曖昧で確かな正義








「ヴァルカニアに正義があるとは思えない」



同盟国たるマーキュレイ王国の城内占拠、財宝奪略。
もともと戦う力など持たぬ彼らに対しての横暴な行為の数々はどう見ても許されるものではない。
自国の事を思えば当然の事、そんな一言で終わらせて何になる。
自分たちが豊かになる為に他者を貶めるような真似をして、本当に幸せになれるものなのか?


否、そんな筈はない。
この世に生を受けた者は誰しも幸せになる権利があり、どこに生まれようと、誰の血を受け継ごうと、
その命の重さは変わりはしないのだから。


そう、判っていても僕はなかなかあと一歩を踏み出せずにいる。
己の正義を貫きたい。しかし自国の民も護りたい。
今自分が謀反を起こせば、自分が望むにしろ望まぬにしろ、自国の民と戦わねばならないのだ。
思いあぐねて僕は自分にとって一番頼りになる存在、兄のクリストファーに相談する事にした。







「・・・・ねえ、兄さん・・・・・どうしたらいいと思う?」


我ながら重い響きだと思う。チラッと兄の方を見遣れば自分と同じ顔はやや苦笑するように歪んで。


「・・・・・まあ、確かにやり方は多少荒っぽいが、一国の王としては妥当なんじゃないか?
財源がなけりゃあ、どんなに強い国も内側から崩壊しちまうからな。ま、俺がどうこう言う事じゃない。
それに本当は俺に訊かなくてもお前はどうしたいか決まってるんだろう?」


兄の長い銀髪が揺れる。
その問いを受けて必死に自分がどうしたいのか考える。


僕は何の為にロイヤルガードになろうとした?

何をしたかった?

何を、誰を護りたかった?


一生懸命考えて、たった一つの答えに辿り着く。
僕は人々の笑顔を、営みを護りたかった。誰も争う事のない、平和な世界を築きたかった。
決して自分が富む為でも名誉を得る為でもない。大義名分なんて必要ない。


それに今は本当にこの命を捧げてでも護りたい人がいる。
夕焼け色の優しい彼。停戦態勢中であったにしろ、敵国の者には変わりない僕に綺麗な微笑をくれた。
僕の意見に真剣に耳を傾けてくれた。落ち込んでいる時は苦笑するように慰めてくれた。
とてもとても大切な人。彼の為ならば反逆者と罵られても構わない。それくらいの覚悟はある。
僕はいつの間にか下がっていた顔を上げ、口を開く。


「・・・・・僕は自分の正義を、思いを貫く」
「・・・・だと思った。でもま、安心しろ。俺は何処までだってお前についてってやる」


兄さんの優しい声。
僕は本当に果報者だ。掛け値なしにそう思う。


ねえ、クレヴァニール。
僕はこれから反逆の道を歩むけど、多くの民を犠牲にするかもしれないけど。
己の信念の為、僕を信じてくれる人の為、僕の為、そして君の為に戦うから。


だから。
今度会うその時は。
どうかその柔らかな微笑を僕に与えてほしい。




―――君の笑顔が僕の強さと力になる筈だから・・・・・





fin






おお、微妙だ。やる気のなさが窺えるよ。
いえアルフ主は好きですよ?ほのぼのしてますし。
ただ技術がついていかないだけです←大問題ですね


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