「俺は・・・・・お前が、好きだ」

何の飾りもない、実にまっすぐな言葉がその場に響いた瞬間。
言われた当人であるゼオンシルトは自分が何を言われたのか分からない。
そんな表情で大きな瞳を何度も瞬いていた。




安堵の時




唐突の告白に、どう応えたものか分からぬ青年は暫し思考に耽った。
その間、自分に覆い被さっている男の表情はいつになく真摯で。健康的な肌色の頬を透明の雫が一粒伝い落ちてくる。
顎のラインを辿り、下にいるゼオンシルトの首筋辺りに落ちた。冷たい感触。そこでゼオンシルトは初めて自分が今
服を纏っていないという事実に気づいた。慌てて身体を隠そうとしたが、上に跨っているギャリックとの距離は限りなく近く、
今更隠そうとしても無駄だろう。かと云って一度気づいてしまえば気になって仕方ない。顔を赤くして恥じ入っていると
真上の影が首を傾いだ。

「・・・・・大尉?」
「おい、返事は?」
「へ?」
「・・・・・言わすだけ言わして無視かコノヤロウ」

大きな溜息が上から降ってきてゼオンシルトの肌を擽る。それからギャリックは眉間に深く皺寄せて逡巡した後、再び
がっしりとゼオンシルトの両頬を鷲掴み、しっかり固定してもう一度丁寧に言う。

「だから・・・・俺はお前が好きだ。返事は?」
「へ・・・んじ?」
「そうだよ、好きでも嫌いでもYESでもNOでもいいから何か言え」

どうやら考える時間を与えるという選択肢はないらしい。それ故、ゼオンシルトは何も考えず、ただ自然と唇が動くままに任せ
応えを返していた。偽る暇も飾る余裕もない、本当に素直な言葉で。

「えと・・・・好きです、よ・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あの、大尉・・・?」
「今、好きっつったよな。聴き間違いじゃねえよな」

妙に鬼気迫る調子の問いにゼオンシルトはこくこくと何度も頷く。内心で自分は何か拙い事を言ってしまったのだろうかなんて
心配もしてみるが、急にぎゅうと強く抱き締められてそれどころじゃなかった。髪の隙間にゴツゴツとした戦士の指先が潜り込んで
強く強く引き寄せてくる。鼻先に銀の髪が触れ、擽ったい。くんとヒクつかせると鼻腔が男らしい、けれど清涼な香りを拾う。
自分とは違う匂いが強く香って、抱き締められているという感覚がひどくリアルなものに感じられてくる。

「あ、あのあの・・・た、大尉、もう・・・離して下さい〜っ」
「・・・・・あん?」
「あ、あの俺っ濡れてるしそれにその・・・服着てないんです〜!!」
「ああ・・・そういやそうだった・・・・・・って、おぅあっ?!」

言われて漸く今の自分たちの状況を察したギャリックが奇声を上げて、さっと身を引く。乾いていたはずの自分の制服が
そういえばじんわりと湿っている。そして身体を離した事で堂々と見える、下に押し倒された裸体。
それまで何とか照れを押し隠していたギャリックだったが限界で一気に顔といわず耳やら首まで真っ赤になって余所を向く。
初心としか言いようのない反応。そんな態度を取られ、却って恥ずかしくなってきたゼオンシルトもギャリックと同じように
赤い顔を妙な方向へと向けている。が。

「お、おいお前・・・さっさと服着ろよ」

相変わらず何処を見ているのか分からぬギャリックからの指摘にゼオンシルトは勢いよく身体を起こし、服を探すものの
見つからない。さっきまで着ていたそれはギャリックによって洗われてしまったのだから。その事を思い出したゼオンシルトは
非常に困った。そう、彼は育った村を壊滅され、急遽平和維持軍へと入った身。当然服やらなにやらの生活必需品は
初めから着ていたものしか持っていなかったのだ。つまり、今現在着る服がないという事になる。

「た、大変です大尉!!」
「何だ、どうした?!」
「服がありません・・・・!!」
「はあっ?!」

ぐりん。裸のゼオンシルトを避けるように遠くを見つめていた紅い瞳が、それまで避けていたものの方へと向く。
とそこにあるのは当たり前だが、何も着けていない透明感ある素肌。おまけに水滴を纏っているのが妙に艶かしい。
直視してしまい、固まりつつもギャリックは聞き返す。

「ふ、服がないってどういう事だよ?!」
「だから、先ほど大尉に洗われてしまったのしか持ってないんです、一張羅なんです!」
「な、何ーーー!!馬鹿野郎っ!そういう事は先に言っとけ!どうすんだ服なくて!取りあえずこれでも着とけ!!」

せめてもの思いでギャリックは自分のマントを脱ぐとゼオンシルトの頭目掛けて投げつける。反射神経の鈍いゼオンシルトは
キャッチする事も出来ず、顔面で受け止める。そしていいのかなと気にしつつ、いつまでも裸でいるよりはと有難く着させてもらったが
それを見て投げつけたギャリックは後悔した。何と言うか、グランゲイルの将校のマントは変形型で、妙な切れ込みが入っている。
素肌の上に直接纏うとはっきり言って何も着てないより厭らしく映ってしまうわけで。

「だ・・駄目だーーー!やっぱそれ返せぇぇぇ!!」
「ええーーー!!?」
「なんっか必要以上にエロい!どっかから苦情来ちまう!!つーわけで脱ぎやがれ!」
「そ、そんなぁぁぁ!!」

グイと引っ張られるマントをゼオンシルトは懸命に引っ張り返す。確かにいい格好とは言えないが裸よりはマシなはずなのだ、多分。
しかしギャリックはギャリックで自分の精神衛生を守る権利くらいはあるはずと負けじと引っ張り続ける。だが、どんなに怪力で以って
引っ張ってもゼオンシルトは中々諦めない。段々、この争いが非常に不毛なものに感じられ、ギャリックは手を離すと勝った!と
喜びのあまり油断しているゼオンシルトの四肢をマント共々抱き込み。

「た、大尉?!」
「んなもん着るよか、こうしてくっついてた方がよっぽど見えねえよ」
「そ、それはそうでしょうが・・・・恥ずかしいですっ!」
「言うな!俺だって恥ずかしいんだよ!!」

ほら、と胸に押し付けられるとバクバクと異常に速い心音がゼオンシルトの耳に届く。言葉通り本当にギャリックは恥ずかしい
思いをしているのだろう。本来落ち着くはずの人肌も心音もよりいっそう自分を追い詰めるだけで動揺を抑えてくれない。
非常に居心地の悪い状況だったが、こうして抱き締められた経験が殆どないゼオンシルトは少しこの状況が嬉しくもあった。
他人の温もりというのはどうしてかそこにあるだけで温かい気がしてしまう。好きな人なら尚更。しかもその好きな人に自分は
告白されたのだ。信じがたい事に。

「・・・・・絶対嫌われてると思ったのに・・・・」
「は?」

独り言のつもりが、あまりにも近い距離感故に聞こえてしまったらしいギャリックが首を傾ぐ。
それにゼオンシルトは苦笑して。

「俺、ずっと大尉には嫌われてると思ってたんです」
「・・・・・・そ、そうか」
「だから今もちょっと疑ってます、これは自分に都合のいい夢なんじゃないかって・・・・」
「夢じゃねえよ、馬鹿」

するりと背に回されていた指先が蜜色髪へと移動され、顔を上向かされる。そこには非常に真摯な眼差しがあって。
その中に自分自身がマヌケな表情で映り込んでいるのを見咎めてゼオンシルトは頬を染める。そしてその間に、ギャリックの瞳に
映るゼオンシルト自身が段々と大きくなっていく。それはギャリックが近づいてきている事を意味していて。

「・・・・・え?」

呟きは、優しく飲み込まれた。ゼオンシルト自身は覚えがないが三度目のキス。一度目の長いのとは違い、二度目の優しいのとも
違う、甘く深い接触は胸が高鳴る一方で失っていた落ち着きをも取り戻してくれて。唇が離れても、残る余韻に溺れそうになる。
ただ口と口を重ねているだけ。それだけの行為なのに、何処か心の奥深く、繋がったような気になる。それはずっと独りきりだった
ゼオンシルトにとって何にも代えがたいとても大切な感覚。知らず口元に笑みが刻まれた。

「・・・・・ほら、夢じゃねえだろ?」
「・・・そうですね」
「・・・・・そのままじゃ、また具合悪くなるかもな」
「・・・そうですね」
「ちゃんと話聞いてんのか、お前・・・・」

同じ言葉しか返してこない、上の空のゼオンシルトを心配してギャリックはふわりとした量の多い前髪を割って、白い額へと
触れる。今朝のように熱はない。薬が効いているのだろう。ほっと一息吐き、ああそういえばと思い出す。

「そういやお前、自分がスクリーパー化してたのは覚えているか?」
「・・・・え?」
「今朝のじゃなくてさっきな。あんまり言いたくねえが俺に襲い掛かってきたんだが・・・・」
「俺が・・・・大尉に、ですか・・・・?」

やはり記憶にないのか大きな紅眼はしきりに瞬き、信じられないとでも言いたげに、一心に正面の男の顔を見ている。
そこでゼオンシルトはあるものを目にして、顔を歪めた。マントを脱いで剥き出しになったギャリックの首筋に走る爪痕と、青紫色に
変色した首周りを一周する痕。少し考えればそれが何かなんてすぐに判る。首を、絞められたのだ。
他でもないゼオンシルトの手によって。気づいて、青年はこれ以上なく青褪めた。まさか、よりにもよって一番好きな人の事を
殺そうとしたなんて、と。驚愕に見開かれていた瞳はやがてじわりと滲み、大粒の涙を幾重にも零し始めた。

「!ぜ、ゼオンシルト?!お前、何泣いて・・・」
「ごめんなさい、ごめ・・・なさ・・・俺・・・ひっぅ・・・・大尉の事・・・ぅぅ・・・殺そ・・・とし・・・っく」
「あー・・・まあ気にすんな。お前の意思じゃねえだろう。そりゃちったぁ苦しかったが、今生きてるんだ。問題ねえよ」
「うぇ・・・っく・・・でも・・・・・」

何とか宥めようと必死なギャリックを尻目に、ゼオンシルトの目には次々と涙が溜まり、溢れる。
泣き顔を見るのがひどく苦手なギャリックはどうしたものかと頭を悩ますが、元々考えるより先に直感的に行動するタイプ故に
手を伸ばし、頭を引き寄せると自分の額とゼオンシルトの額を合わせる。

「!」
「いいから、落ち着けって。大丈夫だからよ・・・泣くんじゃねえ、男だろ。それに、俺もお前の事蹴っちまったからな、お相子だ」
「蹴っ・・・・・?あ、そういえばちょっと痛いような・・・・」

ぐすんと鼻を鳴らし、ゼオンシルトは脇腹辺りをゆるゆると擦る。靴を履いた状態で蹴られたので痣が出来ていた。

「げ、痣出来てんじゃねえか。痛ぇだろ、悪かったな・・・・」
「いえ・・・大尉の方がよっぽど苦し・・・ひゃあ」
「あ?何だよ、擦ってるだけだろ、変な声出すんじゃねえ」
「そ、そんな事言ったって・・・・ぅん・・・」

痣の上を手袋越しの指先が行き来していく。素肌に触れる布の感触がどうにもくすぐったい。というか、布が触れる事によって
自身が裸なのだという認識が強くなる。ゼオンシルトは込み上げてくる何かを懸命に堪えた。

「どうした?痛いのか?」
「そ・・・そ・・・じゃ・・・・」
「違うのか?それとも他の傷が痛むか?応急処置くらいならしてやるぞ」

言うが早いか、ところどころにある擦り傷や打撲に生暖かな熱が這わされる。ぞくりと身を震わせ、ゼオンシルトは
その熱の正体を目で追って絶句した。

「た、大尉?!」
「何だ?」
「な、何だって・・・何で舐めてるんですかぁ!!」
「あ?この程度なら舐めときゃ治んだろ」
「そういう問題じゃありません〜〜〜!!」

確かに殆どの傷が舐めれば治りそうなものだが、だからと言って他人にいきなり舐められれば誰だって驚く。
しかも相手は意中の人。どんなに気をつけても身体の方が反応してしまうのは無理からぬ事。
傷の上をざらりとした舌が掠める度、びくびくと細い肢体は跳ね。

「ああ・・・・そういう事か」

微かに反応を示す痩身を見て取り、ギャリックは今まで抱いていた疑問の答えを得る。先ほどから様子がどうもおかしいと思えば
ゼオンシルトはギャリックに触れられて雄の感覚が目覚めてしまったようで。頬に限らず全身に熱を持ち始めていた。

「・・・・お前、鈍感なくせに敏感肌なんだな」
「な、何がですか?!」
「まあ、すっ恍けるつもりならそれはそれでいいんだけどな・・・・だが」
「?」

ふぅ、と頭上に疑問符を浮かべる幼顔の耳元に吐息を吹きかけ、ギャリックはゼオンシルトの身体をゆっくりと床に押し倒していく。
蜜色の髪がフローリングの床に満遍なく広がり、床に寝転がったゼオンシルトの全身に黒い影が被さる。上から一心に見下ろしてくる
真摯な視線が肌を刺す。

「大尉・・・・」
「こんな時くらい、名前で呼ぶくらいの気は遣えねえのか?」
「・・・・え?」

ゼオンシルトの顔の横に手を着いて、ギャリックの顔が近づいてくる。いつも以上に何処か険しい表情。銀の髪が近づいた青年の
鼻先を掠めさらりと首の動きに沿って流れていく。キラキラ輝く綺麗な髪はまるで夜空を過ぎる流星のようで。自然と触れたいという
願望を呼び起こされる。その欲求に従ってゼオンシルトは自分と正対の色をした髪に手を伸ばした。人差し指と中指に軽く絡める。
そんなわけはないのだけれど星を一つ捕まえたような気になって、意図するでもなく緩む口元。それが目の前の男に
どう映ったかなど鈍感なゼオンシルトに分かるはずもなく。上からは視線だけでなく、溜息も落ちてくる始末。

「あ、あの・・・・?」
「いいから・・・。ギャリックって呼んでみろ。それから敬語もいらねえ」
「何故ですか?」
「何故?そんな問いに何の意味がある。俺が望むからそうするよう言っている」

他に理由なんていらねえだろ、とまっすぐ寄越された言葉にゼオンシルトは目を瞠った。確かに、そうかもしれない。
願う事は望む事。それ以下でも以上でもなく、ただただ望んでいるのだ。理由なんてものは必要ない。どうしても要るなら後から
幾らでも後付すればいい。そんな簡単な事すら分からなくなっていたのは、ゼオンシルトが今まで望む事をしなかったからだ。
それは今までの生き方にもよるし、自分に無理やり施された手術の内容を知ってしまった事にも起因しているかもしれない。

自分は人ではないと、そう思ってしまった瞬間。微かにあった望みすら砕けてしまったのだ。自分にはもう、何も望む事など
出来ないと。それはとても罪深い事なのだと。いっそ、死んでしまえればいいのかもしれない。そんな風にすら考えていた。
でも、自分が人ではないと思い始めた時、お前は人間だと言ってくれた人がいた。絶対に死ぬなと言ってくれた。温もりをくれた。
生きる理由をくれた。そして、いつの間にか望んでいた。

この人に手を差し伸べて欲しい。
手を繋ぎ、隣で笑っていたい。
ずっと傍にいて欲しい。

今まで望まなかった事が嘘のように貪欲に。次から次へと浮かんでくる望み。
こんなに一遍に望んだら、神様も呆れるかもしれない。
嫌われて、しまうかもしれない。それでも望む事を諦めきれないで手の中の星を必死で掴む。

「おい、んな引っ張るなよ、いてーっつの」
「あ、ご・・・ごめんなさい、大尉・・・・」
「馬鹿。それを言うなら・・・”ごめん、ギャリック”・・・・だろ?お前のわるーい頭でもいい加減覚えろボケ」
「ひ、ひどい・・・・ギャリック」
「・・・・・ま、一応合格点はくれてやるか」

名前を呼ばれて気をよくしたのか、ギャリックの鋭い紅眼が細められる。笑った顔は実年齢よりも大分幼い、少年の顔。
胸の奥が暖かくなる。

「・・・・ギャリック」
「ん?」
「あ・・・呼んでみたかった・・・だけ」
「何だそれ。呼びたきゃ幾らでも呼べ」

さらり、と頭を撫でられ、ゼオンシルトの瞳も和らぐ。優しいものを与えられて、嫌だと思う人間はいない。
優しさに半ば餓えていたゼオンシルトならば尚更。髪をわしゃわしゃと強く掻き乱されても、嬉しそうにしているその様は
可愛い。愛しむように寝転がったこめかみに優しく唇が落とされる。

「・・・・・それで、だな。話が逸れたんだが・・・・」
「・・・・・・・ん?」
「お前が鈍いのは百も承知しているんだが・・・・俺も男なんでな。
こんな状態で何もしないでいられるほど・・・・人間出来てねえんだよ」
「え?」

緩く下に横たわる肢体をなぞる指先。

「・・・・あっ」
「分からねえか?」
「・・・・・・・分かる・・・けど・・・・でも・・・・」
「嫌なのか?」

何とは言わないけれど、ギャリックの言いたい事は流石に分かるゼオンシルトはひどく戸惑った。自分たちは同性で、しかも
互いの気持ちを知ったのだって今さっきで、自分たちのしようとしている事は自然の摂理に逆らった、間違った事のはずで。
それでも見下ろしてくる瞳がとても真摯で、触れる指先は優しくて。そして自分はこの男性の事がとてもとても好きで。
頬に口付けられても避ける事すら出来ず、ゼオンシルトは知らず知らずのうちに受け入れてしまっていた。

「・・・・・ギャリック」
「嫌なら、いいんだぜ・・・無理しなくても。泣かせるのは本意じゃねえし・・・」
「・・・・・一つだけ、条件が・・・ある」
「・・・・・何?」

弱々しい声を拾い、ギャリックは不可解そうに首を傾ぐ。

「何だよ、条件って。つーか、いいのか?」
「約束、してくれるなら・・・・・」

いいよ、と告げてゼオンシルトは言いづらそうにしながらも、ゆっくりと言葉を選び、口を動かす。
小刻みに震えた指先が、ギャリックのそれの上に重ねられ、目線を合わせ。

「ずっと・・・・傍に居てもいいと約束して欲しい。
所属してる軍も違うし男同士だし、いつも一緒にいられるわけもないのは分かるけど、でも・・・・ッ!」

我侭な事を言っている。その自覚があるだけに震えた言葉を、それ以上言わせまいとギャリックはムニッとゼオンシルトの頬を
抓った。ぐにぐにと引っ張ると紅い瞳が徐々に潤んでくる。

「い、いひゃい〜」
「アホな事言おうとするからだ。傍に居てもいいか約束しろなんて寝惚けてんじゃねえ。当たり前だろうが。
お前が嫌だっつっても離してなんかやんねーからな、ばぁか」
「・・・・・・・・・・・!」
「こっちはこれでも命懸けて惚れてんだ」

言い差し、首の痣を指差す。途端にゼオンシルトは泣きたくなった。ああ、本当に命を懸けてくれた。
自分の意思ではないにしろ、殺そうとした自分をそれでも彼は止めてくれた、好きだと言ってくれた、望んでくれた。
それだけで、それだけで。

「ありがとう・・・大好き」

何もかもを許すかのように、ゼオンシルトは握り締めた硬い指先にそっとキスを落として、今まで見せたどの笑みよりも
安堵の色の濃い、深く甘い微笑を嬉し涙と共に零した。




人は誰かの支えなしに生きていけない。

でも、俺は今生きている。

貴方が優しく手を差し伸べてくれたから。

泣きたいほどに今、安堵している。


―――有難う、大好きな人。


貴方の傍で俺はずっと笑っていたいと思うよ。

ずっと、ずっと・・・・。



fin



告白編一応完と言う事で。とはいえ初夜が裏に続きますが(殴)
短めにしたつもりですがSSではこのくらいの長さの方が普通なんですかね。
ギャリックは好きな子の事は命がけで守ってくれるイメージがあります。そして紳士(笑)
彼はきっと大人しいけど心根優しい子が好きなんだろうなとか思いながら書きましたが、
GL6のゼオンと大分掛け離れてるな・・・いいのかうちのゼオン(悩)

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