純恋歌




陽光が、大きなステンドグラスから差し込むバーンシュタイン城の回廊を一人の青年が歩いている。
磨き込まれた床に漆黒の制服を映し出しながら、優雅な所作で以って回廊の奥にある部屋を目指す。
しかしその途中にあるドアからいきなり人が出て来たために、足を止める間もなくぶつかってしまった。

「「!」」

ドアから出て来た人物が急いでいたのか、思いの外ぶつかった衝撃が大きく、青年は鼻を打ったようで、
片手で押さえながら自分の頭を、胸へと埋める形となってしまった相手の顔を見上げた。

「あの、すみませんでし・・・・あ、ライエル」
「大丈夫かカーマイン?悪かったな、前を確認してなかった」
「いや、それは此方こそ。急いでるのか?」

小脇に書類を抱えているライエルに気づいてカーマインが首を傾げば、いやとライエルは否定する。
仏頂面が僅かに歪み、険を含む。その表情を今までに何度か見た事のあるカーマインはああと小さく呟く。
脳裏に目の前に立つ長身の男の友人を浮かべ、苦笑した。

「またオスカーか?」
「それだ」
「今度はどうしたんだ?」
「いや、知らない内に見覚えのない書類が混ざっててな。十中八九アイツだ」

どうせまた俺が席を外した隙に置いて行ったんだろう、と溜息を混じえた低い声に何と言っていいか分からず、
カーマインは曖昧に頷く事しか出来ない。そっと慰めるように自分の頭とほぼ同じ位置にある肩を叩いた。
華奢な指先が肩に触れてアーネストは一瞬、病的に白い頬を緩ませる。

「まあ、いつもの事だ。気にするな」
「・・・・顔色があまり良くない気がするけど・・・」
「少し寝不足なだけだろう。心配しなくていい」

ぽんぽんと自分がされたように、カーマインの漆黒の髪を撫でると優しく瞳を細めた。
暖かな焔の色をした瞳に見下ろされ、カーマインは面食らったのかパチパチと長い睫を瞬かせる。
その仕種や表情が美しい造形との対比で可愛らしく映り、思わず抱き締めたい衝動に駆られるが、ライエルは
何とか堪え、未だにきょとんとしている目下の青年に気づかれぬよう、小さく呆れの吐息を漏らした。
その呆れは自分に対するものか、それとも鈍感なカーマインに向けたものかどうかは定かではないが。

「・・・・そういえばカーマイン、お前の方こそ急いでいるのではないか?」
「え?」

ライエルの不意の問いにカーマインは少々間の抜けた応えを返す。

「騎士の制服を着ているという事は公務なのだろう。仕事があるんじゃないのか?」
「あ、そうだった。書簡を届けないと・・・・」
「お前も大変だな」
「ライエルほどじゃないと思うけど・・・あ、そうだ。後で少し時間を取れないか?」

ふと思いついた、そんな調子で告げられた言葉にライエルは、ん?と相槌を寄越す。
それだけでどういう事だと問うているのが分かったカーマインは続けて言う。

「この辺りに新しくカフェが出来たみたいなんだけど、一緒に行けないかなと思って」
「それは構わないが・・・・俺でいいのか?」
「・・・・?君と行きたいから君に声を掛けたんだけど?」

躊躇いなく発せられたその言葉にライエルがどれだけ驚かされているか、そして喜んでいるか、
発した当人であるカーマインは知らない。恐らく、直接告げなければ彼が気づく事もないだろう。
ライエルもそれは分かってはいたが、敢えて口にしようとは思わなかった。そんな事を言われても
きっとカーマインが困るだけだと。胸の内にそっと留め置く。代わりに。

「分かった。そちらの用が済んだら声を掛けてくれ」

出来うる限りの笑みで、返答する。言葉に出来ない、自分の思いの全てを乗せるように。
そんなライエルを見てカーマインは安堵したのかほっと表情を緩ませた。何とも言えない柔らかで
和やかな空気が漂う。しかし、それを快く思わぬ者によってすぐさま打ち破られた。

「おや、そこにいるのはカーマインじゃないか」
「・・・・・オスカー」
「・・・・・・・・・・・・・」

タイミングからいって狙っていたなとライエルは眉間に皺を寄せた。わざわざそう指摘してやるほど
子供ではないので黙ってはいるが。ただ紅い瞳は不機嫌さを隠しようもなく、唐突に沸いて出た
同僚を鋭く睨み据えている。その視線を受けてオスカーは向き合うカーマインに気づかれぬよう
不敵な笑みを返す。

「ねえ、そういえばさっきカフェに行くとか何とか聞こえたんだけど」
「え、ああ。それが何か・・・」
「僕もご一緒させてもらっていいかな」
「・・・・・・・え?」

ずい、と遠慮する気配すら見せぬオスカーの物言いにカーマインは戸惑う。出来るならライエルと
二人の方がいい。その方が静かで落ち着くからだ。とはいえ、そのまま口にするのも躊躇われる。
言い方によってはもしかしたらオスカーを傷つけてしまうかもしれない。それ以上にオスカーの紫瞳が
何だか断りにくい雰囲気を醸し出していた。押しに弱いカーマインは結局その視線に耐え切れず
押し切られてしまう。

「・・・・分かった、じゃあオスカーも一緒に。いいかな、ライエル?」
「・・・・・・嫌だと言ったところでついてくるのは目に見えているからな・・・・」
「なんだいその言い草は。僕がいた方が場が華やかになるでしょ」
「・・・勝手に言ってろ」

やや疲れを露にしてライエルは肩を竦めた。それから用件は済んだとばかりにそそくさと自室に
戻ろうとしているオスカーの制服の長い襟を掴む。

「逃げるなオスカー」
「は?何の事だい」
「シラを切るつもりか。また勝手に人のところに書類を置いていったろう」
「いやだなあ、僕がそんな事をするとでも?被害妄想はやめてよ」
「そんな事をするような奴だから言ってるんだがな」

互いに険悪な相貌で、いつもの喧嘩を始める。それが限りなく日常茶飯事に近い事なので
大抵の人間は気に留めない。カーマインも相変わらずだなと思うだけで。これが始まると長いから
今のうちに仕事を済ませてしまおうと、そうっと足音を立てぬように気を遣いながら奥の謁見室を
目指して小走りでその場を後にした。



◆◇◇◆



「悪い、遅くなった・・・ってあれ?」

謁見室で書簡の提出を済ませてきたカーマインがライエルの執務室のドアを開ければ、
黙々と書類整理をしている部屋主がいて。先ほどは時間があると言っていた筈なのにどういう事かと
カーマインは頭上に疑問符を浮かべる。そんな彼の様子に気づいたライエルは身体ごと
振り返って、滅多に変わらない鉄面皮に僅かに申し訳なさそうな色を乗せた。

「・・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、オスカーに押し付けられた・・・とか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・すまん」

その一言が全てを物語っていた。結局先ほどの言い争いでライエルはオスカーに言い負かされて
しまったのだろう。これもまた、いつもの事ではあるが、理不尽に感じずにはいられない。
カーマインは形の良い薄紅色の唇をきゅっと不満げに尖らせた。

(せっかく久々に一緒に居られると思ったのに・・・)

ライエルもカーマインも、お互い多忙なために滅多に顔を合わす事がない。故にこうして会える時間は
非常に貴重なもので。その貴重な時間が奪われるのが、勿体ないような腹が立つような妙な感情に
駆らせる。普段ならば人それぞれに都合というものがあるのだからと納得できる筈なのに
今自分は何故ムッとしているのだろう、とカーマインは内心で自身に問う。しかしいくら自分に問いかけても
その答えは返らない。

「・・・・・・・・・・」
「・・・・カーマイン?」
「え、何だ?」
「いや、まだ時間が掛かるからな。何処かで時間を潰してくるか・・・オスカーと二人で行って来てもいいぞ」

あまり機嫌が宜しくないカーマインを目に留めて、ライエルは言う。本当はオスカーと二人きりになど
させたくはないと思いつつも、カーマインの機嫌を損ねさせるくらいならば、との苦渋の判断だった。
それは思い切り筋違いな見解なのだが。

「・・・・いや、待ってるよ。ライエルも一緒がいい」
「そうか」
「あ、でも無理はしなくていいから」
「気遣い感謝する。が、俺も一緒に行きたいからな。努力しよう」

要するに多少は無理をすると言っているライエルにカーマインは微かに細い眉を歪めた。けれども
それもまたライエルらしい答えだと思えて、苦笑にすり代える。胸の内に言い知れぬ温かい何かが広がると
同時、時折感じる潮騒のような騒めきが凪いでいく。不思議な感覚。心地よい筈なのに何処か
息苦しくなる。カーマインにはその原因が全く分からなかった。

(・・・・またか。何でライエルといるとこんな中途半端な気持ちになるんだろう)

一緒に居て安心するのに、それに相反するように胸が騒つく事がある。傍にいたいと思うのに、
何故かそれ以上近くに寄りたくないと思う事がある。そしてそんな事を思うくせに離れたいとは思わないのだ。
矛盾した感情の数々。訳が分からない。そこまで考えてこれでは堂々巡りだと、カーマインは
思考を打ち切ってライエルの邪魔にならぬよう、部屋から出て行こうとする。

「じゃあ、邪魔にならないよう少し出てくるな」
「別に邪魔じゃないぞ?」
「うん、でも話しかけちゃうかもしれないから」
「・・・・そうか」

頷いたライエルの低い吐息が、何処か寂しげでそれを不可解に思いながらもカーマインは先の通りに部屋を出て行く。
パタンと静かにドアを閉めると、まるで待ち伏せでもしていたかのように実にタイミングよくオスカーが現れた。

「!オスカー」
「やあ、また会ったねカーマイン」
「また会ったって言うか・・・・ライエルに仕事押し付けただろう」

咎めるような響きの声にもオスカーは悪びれた様子を見せない。飄々と、いつもの笑みを口元に湛えている。
その様に呆れ憤りを感じつつ、カーマインはそれを表に出す事なく、印象的な異色の双眸を閉じた。
軽く腕を組み、トントンと指先で組んだ腕を叩く。

「おや、なんだい。ご機嫌ナナメかな」
「・・・・・・・・別に」
「僕は楽がしたいわけじゃなくて、君と一緒にいたいだけなんだよ?」
「・・・・・・・・・?」

オスカーから言われた言葉を理解出来ないらしく、カーマインは首を傾ぐ。他人の事には鋭いのに、
自分に向けられた好意には気づかない難儀な性質で。それを分かっているオスカーは可愛いなぁと
思いながら、不思議そうな顔をしているカーマインの頭を撫でる。

「君は本当に何時まで経っても変わらないね」
「・・・・・・・・・・?」
「うん、本当に変わらない」

手袋を填めた、騎士にしては随分細い指先が漆黒の髪からこめかみを辿り、頬へと下ろされる。
そのまま羽が触れるような優しい手つきで頬の曲線をなぞっていく。カーマインはその接触に
苛立っていた感情がゆっくりと払拭されていくのを感じた。けれど。それでも込み上げてくる思い。
気づけばその思いのままに言葉を発していた。

「・・・オスカー。君が悪気はないのは分かるけど・・・でもあまりライエルを困らせないで欲しい」
「ん?」
「ライエルが、君の親友であるように俺にとってもライエルは・・・・大事な友人なんだ。だから・・・・」

だから、何だと言うのだろう。続きを上手く言えず、言葉を詰まらせているとまた優しく頬を撫でられて。
カーマインは眉根を寄せた。自分を見つめるオスカーの瞳が酷く穏やかで、そして悲しげだったから。

「オスカー?」
「君は鈍いね。そこが可愛いけど」
「・・・・・?」
「アーネストは幸せ者だなぁ」

それ故、嫌がらせや邪魔をしたくなる。そんな本音を隠してオスカーはひたすら笑う。この目の前に
立っている青年は、無自覚でありながらライエルに想いを寄せているのが分かって。
近くで見ていればきっと誰にでも分かる。このカーマインという青年はアーネスト=ライエルの前では
本人も気づかぬ内にとても柔らかな笑みを浮かべ、幸せそうな表情をしているのだから。
もし、どちらかが己の思いを打ち明けてしまえば、簡単に纏まるだろうとそう思えるほどに。
分かりやすい、相思相愛。

「ま、そんな簡単に認めてあげないけど」
「・・・・・・・え?」
「ん、コッチの話。それより、アーネストの仕事が終わるまでちょっと暇潰しに付き合わない?」
「それをオスカーが言うのか?まあ、いいけど」

ライエルに仕事を押し付けたオスカーが暇潰しをするという行為に疑問を抱きながらも、カーマインは
確かに暇なので苦笑気味に承諾する。招かれるままにオスカーの執務室へと足を踏み入れた。
その隣の部屋では、カーマインとの約束を果たすためライエルがいつも以上に気合を入れて書類処理を行っていた。



◆◇◇◆



「や、遅かったね」

数時間後。
漸くオスカーから寄越された書類の処理を終えたライエルが隣室の扉を開けば、全く反省した様子もない
オスカーが片手を挙げながら出迎えて来た。その図太い神経が癪に障ってライエルは若干荒げた声を上げる。

「お前な・・・・!」
「おっと静かにしなよ。待ちくたびれてお姫様がおねむなんだから」
「!」

そのまま怒鳴り散らそうとすれば、オスカーにソファの辺りを指差され、ライエルは吐き出そうとしていた罵詈雑言を
押さえ込む。オスカーが指し示した場所には横たわる黒髪が見えていた。

「・・・・・眠ってしまったか」
「疲れてるんだろうね」
「起こさない方がいいだろうな」

足音を立てないように気を配りながら毛布を掛けられ、規則正しい寝息を零しているカーマインの傍へと
ライエルは歩み寄る。目の前まで来てそっと大きな体躯を縮ませ、まだあどけなさの残る可愛らしい寝顔を
見下ろした。はらりと白い頬に掛かっている長い前髪を優しく払う。

「・・・・遅くなって悪かったな」

謝ったところで返事が返ってこない事は分かってはいたが、言わずにはいられなかったのか呟いて
露になった額を撫でた。オスカーの目がなければ、今手が触れているそこに口付けていたかもしれない。
そんな馬鹿な事を思いながら、ライエルは僅かに顔を歪めた。

「また約束を果たせなかった・・・・」
「僕のせいだとでも?」
「そうだな、お前も悪いが・・・・俺も悪いんだろう」
「・・・・・なるほど。そこが勝因か」
「は?」

ライエルの言葉にオスカーが意味の分からない呟きを漏らす。意図を探ろうとライエルは聞き返した。

「何が勝因だって?」
「べーつーにー。さっさと彼をベッドにでも運んでくれば」
「何?」
「おや、いいのかい。このまま僕の部屋で彼を寝かせてても」
「・・・・・・・・・っ、分かった」

まるで答えたくないとでも言うかのように話題転換したオスカーを不審に思うものの、彼の言う通り
カーマインをここに寝かせておくのは許しがたくて、ライエルは気になりつつもカーマインを移動させる事を
優先させた。ソファから起こさないように抱き上げる。

「・・・・覚えてろよ、オスカー」
「何をだい?」
「次は絶対お前の書類なんて片さないからな」
「さあ、それはどうでしょう。それに僕は過去を振り返らない主義なんでね。きっと忘れるよ」
「・・・・・この狸が」
「ウサギさんに言われたくないなあ」
「なんだと、貴様っ」
「あんまり大きな声を出すとカーマインが起きちゃうよ?」
「・・・・・・・・・っ」

最後の一言が効いたようで、青筋を浮かべていたライエルは再び黙り込んでオスカーの執務室から姿を消した。
二人分の後姿をひらひらと手を振って見送っていたオスカーはドアが空間を隔てると、溜め込んでいた息を
一気に吐き出す。いつも笑顔を浮かべている面には苦いものでも噛み潰したような、そんな表情を乗せている。

「このままじゃ、アーネストに勝てそうもないねえ」

つい今し方目にしたライエルの勝因、とやらを思い浮かべてオスカーは悔しげにそして何処か晴れ晴れとした
笑みで一言ぼやいて目を閉じた。



◆◇◇◆



ギシリとベッドが軋み、痩身が横たえられる。ベッドの縁から零れた腕を拾って、毛布の中へとしまってやりながら
ライエルは酷く後悔した面構えで、気持ち良さそうに眠っている青年を見下ろす。オスカーの妨害があるというのも
相俟って、こうして幾度約束を反故した事だろう。そんな事を考えながら、カーマインの髪を梳く。
いつも気がついたらこうして髪を梳いているなと自分で不思議に思いながらもそれを止めようとは思わなかった。
ふと肌に触れた指が擽ったかったのか、カーマインは小さく身じろぐ。

「・・・・・・・ん」

ころんと寝返ってライエルと対面する寝顔。横を向けばより以上に伏せられた睫の長さが目に留まる。
うっすらと開かれた唇が、思わず触れたいという欲求を誘い出す。これ以上は見ていられないと、ライエルが
目を背けようとしたその瞬間、クンと腕が引かれた。

「!?」

何だと思い、力の掛かる方へ視線を移せば、寝ぼけているのかカーマインが自身に伸ばされたライエルの腕を
自らの両腕で抱きこんでいた。当然、腕を取られたライエルは驚く。常は鋭い紅い眼を丸く見開いた。

「・・・・・カ、カーマイン・・・?」

まさか起きているのかと思い声を掛けるが返答はない。呼吸も偽っているものとも思えない。本当に寝ぼけている。
腕を、抱き締められてるだけならまだよかったが、更にカーマインはそれがまるで子犬や仔猫のような小動物
かのように、すりすりと頬を摺り寄せ始めて。好意を持った相手にそんな事をされれば誰でも動じる。
如何に冷静沈着と皆から言われるライエルも大いに慌てた。血の気の失せている頬が、我知らず朱に染まっていく。

「ちょ・・・待て、カーマイン」

手を離せと比較的小声で言いながら、囚われた腕を取り戻そうとするが、手荒い真似が出来ぬため上手く行かない。
その間もカーマインはライエルの腕に甘えっ子の如く擦り寄っている。しかもその顔が微かに嬉しそうで、ついつい
見惚れてしまう。どうしたものかとライエルが頭を悩ませているのも知らず、カーマインはくうくう寝入っていた。
そしてトドメとばかりに一言。

「・・・・ライエル」

夢でも見ているのか、無意識にカーマインはライエルの名を紡ぐ。それだけでもどれほどライエルの心臓が
悲鳴を上げているか眠っているカーマインには分からない。否、起きていたところで分からないだろう。
真っ赤な顔を片手で覆いながら、ライエルは何も知らない暢気な寝顔を恨みがましそうに見遣る。

「・・・・・お前って奴は本当に・・・・」

それから先は言葉にならず、溜息に変わる。一生分くらいありそうな長い息を吐き出した後、諦めたように
笑って、オスカーの目前では控えた口付けを、真っ白な額の上へと施す。物足りないと思う自分を叱咤して、
眠れるわけがないと思いながらもぎゅっと瞳を閉じ、シーツへと顔を落としたライエルは、口付けの後、
心地良さ気にほんのりと口元を緩めたカーマインに気づく事はなかった。



fin?





Bluex3のYouko様との相互リンクの記念に書かせ頂きました。
「アー→主←オスでライエルと一緒にいると邪魔してくるオスカーにむっとするカーマイン」の
つもりだったんですが、リクエストこなせてるでしょうか??
一応無自覚で、とあったんですがそこまでして無自覚なのは罪よカーマイン!
みたいな出来になってしまいました。こんなものしか書けないバカヤロウではありますが
宜しくして頂けると幸いです、Youko様〜!!
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