 目に入れても痛くないよ。本当可愛い。あれ、でもこれって孫に使う表現だったけ?嫌だ、またご老体だよ。 こんなんアーネストの役ドコロだって。ああ、それはともかく早くお茶淹れなきゃ。カーマインが寂しがるじゃないか(・・・・) 茶葉を小さじ一杯半、よーく暖めておいたポットにお湯を注いでカップに移して、蒸し器を被せて約4分蒸す、っと。 いやあ、慣れたものだね僕。流石!自分で自分を褒めてあげたいよ(既にしてるよ) 「さって、茶菓子を添えて、部屋に戻らないとね〜」 「・・・・・・・・・・ご機嫌だな、仕事はどうした・・・・・・・・」 「うっわ、アーネスト!急に声掛けないでよ。っていうか何でいんの!?」 「・・・・・・・・喉が、渇いたんで茶を淹れに・・・・・・・・・」 「・・・・侍女にでも頼めばいいじゃない」 「自分で淹れたものの方が嗜好に合う」 「あ、そう。あのさ、並ばないでくれる?この絵面なんか嫌」 「・・・・・・・・同感だ。お前淹れ終わったんならさっさと出ろ」 「君が声掛けてくるからいけないんじゃん」 「・・・・・・・・・・・・・・カーマイン、元気か」 「は?」 「・・・・カップが二人分。それはカーマインのだろう。だから、訊いている」 「・・・・・・・・・・ああ、元気だよ。相変わらず綺麗だし」 「・・・・・・・・・・・・・・・・そうか。なら、いい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 あれ、いつもみたいに突っかかってくるのかと思えば随分としおらしいじゃない。不気味〜。 これは何かあるね。問い詰めて今後のネタにしてやろうかな〜。あ、それ何かイイ感じ。よし、決定! 「どうしたのさ、いつもの威勢は」 「・・・・・・・・あんなもの、見せられれば気落ちしても仕方ないだろう」 「・・・・・・・・・・『あんなもの』って何の事?」 「・・・・・・・・・・・・・分からんのなら敢えて言いたくはない」 「言ってくれたら今日、仕事頑張っちゃうかも」 「・・・・・見え透いた嘘を吐くな。この狸が」 「失敬だね君。僕のような善良な人間に対してその言い草!サイテー」 「・・・・・どっちが。・・・・・もういい、喧しくて敵わん。聞きたきゃ聞かせてやる」 「お、やったね」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今から二週間前」 〜回想:ライエルさん視点〜 夏も終わり、少し涼しくなってきた頃。事前連絡すれば必ずといっていいほど手厚く歓迎されてしまう救世主殿は いつも突然やって来る。歓迎の度に無駄に金を使わせるのに抵抗があるらしい。一種の気遣いみたいなものか。 そんなわけでその日も突然やって来た。それはいい。会えて嬉しい。例え彼が選んだのが俺でなくとも。 ただ、その相手がオスカーという事に物凄く腹が立つのも確かだが。それでも彼が幸せなら、それでいいとは思う。 笑っている顔が好きだから。その笑顔さえ曇らなければそれでいい。 ・・・・・・・・・・と思っていたのだが。 「ねぇねぇ、アーネストこれ見てーv」 「・・・・・・・・・・・・・何だ?」 子供のようにはしゃいで、楽しそうにしている彼にこちらもつられて笑みが浮かぶ。 普段大人びた態度を見せる彼がこうしてはしゃいでいるだけでも、こちらとしては幸せな気分だ。 しかし、そんな気分もそう長くは続かない。 「この指輪ね、キレイでしょ?」 「そうだな。お前によく似合う・・・・・・・」 「ホント!?これね、オスカーに買ってもらったんだ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・爆弾を落とされた。 いや、オスカーとそういう仲なのは知っているのだが、本人の口から言われると来るものがある。 ある意味、ソウルフォースを喰らうよりキツイものがあると思う。知っててそれをやってるなら犯罪といっても過言でない。 が、彼は自覚がないが天然なので、無意識ゆえの言葉なのだろう。それはそれで哀しいが・・・・胃が痛くなってきた。 それでも折角嬉しそうな彼の笑みを曇らせたくはなかったので、自分に鞭打って相槌を返す。 「・・・・・・・・そ、それは良かったな・・・・・・」 「うん、これ『えんげーじりんぐ』っていうんだって」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そうか」 「持ってると幸せになれるって言ってた」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、なれるといいな」 「うん」 ああ、無邪気な笑顔が眩しい。 『君は俺の太陽だ』 そんな馬鹿げた台詞を吐く男の気持ちが少し分かった気がする。出来れば分かりたくなかったが。 それにしてもエンゲージリング・・・・・・意味分かってるのかこの子は。オスカーも用意周到な事で。独り身は寂しいな。 味わいたくもなかった気持ちを次々に味合わせてくれてアリガトウな、オスカー。 ・・・絶対呪ってやる。 「アーネスト、何か清々しい顔してるね」 「・・・・・・・フ、人間、行き着くところまで行き着くとこうなる」 「・・・・・・・・・・・・・・・?」 「オスカーとは上手くやってるか」 我ながら娘を嫁に出す父親のような事を言うなと思う。 恐らく肯定が返ってくるだろう事は分かっているが。まあ、否定が返ってきても複雑だしな。 何となく色々悟ってきてしまった。まだ22なのに・・・・・・・。 「うん、オスカー優しいから」 「・・・・・・・・そうか(初耳だな)」 「この間もね、俺がグラタン好きだからって作ってくれたの」 「・・・・・・・・・・・・・・ほう」 「でも、凄く熱くて上手く食べられずにいたら、オスカーが冷ましながら食べさせてくれたんだ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」 「あと、ケーキとかも作ってくれるし、時々お昼寝とかもする」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「その時ねえ、確かオスカーが寝言で『アーネストなんて白髪のクセに!』って叫んでた」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言ってくれるな(アイツ・・・・・・殺す)」 「でね、オスカーって寝顔が結構可愛いんだよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう・・・・・・か・・・・・・・」 「あとねえ、あとねえ・・・・・・・・」 「ま、まだあるのか」 「うん。え、何?ひょっとして、迷惑?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・い、・・・・・・・・いや(そんな瞳で見るな)」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 〜回想終了〜 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「・・・・・・・・・・・・・・という話をして、というかされてな」 「あらら、カーマインってばアーネストにそんな事まで言っちゃってるんだ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・白々しい」 「ままま、で、結局『あんなもの』って何?指輪?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ノロケ」 「は?」 「だから・・・・・・純情可憐だったあの子がノロケなんてする様を見たくなかったんだ」 「・・・・・・・・・・・・それはまた、嫁入り前の娘の父親のような・・・・・・・・」 「・・・・・・・心的傷害もいいとこだ。慰謝料払え」 「なんっで僕が・・・・・・・!」 「別に金の事を言ってるわけじゃない。せめて今日くらい自分の仕事をやってくれ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そう言うアーネストの顔が妙に寂しそうだったので僕は何も言えなかった。 「あ、でもそしたらカーマインどうしよう。折角来てるのに」 「・・・・・・・・・・・また俺がノロケでも聞いておいてやる。だからさっさと仕事しろ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいはい」 それじゃあ、慰謝料にならないとは思うけど。 「アーネスト・・・・・・・・・・・ごめんね、有難う」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前が死んだらチャラにしてやる」 「・・・・・・・・・・・・・・かわいくなーい」 「・・・・・・・・・・・・虫唾が走るような事を言うな。それから紅茶、蒸しすぎだぞ」 「え、ああ!?・・・・・・・・・うわ、苦っ何これ!淹れ直しー!」 「なら序でに俺の分も淹れてくれ」 「ぜーたく者」 「あんなにキレイな恋人がいるお前に言われたくない」 「・・・・・・・・・・・・・・はーいはい、今回は僕の負け」 アーネストも随分言うようになったねえ。今日はお赤飯だよ。 まあ、何だかんだ言って、君が親友でよかったと思うよ?口に出しては言わないけどね。 「じゃあ、カーマインの事よろしく・・・・・・あ、僕がいないからって間男しないでよ?」 「その口、次に利いたら殺すぞ」 「おー怖い、怖い」 口は悪いけど、人のいい親友に、可愛い花嫁さん。 僕ってかなり幸せ者だねえ。うんうん。仕事が片付いたら、まあ仕方ないからアーネストにお礼言って、 その後またカーマインとノロケ話のネタでも作りましょーかねえ。 艶やかに主張しあう木々の紅葉をちらりと見遣り、僕は三人分のカップにそれと同じく紅い紅茶を注いだ。 ゆらゆらと揺らめく水面は秋を封じ込めた小さな箱庭のようだと何の気なしに思う。僕の大好きな季節。 それを僕と大好きな二人で分け合うのも、なかなかイイ感じだと一人咽喉を鳴らして笑った。 fin…? うひょう、長らくお待たせ致しましたー! リクは「新婚オス主」という事だったんですが・・・・・・・・・・・綺月さん、どの辺が??? しかもアニーさんすっかりパピーですよ。むしろアニーさんのパピーぶりを熱心に書いてました(蹴) ちなみに青色ティータイムの対みたいなものだと思って頂ければ。それにしてもタイトルセンスないですね。 というか全てにおいてセンスないですね。ごめんなさい、ごめんなさい〜!!!! 33333譲渡として高橋様に捧げます。やり直しはDONと来ーいですので遠慮なくどうぞ。もうすっぱりと! でわでわ、こんな奴の自爆キリ受け取って下さって有難うございました〜!! |
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