気に入らない。 綺麗な二色の両眼。 それが僕以外のものを見るなんて。 君は僕だけを見ていればいい。 ―――君の瞳に住まうのは僕だけでいい。 瞳の住人 「オ、スカー・・・やめろ」 狭いソファの上、身動きなんてろくに取れやしない。 それが分かっていながらも、組み敷いた細身の身体は抵抗してくる。 先ほど、不意を衝かれて腹を蹴られた経験を生かして自らの足で彼の足を挟みこみ、万全な状態。 剣技の腕ならともかく。純粋な腕力ならば僕の方が勝っている。彼に勝ち目はない。 「往生際が悪いね君も」 鎖骨辺りを懸命に押し返そうとする細い腕に、うっすらと笑みすら浮かぶ。 だってまるで子供にじゃれつかれてるよう。このくらいの抵抗なら、微笑ましい限り。 それ以上にか弱い抵抗は却って、男なら誰でも持ち得る征服欲を煽る。 自分から窮地に陥ってどうするの。そんな事を思いながらも、その僅かな抵抗すら押さえつけようと 白い耳朶を食む。途端にそれは朱に染まり、肢体が強張る。それは紅葉にも似た光景。 綺麗だと、今度は頬に口接けて、そのまま首筋を下っていく。 「・・・・・・・・っ」 肩の付け根付近を軽く噛めば、びくりと跳ねる身体。いつも思うけど、本当に敏感だね。 気を良くして、服の中へと手を差し入れる。滑らかな肌触り。女性のそれと比べても劣りはしない、 いや勝っていると言えるだろう。実際に女性の肌に触れた事のある僕が言うんだから間違いない。 少し性急かとは思いつつ、胸の頂へ手を伸ばす。引っ掻くようにして擦り上げれば上がる、悲鳴。 「・・・ぃあっ!」 「・・・・・・痛かった?」 心配するような科白とは裏腹に酷薄に笑んでいるであろう自分を自覚しながら問えば、 下敷きにされた金銀の瞳は僅かに怯えるような気配を見せて。 「・・・・・・ス・・・・・カー・・・・何を苛立って・・・いる?」 切れ切れに、今にも泣きそうな瞳で僕を見上げながら訴える青年―カーマイン。 普段からとても綺麗だけど、こういう時に見せる表情は普段のそれと比べようがないほど美しく。 それだけで奥の方の何かが満たされる。でも彼が言う通り、僕は今どこか苛立ちを感じている。 それは無謀だと分かりながら彼が抵抗するためか。否、そうではない。それはきっと彼が 先ほど、自分が強硬手段に出るまで一度もこちらを見なかったから。嫉妬だとか、独占欲だとか 人が持つ感情の中でも特に醜いものが蠢いたから。 「・・・・・・・何でもないよ」 「何でもないって・・・・・っあ!?」 抗議の声を上げるカーマインの胸に舌を這わす。冷たい肌。でも次第に僕の熱が移って温まる それがとても愛おしい。口にした事はないけれど。未だに絡んできて僕を遠ざけようとする腕を 押さえつけて、紅く熟れ始めた蕾を弄る。ぴちゃぴちゃ、殊更大きく音を立てて。清い彼が少しずつ 自分というものに犯されていく様はこの世に蔓延するどんな娯楽より甘美。同時にとても 罪深い事なのだろうけど。しかしどれだけ業が深かろうとそれで彼が手に入るならそれでいい。 僅かに残る罪悪感を押さえ込んで、胸の飾りと同時に下肢へと手を伸ばす。服の上から中心を 辿って、やんわり撫で上げる。 「・・・・・ふ、ぅ・・・・・・・・」 「口と違ってこっちは素直だよねぇ」 「・・・・なっ////」 「だって・・・・・ねえ」 既に緩く反応しているそれに、下衣を剥いで直に触れる。指先に感じるぬめり。ぽたぽた、透明な 先走りを垂れ流すそれを優しく掴んで、擦り上げると、びくびく全身が跳ねて。陸に上がった魚を 連想させる。愛らしい反応。でも少しだけ物足りなくなって、今までずっと弄っていた胸から唇を離し、 濡れた性器へと口接けた。 「あ、・・・やぁっ!」 「ダメだよ、逃げちゃ」 「や、はな・・・せ」 仰け反る背、捩る肢体。何とか押さえつけて、横から口で挟み込み茎を食む。上から流れてくる蜜を 舐め取って、そのまま先端へと唇を寄せ、中ほどまでそれを口内へ含んだ。驚愕に見開かれる両眼。 目元には涙。拭ってあげたいけど、その余裕もないのかもしれない。ただ、口腔で熱くなっていくそれを 宥めるように、急き立てるように追い詰めていくだけ。彼の目にはきっと僕には余裕があるように 映っているのだろうけど、実際はそんなものはない。彼が思っている以上に僕は彼に溺れている。 だってそうでもなければ人間相手ならまだしも本になんて嫉妬したりしない。彼の視線を受ける 全てのものが許せないなんて、子供ですらありえない事。嘲笑が出る。 「・・・・・・オスカー?」 不穏な空気を放つ僕に気づいたのかさっきよりも表情が困惑したものになっている。 そういう顔も可愛いけど・・・・と見当ハズレの事を考えつつ、にこりと微笑み返し、再び口に銜え込んだ 欲を責め立てる。訝しむ彼は可愛いけれど、僕に余裕がないのを気づかれるのは頂けない。 誤魔化すように、動きを早めて、するりと空いた片手を最も奥まった秘部へと宛がう。 きつく閉ざされた蕾を開くように、何度も指先を行き来させて。拒むようにしていたそこが柔らかく、 指を飲み込むほど蠢き始めたところで漸く上体を起こす。 「痛いの嫌なら、大人しくしてるんだよ?」 「えっ、な・・・・に・・・・・・っ!!?」 「ほら、深呼吸して・・・・・っ」 「ン、あ、ぁぁああっ!」 ぎしり。ソファが軋んで。カーマインの内部へ自分の猛った雄が飲み込まれる。 ぎゅうぎゅう、痛いくらいに締め付けてくれるけど、何とか堪えて。ゆっくりと抜き差しを繰り返す。 せめてこの瞬間だけは、彼が僕の事だけを思い、考え、感じるように。 「・・・・・も、う余所見しちゃ・・・・ダメだよ?」 「ん、あっ・・・・ふぁ、何・・・・っ」 「君が見ていていいのは・・・・僕だけだからっ」 きっと、何を言っても理解出来てないのだろうとは分かりつつ、言いたい事を言って、カーマインが意識を 飛ばすその瞬間まで僕は彼の艶やかな肢体を貪り続けた――― ◆◇◆◇◆ 「・・・・・・・ごめん、ね?」 ソファから、部屋に備え付けられた簡易ベッドへ、意識のない青年の身体を運んで。 真っ白いシーツへ散らばった黒髪を撫でながらぽつり、呟く。本当は自分の黒い感情で彼を苦しめたく なんてない。ドロドロに蕩けるほど甘やかしてしまいたい、苦しみなんてもの感じさせず、いつも幸せそうに 微笑んでいられるようにしてあげたい。でも、そこまで僕は大人になりきれなくて。自分だけを見て、と 我侭を押し付けて無理をさせて。でも、それは本当に痛いくらい好きだからこそなのだと分かってもらいたい。 せめて彼が目覚めたその時は、不要なほどに甘やかしてあげよう。そして密やかに、悪戯っぽく告げよう。 ―――僕だけを、君の瞳の住人にして、と。 fin タイトルは某バンド様楽曲より(笑) 拍手に使っているSSの続きという事でいきなり事に及んでます。 オス主はアー主に比べれば鬼畜色が強い気が・・・・(汗) それにしても短いですね。いや、長いのもどうだろうとは思いますが・・・。 オス主は書くのが難しいのですよー(逃げ) Back |