fairytail 「・・・・・さて、どうしたものでしょうか」 両手で大事そうに小さなゼオンシルトを包み込みながら、ルーファスは呟く。 本来は用事があって街から出ようとしていたのだが、思わぬ別の用事が出来てしまったために来た道を 戻るはめになってしまった。おまけに一時的な事だろうが、面倒を運んできてくれた当人は 口が利けなくなってしまっている。どうにも困った状態だ。 「せめて状況確認だけでも出来ればいいのですが」 返事がなければ、どれほど穏やかで美しい声でもただの愚痴でしかなくなる。吐息が混じった。 そんな何処となく疲れた様子を垣間見せるルーファスをゼオンシルトは非常に申し訳なさそうに見上げる。 元々大人しそうな印象だったが小さくなっているせいか余計にその様は貧弱に見え、ルーファスは複雑だった。 これが、憎むべき維持軍の姿かと。とてもそうは見えない。むしろ守ってやらねばと庇護欲を煽られるくらいで。 調子が狂うのを自覚し、ルーファスの眉間に普段は滅多に刻まれる事のない皺が寄った。 「・・・・・・・・・・・・ッ」 びくり、ゼオンシルトは怯える。怒られるとでも思ったのだろう。自分の手の中で震えた小さな肢体に ルーファスは益々調子を狂わされ。仕方ないとばかりに肩を竦めた後、両手に抱えたゼオンシルトを自分の顔の 前まで持ち上げ、にこり。 「大丈夫、怒ってませんから」 優しく告げれば、ゼオンシルトの緋色のつぶらな瞳が「本当?」とでも問うかのように揺らぐ。 まるで捨てられた子犬のような眼差し。そんなものを受けて無下に出来る筈もなく。ルーファスは頷き、片手に ゼオンシルトを持ち直し、指を一本差し出すとそれでふわふわの髪を撫でた。 「!」 くすぐったいのか、ゼオンシルトは僅かに身を捩るがその表情は何処か嬉しそうで。妖精を可愛がる サポーターたちの気持ちがよく分かる、とルーファスは脳裏にロッティへは何処か甘い同僚の姿を浮かべた。 今のこの姿なら彼もゼオンシルトには甘くなるかもしれない。そう思えてしまうほど、素直に頭を撫でられている 小さな青年は愛らしくて。少し名残惜しさに浸りつつ、ルーファスは指を離す。 「・・・・・ところでゼオンシルト。まだ声は出ませんか?」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・そうですか。私がよほど驚かせてしまったようですね、すみません」 首を傾げる動きに、ルーファスは苦笑して。 「私が貴方を見つけた時、隠れようとしていたでしょう?」 「!」 「考えてもみれば、私個人が貴方個人を憎む理由は何一つとしてないのですよね。 このゼルドックが被害を被った時に貴方は生まれていなかった。ただ貴方が平和維持軍に所属している、 それだけなのに・・・・・これからは少し態度を改めなければならないようです」 深く反省の色を乗せた声にゼオンシルトはどうしていいか分からなくなった。確かに今まで維持軍であると いうだけで冷たく接せられるのが悲しかったけれど、それだけ維持軍がグランゲイルの民たちの心を傷つけて しまったという事で。言うなればどちらも悪いのだ。反省すべきは両方であって片方だけすればいいというものでは なく、ゼオンシルトは自分も謝らなければ、と思うものの声が出ないためにそれも叶わない。 少しでも気持ちが伝わればいいと間近にあるルーファスの頬へと小さな小さな手を触れさせた。 触れたというのが微かに分かる程度の軽い感触。けれど、真摯な様子のゼオンシルトにルーファスの胸は打たれ。 「・・・・・・慰めて下さるのですか?」 問いかけには戸惑った視線が返される。 「貴方は・・・・・優しい子ですね」 微笑が穏やかに見つめてきて、ゼオンシルトは益々戸惑う。何か反論したくとも声が出ないというのは 実にもどかしく。一方的に言い募られては、はけ口もなくただただ恥ずかしかった。頬を朱に染めて ゼオンシルトは顔を隠す。そんな姿も愛らしいとルーファスが心中で思っているとも知らずに。 暫くそのままの状態が続いたが、何か物足りなくなって顔を隠して悶えているゼオンシルトにルーファスは ちょっかいを出し始める。ぷにぷにと脇腹部分を突付かれて俯いていた顔が反射的に上がる。 「〜〜〜ッ」 驚いて見開かれる紅い瞳。何処か嗜虐心を煽るそれに耐え切れず、ルーファスは突付きから擽りへと 指の動きを変える。じたばたと小さな身体がルーファスの手の中で暴れているが、越えられない絶対的な サイズ差のおかげでそれは抵抗らしい抵抗にはならず。やがて、堰を切った水のように押し寄せる擽ったさに 負けたゼオンシルトは声を上げて笑い出した。 「あ、あははははは」 「あ、声が戻りましたね」 言いながらもまだ指はこしょこしょと動き。 「あは、・・・・た、大尉やめ・・・あははははは」 「何ですか、何て言ってるか全然分かりません」 「う、嘘・・・ひゃあ・・・・くすぐっ・・・・・あはは、やーめーてー」 よほど限界状態にあるのか、目元に涙を浮かべて笑い転げるゼオンシルト。その声は辺りに筒抜けとなり、 ちらほらと奇異の瞳がゼオンシルト・・・というよりは彼を持っているルーファスへと向けられ。 「・・・・・・これ以上注目されるのはまずいですね」 ぴたり。指の動きが止まるとゼオンシルトはやっと訪れた休息に身中に堪ったと息を全て吐き出し 呼吸を整える。まだびくびくと脇の辺りの筋肉と腹筋が震えていた。その間にルーファスは人目から 逃れるかの如く、流麗で且つ素早く移動しだす。すれ違う人々に愛想を振りまく様子は抜け目がないとしか 言いようがなかった。ゼオンシルトの中でルーファスの印象が冷たい人から掴めない人へと移り変わる。 それにしても。 「ひどいです、大尉。お腹痛いです」 「でも、おかげで声は出るようになりましたね?」 にっこり。作った笑みとすぐに知れるそれが寄越され。 「・・・・大尉、性格悪いです」 「私は自分の事を善人だと言った覚えは一度たりともありませんが?」 「〜〜〜意地悪です!」 「そうですね」 「〜〜〜〜ッ」 何を言ってもさらりと返って来る応えにゼオンシルトは唇を尖らせた。口ではどうしたって勝てそうにない。 笑い疲れた事もあり、ぐったりと身体を弛緩させていれば、先ほどまでの意地の悪さを感じさせずに ルーファスが丸まったゼオンシルトの背を指で優しく擦る。 「・・・・・・・・・・・」 優しいのか意地悪なのかどっちかにして欲しい。心の底からゼオンシルトは願った。 そうでなければ反応に困る。案の定、白い面には何とも言えない曖昧な表情が乗せられていた。 怒るべきか、礼を言うべきか迷っていると言ったところか。 「面白い顔をしてますね、ゼオンシルト」 「誰のせいですか・・・・」 「おや、私のせいですか?」 「他に誰がいるんです」 とぼけた発言に呆れた吐息が返る。が、言われたルーファスの方は全く堪えていないようだ。 口元から笑みが消えない。 「まあ、私の事をどう思おうが自由ですが・・・・。言葉が戻ったのでしたら状況を説明願いたいですね」 「状況・・・・・。ああ、俺が小さくなってるのは知人の研究の結果で・・・じきに戻ります」 「じきに・・・とはどのくらいですか?」 「一日、と聞いてます」 「はあ。それで何故こんなところに?」 「それは・・・コリンが・・・あ、そうだコリン!」 思い出したように声を荒げるゼオンシルト。 「コリン、宿屋に水を貰いに行ってくれてるんです。このままじゃすれ違っちゃう・・・」 「では宿屋に行けばいいのですね?」 「あ、はい。お願いします」 頷いてルーファスは戻ってくるかもしれないコリンとすれ違わぬよう周囲を気にしつつ、宿屋へと急ぐ。 結構揺れるのでゼオンシルトは落っこちないよう、しっかりとルーファスの手にしがみつく。 その当人からしたら渾身の、けれどルーファスからすればあまりに儚い力は余計に可愛らしく感じ。 「落としたりしませんから、安心して下さい」 言って、また両手で小さな身体を抱き直し、足の動きを早める。 途中、小さなカップに水を汲んだコリンが舞い戻ってくるのが見えた。ルーファスはともすれば 通り過ぎようとする彼女を呼び止め。 「ああ、ちょっと待って下さいお嬢さん」 「ふぇ?」 「・・・・お嬢さんって・・・」 もっと他に呼びようがないのかとゼオンシルトが呟くとやはりルーファスは笑って。 「名前を知りませんので」 全く悪びれない。そして呼び止められたコリンは不思議そうにルーファスを見ていたが彼の手の中に ゼオンシルトを見つけると声高に叫ぶ。 「あー!ゼオンシルトー!」 「コリン、声大きい」 「何で何でー。グランゲイルの人となんかいるわけー?」 「グランゲイルの人、ではなくルーファスと呼んで頂きたいですね。 ちなみに彼は私が保護しました。何か異存でも?」 有無を言わさぬ調子で告げるルーファスに流石の物怖じしないコリンも怯んだ。コップの中の水を 零しそうになり、慌てて持ち直す。 「な、何かよく分かんないけど水、持ってきたから」 「え、ああ・・・うん。有難う」 「あのさあ、ゼオンシルトこの後どうするの?」 「どうするって・・・・どうしよう」 受け取ったコップの中の水をくぴくぴ飲みつつゼオンシルトは首を捻った。コリンに流されるままに 行動していた故に具体的にどうしようかなどと彼は考えていなかったのだ。その様子を見てコリンは呆れて。 「アンタさあ・・・もうちょっと危機感とか計画性とか持ってないと誘拐されちゃうわよ」 「ゆーかい?」 「ほら、その人とか如何にもしそうじゃない」 「フフフ、それは心外ですね。それに私はその人ではなくルーファスだと言いましたよ?」 口角は上がっているのに、怒気を感じてコリンは固まる。 「私もあまり同じ事を何度も言いたくはありませんから、気を付けて下さいね?」 お願いが、彼の口から出ると脅迫のように聞こえるのは何故だろう。声も雰囲気も至って穏やかなのに。 ゼオンシルトはぞくぞくと自分の背筋に悪寒が走るのを感じた。やっぱり、この人怖いかも。 そんな事を考えている間にルーファスが更にゼオンシルトを困らせる事を言う。 「ああ、そうだ。行くところがないのでしたら私が預かって差し上げますよ?」 「「・・・・・・え?」」 「それとも、丸一日野宿でもするおつもりですか?猫か何かに取って食われても知りませんけど」 さらっと吐かれた毒に二人の小さな青年少女は何も言えずに口を閉ざした。 確かに守ってくれる人間もなしにこの二人での野宿は危険すぎる。猫や犬どころか雀一羽にすら 敵いっこないだろう。よって二人に選べる選択肢は一つしかなく。 「「・・・・・・お世話になります」」 二色の重なった声は何処までも憂鬱そうだった。 ◆◇◇◆ 「はい、あーん」 「・・・・・・・・・・」 ご丁寧な事にあの後ルーファスに彼の部屋へと連れてこられた二人。 そしておままごとでもするかのように小さな二人に合わせた小さな料理が目の前に並び。 更にこの状況を楽しんでいるとしか思えぬ部屋主は、串に刺したリンゴやらその他もろもろを 食べさせようとする。 「あ、アタシはラナの実があるからアンタ食べさせてもらいなさいよ」 「ええ?!」 ポン 肩を叩いてコリンは裏切り行為に出た。対するゼオンシルトは、真正面のルーファスを恐る恐る見上げ。 穏やかな相貌による穏やかな微笑は拒否というものを許してくれない。少なくともゼオンシルトの目には そう映り。こんな小さな身体で逆らって実力行使に出られては堪ったものではないため、渋々従い。 ぱくり 差し出されたリンゴに齧り付く。さっさと嚥下しようとろくに噛みもせず飲み込む。ゴホゴホと咽れば 大きな指先は労わるように背を撫で。 「慌ててはダメですよ」 「・・・・・・・・・・・・」 「はい、もう一口」 それでも止めるつもりはないらしく。ルーファスが飽きるまでその単調な作業は繰り返された。 はっきり言って自分で食べた方が早い上、どうにも恥ずかしい。そうは思えど、ゼオンシルトはどうしても 首を振る事が出来ず、食事が終わる頃には同席のコリン共々辟易してしまっていた。 「はい、ご馳走様したら次はお風呂ですね」 びくり。片づけを及ばずながら手伝っているゼオンシルトの肩が大きく震えた。それは当然の反応だった。 今まで散々ルーファスの玩具にされていたのだから。お風呂なんて絶対遊ぶ気に違いない。 拭き終えた食器を棚にしまい、にっこり微笑むとルーファスはゼオンシルトの身体を持ち上げ。 「では、一緒に入りましょうか?」 「こ、ココココリンは・・・?」 「え、アタシー?アタシは妖精だから老廃物は出ないからお風呂に入る必要ないんだよー♪」 「そもそも彼女は女性なのですから一緒には入れませんね」 「ううっ」 せめて道連れにしようと思ったコリンには妖精、且つ性別の逃げ道があった。狡い。本日何度目かの 恨み言をゼオンシルトは心中で呟いた。口に出したところで何にもならないのだろうが。 剥れて抗議しても取り合ってもらえず、ルーファスの身体は部屋に備え付けのバスルームへと向かう。 敷居のカーテンを開け、脱衣所に入ると意味深な蒼い瞳で手の中の青年を見下ろし。 「脱がして差し上げましょうか?」 恐ろしい事を言う。それにはゼオンシルト、本当に首がもげそうになるほど全力で振って否をアピール。 その勢いは凄まじく、ゼオンシルトは自らの行動で眩暈に襲われた。 「おやおや、大丈夫ですか」 「だいじょうぶれすー」 「大丈夫ではなさそうですが・・・・まあそこまで嫌がるのでしたら私も何もしませんよ」 ご自分で脱いで下さいねとやや残念そうに呟き、脱衣籠の上に彼を下ろすと自分の服を脱ぎだす。 そこで改めてゼオンシルトは思い知る。 「ほ、本当に一緒に入るんですか?!」 「おや、冗談だと思っていたのですか?いいでしょう、男同士なんですから」 「え、でも・・・あの・・・その・・・・」 「なんです?もしかして貴方もギャリックのように恥ずかしいとか言う人ですか?」 相変わらず何でもない調子で聞き捨てならない事を告げる男にゼオンシルトは目を白黒させた。 恥ずかしがる?あのギャリック大尉が?そういうのは気にしない人に見えたが。色々な思考と疑問が脳裏を過ぎり。 それらを見透かしていたかのようにルーファスはゼオンシルトを見下ろす。 「意外、ですか?ギャリックはああ見えて恥ずかしがり屋なんですよ。 ただ男同士で入る分には問題ないのですが、あまりじろじろ見られるとすぐに顔を紅くしてしまうんですよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 それはルーファスが悪いんじゃないだろうか。思ってもゼオンシルトは黙っている。ただただ、ギャリック大尉を 不憫に思うだけだ。それはきっともう針の莚の如く、視姦とも言えるほどに見つめられたのだろう。 どちらかといえばルーファスの方が見られそうな容姿をしているというのに。 「本当に大尉は意地悪なんですね」 「そう思いますか?」 「思います」 「そう」 溜息を吐くゼオンシルトを視界に認めてルーファスは苦笑を漏らす。自分が意地悪をするのはそれなりに 気に入った相手にだけなのだけれどと一人ごちて。服を脱ぎ終えるとルーファスは同じく脱いで蹲ってる ゼオンシルトを掬い上げ。 「おや、貴方もギャリックと一緒ですか?」 「〜〜〜〜!!」 「照れた顔、可愛いですよ」 「そ、そんな事より下隠して下さい〜!!」 真っ赤になって顔を隠すゼオンシルト。堂々としているルーファス。顔は至って女性的なだけにその肢体を見ると どうにも違和感を感じてしまう。故にゼオンシルトは見ないよう己の顔を自分の腕で覆ってしまっている。 ルーファスはそんな彼を不思議そうに見守っていたが、仕方なく言う事を聞いてやり。 「私は気にしないんですがねえ」 「俺は気にします!」 「そんな事を気にするより頭のリボンを気にした方がいいと思うんですが」 「!」 すっかり忘れていた事を指摘され、ゼオンシルトはずっとつけっぱなしだったリボンを慌てて外し。 腰にタオルを巻いた見た目とは違って男らしい性格のルーファスは浴室へと足を運んだ。 ちょうどいい温度に湯を張ったバスタブの中に可愛らしいボトルの中に入った液状の何かを入れて混ぜる。 何をしているのだろうとゼオンシルトがその様子を見守っていると無色透明だった湯船に真っ白な泡が立つ。 「誰かさんは恥ずかしがり屋のようですから」 「・・・・・・・・・」 確かに泡風呂なら肌の露出があまり見えなくなる。意地悪な人だけれど、基本的には気配り上手 なんだなとゼオンシルトはぼんやり考え、改めてルーファスを観察してみる。 いつの間にか髪留めを外し、髪を下ろした彼は首から下さえ見なければ本当の女性のように綺麗で。 一つ一つの仕種が優雅で流麗だ。そう思うとゼオンシルトは変に緊張してきた。 「どうしました?」 既に湯船に使ってしまっている彼はバスタブの縁に座っているゼオンシルトに問う。 泡の中で身体を洗う仕種は妙に様になっていた。かと思えば手を伸ばし。 「怖くないですよ?」 誘いをかける。妙な安堵を与える声にゼオンシルトはホッと息を吐き、差し出された手のひらに移る。 最初に持ち上げられた時のように優しく、ゆっくりとゼオンシルトは導かれ泡の中に身を沈めた。 足が付かぬ怖さがあったが、それも分かっていたかのようにルーファスがずっと掴まれるように手を貸して くれていたのでゼオンシルトは有難くそれを支えにする。 「溺れてしまわないで下さいね、親指姫」 「・・・・溺れません!」 「そうですか。それは残念」 その口調は残念などとはちっとも思っていないように響く。 「なら、私に溺れて下さっても構いませんが」 「はあ!?」 「なんですその反応は。傷ついちゃいますよ」 「た、大尉が変な事言うからです!」 「私なりのお友達になりましょうという挨拶のつもりだったのですが」 どんな挨拶だと突っ込みたくて仕方なかったが、ゼオンシルトは彼のペースに飲まれてはならないと 我慢した。我慢したけれど、お友達に・・・という科白には心が動く。 「・・・・・お友達、ですか?」 「ええ、嫌ですか?お風呂に一緒に入ればお友達認定を貰ったも同然でしょう?」 「それは・・・どうかは分かりませんけど・・・いいんですか、俺維持軍ですよ?」 「私は貴方個人が嫌いなわけではありません。ダメですか?」 ことり。傾がれた首と新緑の髪の揺れ。ゼオンシルトは照れくさそうに口元を綻ばせ。 「俺も大尉の事、嫌いじゃないです」 小さな口が告げた言葉は拙かったが、ルーファスにはそれで充分だった。 「可愛いお友達が出来て嬉しいですよ」 嘘偽りのないそれにゼオンシルトの微笑みが返り。その愛らしい様にルーファスは目を細める。 しかし、ただの友達というのはつまらないなと思ったのは内緒で。 「では、そろそろ上がりましょうか」 シャワーで泡を落としたルーファスは、ゼオンシルトを持ち上げ、浴室から出る。 バスローブをさっと纏い、ゼオンシルトが服を着込むのを待つ。 「・・・・・あの大尉、見られてると着替えにくいんですが・・・」 「え、何ですか?」 「・・・・・なんでもないです」 諦めたような呟きを残し、着替えたゼオンシルトはその後も変わらぬ調子のルーファスに翻弄され続け、 どうか潰されませんようにと願わずには居られぬスリリングな就寝を味わう事となった。 ちなみにコリンは巻き込まれぬうちにさっさとソファで眠っていたらしい。本当に何処までも狡い。 寝返りを打つルーファスにびくびくと怯えながらゼオンシルトは必死に目を閉じ――― 生きた心地がしなかった。 と、翌朝維持軍に連絡を入れてもらって迎えに来てもらったゼオンシルトは仲間たちにぼやいていたという。 そんな不幸体質を持って生まれてしまった青年の不運でちょっぴり楽しかった、とある一日。 蛇足 「なあ、ルーファス」 「何ですかギャリック?」 維持軍にちびゼオンシルトを預けた後、同僚のギャリックに声を掛けられルーファスは振り返った。 そんな彼を不審そうな目で見つめ、話しかけてきた同僚は眉間にしわ寄せ。 「お前・・・何かに悩んでいるのか?」 「はあ?」 何やら突飛な事を尋ねられ、ルーファスの口から間抜けな言葉が飛び出す。 それに言い辛そうにしつつギャリックは。 「・・・・あのな、昨日お前の部屋の前通った時、独り言が聞こえてきたんだよ」 「!!」 「しかも街中でもお前独り言、言ってたって聞いたぜ?悩みあるなら聞いてやるぞ?」 「!!!」 それは独り言ではなく、ゼオンシルトと話していたのだ。 そう言いたくてもそんな事を言えば維持軍嫌いのギャリックから相当責められるだろう。 叱る方は好きでもその逆は頂けないルーファスは口を閉ざし。妙な目で見てくれたギャリックのために後で 彼の弱みを握ってやろうと虎視眈々と目を光らせていたと言う。 fin うう、結局長くなってしまいました。 色々不消化な気もしますがあんまり長くなってもあれなので 妙なところで終わってみましたとも! ルーファスがもう何とも言えないキャラになってしまいましたが そこは皆様の愛のフィルターでカバーして下さい(殴) 後日挿絵を一枚ほど描いてみます(いつだ) |
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