月華




リビングルームで自分宛の一通の手紙を見て苦笑したのはご存じこの屋敷の主にして、光の救世主・グローランサーと
呼ばれる青年、カインファロウだった。ソファに座り手に持った手紙を器用に半目にしながら見つめる。

「まったく…」

そう呟いたのを紅茶のお代わりを持って来たこの屋敷の執事・ロディスの耳に入った。そっと主の前にティーカップを置き
柔らかい笑みを浮かべる。

「ご主人様、どうかされましたか?」
「あ、ロディス。ねぇちょっと聴いてよぉ」

なにやら少々不満げにしている様子にその原因が今手にしている手紙にあるのだろうとロディスは推理した。それでも
若干嬉しそうな主の雰囲気を察知して。

「そのお手紙…でしょうか?」
「うん、そう。これ今日届いたんだけど…」
「どなたからのお手紙なのでしょう」

ロディスにはなんとなく差出人が判ったのだがあえて言うことではない。それは野暮というもので…。

「この手紙さぁ…アーネストからなんだけど。手紙の内容がさ…」

ひらひらと手紙をちらつかせている。

「ライエル様からでしたか。書かれている内容になにか重大なことでも…?」
「うぅん違うんだ、実は……。まぁ見て貰ったほうが早いかなぁ」

はい♪とアーネストからの手紙を渡す。それを手に取るべきかどうか一瞬悩んだロディス。それは個人的な手紙を読んで
良いものか迷ったからだった。躊躇していると「大したことは書かれていないから」と再び差し出される手紙。

「…では、失礼とは思いますが拝見させて頂きますね」

丁寧に断わりを入れ、手紙を受け取り中身を開く。一枚の真っ白な便箋にはこう書かれていた。


【 ×日より三日間の休暇に入る予定    アーネスト・ライエル 】


「……え? あの…内容はこれだけ、ですか??」
「そう、これだけ♪」
「…………(汗)」

もはや言葉を失う他ないだろうこの場合。

「いくら用件だけを書いたって言ってもこれはちょっと酷くない?」
「ふふ、確かにそうですね。ですがライエル様らしいと、わたくしは思いますよ」
「…まぁね」

しかし恋人同士の手紙ならもう少し書くことがあるのではないだろうか、とカインファロウは思ってしまう。

(別にさぁ手紙で愛を囁いてくれ…なんて言わないけどネ。ただな〜んか納得がいかないと言うかなんというか…)

ほんの少しだけ口を尖らせ不貞腐れてみる。ロディスはそんな主の様子を見てひとりクスと笑みを零した。

(素直じゃないところはご主人様も同じですがね…)

そしてアーネストが休暇に入る前日にカインファロウは彼の別荘があるコムスプリングスへと旅立つのだった…。


「かなり遅くなったな」

ひとりの青年が既に深夜近くになろうとしている夜のコムスプリングスの街並みを急ぎ足で歩いて行く。夜空には大きな満月と
たくさんの星々。気温は零度に近く、青年・アーネストの吐く息は真っ白だった。
季節は冬真っ盛りで暖かい春はまだ当分来ない。キンと張り詰めた空気が肌を射し顔がつい強張ってしまう。その為、
少々しかめっ面になってしまうのは仕方のないこと。

「全くオスカーのヤツめ、俺ばかりに仕事を任せるとは…」

ブツブツと独り言を、もとい愚痴を零しながら家路へと急ぐ。ようやく手に入れた明日からの三日間の休暇。
本来なら今日の仕事は楽に終わらせ夕刻になれば直ぐにでも帰宅出来る筈だったのだ。しかし同じインペリアルナイトである
友・オスカーに無理やり書類整備の仕事を頼まれ、もとい押し付けられてしまい…その作業が終わったのが夜九時過ぎ。
そして別荘のあるここ、コムスプリングスに着いたのがついさっき。馬を飛ばして二時間弱、時刻は既に日付を跨ごうとする深夜。

(勘弁してくれ…。休暇が取れないからって俺に仕事を押し付けるか普通! それともこれは新手の嫌がらせなのか??)

そんなことを表情には一切表さずに黙々と早歩きをする。街のほぼ奥に位置する場所にアーネストの別荘があった。
落ち着いた感じの家が一軒。休暇は必ずここで過ごすことにしているのだ。それは遠く離れている恋人と一緒の休暇を
過ごす為でもあり。そんな愛しい彼に手紙を送ったのは五日ほど前。もしかしたら任務で忙しくてその手紙すら見てくれて
いないかもしれないが、少しの期待とただ逢いたいという気持ちを込めて筆を取ったのだ。

(来る訳ない、な)

アーネストの恋人である彼・カインファロウは西に位置するローランディア王国の特使。しかも世界を救ったとされ
‘グローランサー’とまで呼ばれる彼はとても多忙な日々を送っている。忙しなく世界各地を回り、自分の屋敷がある
ファンダリアの街にいることなど滅多にないことも別段珍しくもなんともない。そんな彼が自分の休暇に合わせて
逢いに来てくれる、などとある筈もない。

「…ふっ」

玄関先で鍵を取り出そうとしながら自嘲的な笑みを浮かべてしまう。

(淋しい、とでも言うのか…この俺が?)

ふと自問自答してみるが答えは出ない。

(馬鹿なッ……そんな筈、は)

ない、とはどうしても口に出来なかった。はぁと小さくため息がひとつ。一、二分ほど玄関先で佇んでいたらしく、ようやく
思い付いたように鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間。

「!!」

ハッとし、その手が止まった。

「開いている、だと?」

即座に頭に思い浮かんだのは空き巣のコト。いつもはきちんと鍵を閉めており、以前この別荘をあとにする時も鍵は掛けた。
それが開いていると言うことは何者かが侵入したというコトで。

「ちぃッ!」

軽く舌打ちして、いつ空き巣に入られたかも判らないが一応気配を消して扉をゆっくりと開け、なかへ入ることにした。
荒らされているだろうと考えていたが部屋のなかはそう言った処は全くない。しかも何故か部屋の灯りが付いていた。

(??)

眉間に深い皺を寄せその場に立ち尽くした。

(空き巣、じゃないのか?)

【この時点で気付けよな、オイ♪/作者】

ただ呆然とし、部屋のなかを見回すが荒らされた様子は一切なく、どう見ても空き巣が入ったようには思えなかった。

「これはいったい…?」

そう呟いた時。


 パシャリ


微かな水の音。音源のほうへと視線を巡らす。

「…風呂、か?」

とにかく訳が判らなく、とりあえず風呂場へと歩いて行く。実は最近ここをリフォームして風呂場から外へ出られるようにし、
そこへ露天風呂を作ったばかりであった。星を眺めながら風呂に入る、というちょっとロマンチックなつもりであったのだが。
脱衣所の扉を開き風呂場への扉を勢い良く開けた。しかしそこに人影はなく、視線は自然と外へと繋がる露天風呂のほうに向かう。

「ま、まさか…」

空き巣が風呂に?!などと、トンでもないコトを思い浮かべてしまう。風呂場をゆっくりと通り抜けて扉の前で一呼吸し、
ゆっくりと押し開いた。
目の前に広がるのは‘和’をイメージして作られた露天風呂。自然石と緑をふんだんに使用して作られた癒しの場。
そこに降り立ったひとりの天使に目を奪われた。この瞬間、空き巣のことなどすっかり頭から消えていて…。
背をこちらに向けて湯の中に立ち尽くし上を見上げているひとりの青年。おそらく満天の星々と綺麗な満月を見ているのだろう。
黄金律とも言える見事なその身体を惜しげもなく晒していた。
漆黒の髪が濡れて首筋に張り付いており、鎖骨から背骨そして尾骨からお尻へのライン。最後はスラリと伸びた美脚、
それら全てのパーツが男性とは思えない程の美しさを醸し出している。
身体のそこかしこに付いている水滴に月の光が反射し煌いていた。

「…………」

(あぁ…彼は月の光を受けて咲く、一輪の華のようだ)

声も出ずに驚愕し、ただ見惚れるアーネストに対しゆっくりと振り返り天使の微笑みを浮かべる。

「…お帰り、アーネスト。こんな遅くまでお疲れ様v」

逢いたいと願っていた愛しい恋人の優しい声。脳がそれを理解する前にアーネストは無言で歩き出し、服を着ているのも
気にせずに湯のなかへと入り彼を全身で抱きしめた。
湯を吸い込み服が重くなったがそんなことは全く気にもならない。ただ…今はこうしていたいと言う感情だけが心のなかを
駆け巡っている。密着するように抱きしめて来る彼にカインファロウもそっと優しく抱き返した。

「服、濡れちゃったね」
「……気にしない」
「そのままじゃ風邪…引くよ?」
「……構わない」
「もう…」

少しだけ苦笑しながらも離れようとはしないし思わない。それは同じ想いを抱いていたから…逢いたかったという気持ち。
月の光が優しく注ぐなか、ふたりはしばらく抱きしめ合っていた…。

ふたりが離れたのは全裸でいるカインファロウの身体が冷えて来た頃だった。アーネストも着ていた服を全て脱ぎ露天風呂の
なかへと一緒に腰を下ろす。

「まさか来ていたとは思わなかった」

アーネストはそう正直に白状した。実際、手紙は出したがおそらく来ないだろうと踏んでいたのだから。

「まぁね…俺も休暇じゃなかったらたぶん来られなかったよ。
でも丁度大きな任務が終わったあとでさ、一週間ほど休暇が取れたんだ」
「…そうか」

向かい合わせに座るふたり。

「じゃあ、あの手紙は…?」
「うん、読んだよ♪ でもさ〜いくらアーネストが筆不精だからと言っても、もうちょっと何か書いて欲しかったなぁ」
「うッ」

少しだけ拗ねたカインファロウの声にアーネストは言葉を詰まらせた。遠回しに、簡潔過ぎるのも限度ってモノがあると言って
来た恋人になにも言える筈もなく。

「………すまない」

下を向き、小さな声で謝罪を口にする。
そんなアーネストにカインファロウはクスと笑みを浮かべ、湯のなかで彼の右手を取り包み込むように左手で優しく握った。

「大丈夫、そんなに気にしてないよ俺は。手紙をくれただけで凄く嬉しかったし、それに………」

「…それに?」

再び視線を絡ませて‘金と淡い蒼’を覗き見る。世間ではとても珍しいとされる左右色違いの瞳。この瞳を見る度アーネストは
いつも思うのだ…綺麗だな、と。以前そう耳元で囁いたら真っ赤になったのを覚えている。

(何度でも言ってやるさ)

その瞳に映るのは自分だけ、と独占出来たらいいのに。そんなことを俺が思っているなどとお前は少しも思わないだろうが、な。

「…例えアーネストから手紙が来なくても俺は来ちゃったと思うよ。だって、凄く……逢いたかったんだもん」

うっすらと頬を赤く染めて今度はカインファロウのほうが下を向く番だった。それが目の前のアーネストにどう映ったか、
なんて考えもしないのだろう。湯煙のなかに浮かび上がる艶めかしい上半身の真っ白な裸体。離れていた時間が長いうえの
コレは視覚的にヤバイ。つい下半身に熱が集まるのを感じるアーネストで。
そう思った瞬間、彼の唇を塞いでいた。

「んッ」

いきなりのコトに少しだけ驚いて目を見開くがその後、ゆっくりと目を閉じた。内心はとても嬉しいのだ。
初めは唇を舌で軽く舐めるようになぞりその柔らかな感触を確かめる。少し開いた口に舌を挿し入れて縮こまっていた
カインファロウの舌を誘い出した。

「ふ、ぅん…」

アーネストは握られていた右手を放して彼の頬を両手で包み込み今度は激しく貪る。

「…む…ぅう…ん、んぅ」

神秘的な瞳は頑なに閉じられた目蓋で見ることは出来ない。与えられる激しいキスに長い睫毛が震えていた。

「ん…んッ…」

カインファロウ自らも舌を差し出して、たどたどしく応えていく。

「……はぁ…」

アーネストは長い口付けを終わらせて彼の様子は…と見れば、頬を上気させて潤んだ‘金と淡い蒼’が揺れている。
真っ赤に濡れた小さな唇も艶めかしく、ついそんな愛しい恋人の姿に見惚れていた。

(俺はいつの間にかこの瞳に魅了されていたのかもな…)

そんなことを心のなかで思いながらアーネストはほんの僅か苦笑する。

「アー…ネスト?」

じっと自分を見つめたまま固まっている彼を不思議に思い、名を呼んだ。潤んだ瞳と少しばかり掠れた甘い声にゾクリと
来るモノがあるのは確か。

「…カインファロウ」

緋色の瞳を優しく細めながら彼の首筋をそっと撫でる。

「ぁん…」

くすぐったいのか、少しだけ身体を捩るが逃げではない。感じてしまうから…乱れてしまう自分をアーネストに見られる、
それが恥ずかしいから。だがアーネストにとってはソレが見たいが為に全身へと愛撫を施していく。

「ん……く、ぅ」
「どこもかしこも敏感だな」
「ぃ…や、ぁ…あぅ」
「ここはどうだ?」

話しながらもしっかりと所有の証たる華を付けながら首筋から鎖骨、心臓の真上と移動して。鼓動が異様に速い胸へと舌を
這わせた時、傍にある小さい果実を口に含んだ。

「あぁん!」

一際、甲高い甘い声がカインファロウから放たれる。その甘美な声を聴きながらアーネストは執拗にソコを攻めていく。
ココが弱いと判っているから。

「んんッ…やぁ、あ…ぁ……くぅ、ん」

まるで子犬が鳴くような可愛い声にもっと鳴かせてやりたいと。意外に大きい露天風呂の岩の淵に
カインファロウの身体を押し付けているので彼に逃げ場はなかった。時折チャプンチャプンと水音がして意識が逸れるが
それは一瞬で。身動きしようにもお湯のなかでは上手くいかず。このままではのぼせるのではないか、と思ってしまう
カインファロウだったが今はこの熱をどうにかして欲しいのが最優先だった。

「ひゃぅんッ」

甘噛みされてつい変な声が洩れてしまう。それでもアーネストは攻めることを止めずにいた。左手の親指と人差し指で
もうひとつの果実を弄りながら右手で彼自身をやんわりと掴んだ。

「はあぁん!」

先程よりも甲高い嬌声にふと笑みが零れた。ゆるゆると刺激を与えると己の手のなかで脈打つのが判る。
解放を望んでいるのだ、と。

「一度イっておくか?」
「ん、やッ…ここ、お湯…のな、かッ」

息が乱れた。首を懸命に横に振ってイヤだという意思表示をするがアーネストは構わずゆるりと擦り追い立てる。

「ぁんッ…ダ、メ……出ちゃ、う…よぉ」

お湯のなかで忙しなく動く彼の右手を阻止するように両手を添えるが、アーネストの動きを止めることは出来なかった。

「止、めッ……ぁ…イ、くぅッ」

次の瞬間、カインファロウは半透明のお湯のなかに放っていた。

「…はぁ…はぁ……あ、ぁ」

ぼんやりと心地よい気だるさに酔いながらお湯が透明じゃなくて良かったかも、と心の片隅で嘆いてしまう。

「…カインファロウ」

問い掛けるような恋人の美声を耳にしながら呼吸を整えた。

「もうッ…ダメだって言ったのにぃ」

カインファロウの目尻に少しだけ浮かぶ涙を舌でそっと掬い取ってやる。

「でも…気持ち良かっただろう」

そうのたまった彼に対し、余りの恥ずかしさについ手が出そうになったのは事実で。
だが恥ずかしいというほうがそれを凌駕していて。

「………ばか」

真っ赤になりながら口にしたのはそんな言葉。
クスと小さく笑いながらアーネストは軽くキスをして、座っているカインファロウの身体を一回転させ背後から抱きしめる。
一瞬ビク付くがその後は大人しく全身のチカラを抜き彼にしな垂れた。甘えるように頬をアーネストの首筋へとすり寄せる。
その仕草はまるで猫のようで。

(気高い黒猫、だな)

再び胸の果実に手を伸ばしながら、右手の人差し指と中指を合わせて後ろの蕾にそっと挿し入れる。
なかの襞を撫でるようゆっくりゆっくりと。

「んんッ…」

鼻から抜けるような喘ぎ声。傷を付けないように慎重に奥へと進めていく。それでもやはり強張ってしまうカインファロウの
彼自身に手をやり再び動かしてみる。きつく締められていた蕾の入り口が徐々に開いて来た。ゆっくりと抜き差しを
繰り返しながら、内壁を押さえてみたり刺激を与え指を曲げてみる。

「ああッ!」

その指から逃げようとカインファロウの腰が浮かび掛けるが、少しだけ前を強く握ると身体が湯のなかに沈んだ。

「ア、ネ…スト」

首だけ後ろに振り返りキスをせがむ。息さえも飲み込むような激しいキスをしながらも手を休めることはない。息がだいぶ
上がっているカインファロウを見てそろそろだな、と挿し入れていた指を引き抜いた。

「ぁん」

それすらも素直に反応してしまう身体。既に限界なのは確かで。淵に両手を付くようカインファロウの身体を屈ませてやる。
そうなると腰を後ろへ突き出したような格好になり、羞恥に耳まで真っ赤になった。

「やぁ…」
「このほうがラクだからな」
「…ん」

アーネストは自身を蕾に当てる。それが判ったのでカインファロウはいつも通りにチカラを抜いた。そこへ指なんかよりも
ずっと容量の大きなモノが一気に奥まで貫いた。

「ひあぁッ!」

その衝撃にカインファロウの背が弓なりにしなる。

「くッ」

最初の挿入による射精感をなんとかやり過ごすとしばらくは動かずにいて彼の身体を優しく抱きしめた。

「大丈夫か?」
「……ぅん、平気。だから………動いて」

それを聴いた時、一瞬だけ自分を失いかけるアーネストだった。それは…下半身直撃だったから。

「…あぁ」

辛うじて短い返事だけをし、ゆっくりと腰を動かし始めた。熱くきつく、アーネストのソレを締め付けてくる。しかも内部は異物を
排除しようとしてか、襞がアーネストを引き止めるように、はたまた送り出すように妖しく蠢いていた。

「んッ…う、は…はッ…あぅ」

引っ切りなしに出る嬌声を抑えることは到底出来なかった。既にここが外の露天風呂だということすらカインファロウの頭にはない。

「…あッ…あッ…あッ!」

腰の素早い動きに合わせ喘ぐ。それでもようやく与えられた快感はそれはもう甘美過ぎて…。狭い入り口をアーネストの
大きなソレが出入りする。ふたりの動きにお湯がチャプチャプと音を立てていた。

「く……ふ…ッ……あぁ、あ…ふぁ…ッ!」

両足にチカラが入らなくなり膝が震えて来る。それが判ったのでアーネストはより一層動きを速くした。

「ひッ…んん…も……ッ…だ、めぇ…ッ!!」
「ッ! カイン、ファロウ!!」

最奥へと突き入れるとほぼ同時に放ち、湯のなかへとふたりは重なるように崩れ落ちるのだった―――。


両足をダラリと伸ばしたカインファロウの身体を横にして優しく包み込むように抱きしめるアーネスト。
ふたりの表情はとても幸せそうだった。

「身体…辛くないか?」

久しぶりに身体を合わせ、かなり無茶をしてしまったのではないかと思い問いただす。
だが返って来た答えは杞憂するものではなかった。

「ふふ、アーネストはいつもそうやって聴くよね。そんなに俺ってか弱く見える?」

「いや、そうではないが…」

「でも嬉しいかも…気にしてくれるのは。心配しないで、俺はそんなヤワに出来ている訳じゃないから平気だよ♪」

「…そうか、良かった」

安堵の為か、ついフゥと息を漏らす。

「ねぇアーネスト」
「ん?」
「あのさ。最初逢った時…俺がここに居てアーネスト、物凄く驚いた表情したでしょ。あれって何故?」
「…う」

聴かれたくないことを質問されてカインファロウからの視線を逸らしてしまった。しかしこれで逃げられる訳もなく。

「ねぇどうして?」
「…………(汗)」

逃れる術はないらしい。

「………最初、お前が来ているとは思わなかったんだ。扉の鍵が掛かっていなかったから、もしかして空き巣に入られたと思った」
「えぇッ!!」
「だが部屋のなかは荒らされた様子もなく、部屋の灯りは点いていた。だからちょっと……混乱したんだ」

少しだけ不貞腐れるように言い放つ。自分の失態をこうやって白状することはアーネストにとって苦痛以外なにものでもない。
だがカインファロウはそんな彼を笑うこともなく、馬鹿にするのでもなく。

「………そっか」

ただ、そうひと言呟いた。

「俺も黙って入るのはマズイかなぁって思ってアーネストが帰って来たちょっと前まで…だいたい一時間くらいは外で待っていたんだ」
「なッ! あんな寒い外で待っていたのか?!」

冬の季節、深夜の時間帯の気温は既に氷点下は当たり前でそんななか外で待っていたとは…。つい眉間に深い皺が
出来てしまった。

「だってあんなに遅くなっても帰って来ないなんて思わなかったから…」
「…すまない」
「うぅん、アーネストは全然悪くないよ。ただ身体が冷えちゃったから合鍵でなかに入って、ちょっとお風呂に入ろうとしたら
まさか露天風呂が出来ていたなんて知らなかったんだ」
「そう…だったな」
「ビックリしたよ、俺。でも露天風呂は大好きだからこれでいつでも入りに来られるかなぁ♪」

心から嬉しそうに微笑む恋人。

「ここに来るのは露天風呂に入る為だけ、か?」

この質問にアーネストが拗ねていると即座に気付き、目を細めながらクスと笑った。そんな拗ねた彼を可愛いと思ってしまって。

「俺がここに来る一番の理由はアーネスト…貴方に逢いに、だよ。――――愛してる」

そっと彼の唇に優しいキス。

「!! カインファロウ…」
「これで機嫌…治してくれる?」

はにかむような天使の微笑み。

「あぁ。俺も……愛してる、お前だけを――――」

再び重なり合う唇。そんなふたりを夜空に浮かぶ月の光が優しく照らしていた。










もきゃー!!アー主、アー主!しかも裏ですよお姐さん(誰だ)
いやはや本当は魚主サイト様であられるというのに無茶なリクしてすみません。
それにしても抜けてるアニーさん大好きですわ。そしてカインファロウ君めちゃめちゃ可愛いですねv
アニーさんが啼かせたくなるのも分かるというものですvvv(おい)
こんな素敵なSS頂きまして本当にハッピーですよ魁龍様v有難うございます〜vv


Back