焦がれに焦がれた白い横顔。

それが朱に染まっていくのを見下ろすのが、こんなに胸を震わすとは

想像すらしていなかった―――




白い横顔3




「・・・・ん、んっ」

初めは拙かった舌の動きが、元来の器用さと相俟って次第に円滑になっていく。高い熱が、奥に潜むメークリッヒを
誘い出し、絡め取り、時折強く吸う。本当に今自身に圧し掛かっているのは六つも年下の少年なんだろうか、と
くちゅくちゅと淫靡な水音を立て口付け合っているせいで朦朧としかけている頭でメークリッヒは思う。
大体、ルキアスの年からいってこういう経験がこれまでにあったとは考えにくい。それなのに翻弄されかかっている
自分が何だか恥ずかしくて余計に息が上がる。

「・・・・っふ・・・・ルキ・・・」
「何、アンタ・・・可愛いな」
「なっ・・・・!」

カッと白い横顔が羞恥で紅く染まる。ルキアスは滅多に見ないメークリッヒの様子が愛おしくて、髪を梳きながら
唇だけでなく、額やこめかみ、頬と口付けを落とす。成人前の高い体温が冷えた肌に心地良い。耳裏から首筋を
撫でられてメークリッヒは鼻に抜けた甘い吐息を零す。ふと見上げれば幼い瞳が無垢に自分自身を見下ろしている。
堪らなくなって顔を逸らそうとすると指先で触れられていた首筋に、噛み付く勢いで吸いつかれ、組み敷かれた肢体は
どうしようもなく震えた。自分がこんなに反応してしまうのはきっと好きな相手に触れられているからだけでなく、
明らかに自分よりも幼い彼がそうしている事に少なからず興奮しているからだとメークリッヒは目を伏せる。
視界からルキアスの姿を遮断しなければ、もっとあられもない姿を晒してしまいそうで。

「あ・・・目、閉じんなよ・・・・」
「・・・・だが・・・・何だかこれは・・・・」

悪戯されてるっぽい・・・というか酷く倒錯的で妙な気分になる、と唇を噛んで堪えるメークリッヒ。普段の服なら
肌に触れる事すら困難だろうが、隈なく濡れたそれは知らぬ間に脱がされ別のローブのような簡易の部屋着に着せ
替えられていたので、細い指先が容易く潜ってくる。肩口の辺りから胸を撫で下ろされるとぴくりと身体が波打つ。
触れた指先に、メークリッヒの過剰な反応を感じ取ったルキアスは少し首を傾げ。

「つまり、見えるのが嫌って事か・・・・」
「・・・・・う・・・嫌というわけではないんだが・・・目に毒だ」
「ふぅん?じゃあ、こうすりゃいいだろ」

目を伏せていて何が起きているか分からぬメークリッヒをいい事に、ルキアスはベッドの傍に置いてあったタオルを
手に取るとそれでメークリッヒの目を覆った。突然訪れた布の感触にメークリッヒは目を開く。けれど、目を開いても
何も見えない。そこで初めて自分が目隠しされていると気づき、タオルの結び目へと手探りで手を伸ばそうとする。
が、それをルキアスが許す筈もなく、鎖骨の窪みに吸い付く事で動きを鈍らせ、その隙にメークリッヒの手を
ヘッドボードへと服の帯を利用して縛りつける。

「あ、ちょ・・・ルキアス、何を・・・」
「大人しくしてろよ、暴れると手首に傷がつくぜ?」

ぎゅっときつく結び目を締めると、強く縛りすぎたのか痛そうだったので少し緩め、うっすらと涙の跡が残る頬を
ざらりとした熱い舌で舐め取っていく。目を隠されて腕を縛られて、それは酷い事に思えるのに、
ちろちろと頬を舐める仕種はまるで犬猫がするようで、メークリッヒはいまいち怒る気になれなかった。
ただ力なく問いかけるだけ。

「・・・何でこんな事・・・・」
「だってアンタ目隠し取ろうとするし・・・それに縛っとかないといざという時逃げそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「オレはアンタと違ってガキだから途中で止められると困るんだよ」

言われてメークリッヒはハッとする。確かにルキアスの年なら途中で止められると辛いだろう。
成人していればある程度性欲に自制がかけられるが、十代はそうもいかない。もしかしたらまだ自分の慰め方すら
知らない可能性もある。ここは自分が折れるべきか、と仕方なくメークリッヒは溜息を吐いてルキアスに促す。

「ルキアス、逃げないから腕の拘束を解いてくれ」
「・・・・・・痛いのか?」
「それもあるが・・・・これじゃ俺がお前に触れないだろう・・・?」
「・・・・・・・・・・・・分かった」

甘い囁きが鼓膜を襲ってルキアスは促された通り、メークリッヒの腕を縛った帯を解く。解放されてメークリッヒは
強張った肢体を弛緩させる。目隠しは外されなかったが、どうせ目を瞑っているつもりだったのでまあいいかと
半ば開き直った。艶やかに笑んで、自分の上に跨る少年を煽る。

「・・・続き、しないのか?」
「・・・・するよ。言われなくても」
「・・・・・・・・ん」

平らな胸に置かれていた手が再び彷徨いだす。身体の形を探るようにラインを辿り、腰骨の辺りをゆっくり撫でる。
敏感な部位への接触にメークリッヒは悶えた。ぐっと力を込められれば下肢が疼く。シーツを掻き乱して身を捩れば
着ている服が乱れ、隠れていた上半身が露になり、胸の中央部に大きな傷痕があるのが見えた。

「・・・・この傷・・・どうしたんだ?」
「ああ・・・それは・・・三年前イリスを助けに行った時にネーリスに・・・・」
「大地の巫女を守るため・・・か。で、傷を作ったのはあの機械の女ってわけね・・・・」
「・・・・・ルキアス・・・?」

見えないが、何処となくルキアスの言葉に篭る棘を感じ取りメークリッヒは眉を顰めた。怒らせるような事を言った
つもりは毛頭ない。ならば何故ルキアスから僅かながら怒気を感じるのだろう。表情を窺う事が出来ないだけに余計に
不安になる。その間にいきなり胸の上の傷を噛み付くようなキスが襲う。

「・・・・ッ!」

突然訪れた痛みにメークリッヒは身体を弾ませた。傷は残っているだけで今は殆ど痛みはないはずなのに。
それだけルキアスの噛む力が強かったのか。噛まれたところからずきずきと鈍い痛みが毒のように広がっていく。
ルキアスも強く噛みすぎたと思ったのか宥めるようにその部分をざりざりと舐める。

「・・・悪い、痛かったか?」
「・・・・・・少し。一体何を怒ってるんだ」
「別に・・・・何でもねえよ。ただ・・・アンタが・・・やっぱ何でもねえ」

何かを口にしかけてルキアスは結局黙してしまう。言いたくなかったのだ。メークリッヒに常に付き纏う女性の影が
気に入らなかったのだと。巫女に至っては、メークリッヒは嘗てその命を捨ててでも守ろうとした。そこに恋愛感情が
在ったのかは分からないが、ただの使命感だけでそこまで出来るとも思えない。もし、メークリッヒが昔、イリスの事が
好きだったら?今はそれを忘れているだけでは?考えるだけでどす黒い感情が胸に込み上げてくる。

「ルキアス・・・?」
「だから、何でもねえって。アンタが好きなのは・・・オレなんだろう?」
「ああ。改めて聞くな、照れるだろう」
「サラッと言ってんじゃねえか。本当にアンタいつも余裕顔してんな」

ルキアスからしたら確認するのは実はかなり勇気の要る事だったのだが、メークリッヒは相も代わらず淡々としている。
行為の最中なのだというのも忘れさせるほど。それもまた腹立たしく、ルキアスはその変わらない表情を乱れさせようと
メークリッヒの白い肌の上で唯一色づいた胸上の花に唇を寄せる。舌で転がし、口内に含むと徐々にメークリッヒの
息が上がり、さらに白い肌にも汗が浮き、色を変えていく。反応の変化に気を良くしたルキアスは反対側の花にも手を
添えて指の腹で潰すように擦る。堪らずメークリッヒは甘い声を上げた。

「・・・あっ・・・・ルキ・・・・んぁっ・・・・」
「やっと表情変わったな。でも・・・足らない」

もっともっと見も世もないほど乱れるところが見たいと、空いている方の手は適度に引き締まった腹筋を辿って下肢へと
下っていく。するりと下着の下に潜り込んだ幼い手は緩く反応を示している男の欲を掴んだ。根元から頂上までを
ゆっくりと撫でる。その先端まで指を運ぶとぬるりとした液が絡み付いてきた。それが悦楽の証だと気づくと
ルキアスはほっと息を吐く。

「・・・・よかった、アンタもちゃんと性欲とかあったんだ」
「なっ?!」
「だってもう濡れてる・・・・」
「・・・・・ッ、言う・・・な・・・ふぁっ」

強く先端を擦られて抗議の声は掻き消される。軽く上下に扱かれるだけで全身が性感帯になったような感覚がするのは
視覚を奪われ、他の五感が研ぎ澄まされているからだろうか。くちゅくちゅと中心から溢れ出す蜜が立てる音にも
犯されているような気になってきたメークリッヒは抵抗を試みようとしたが既に身体に力が入らない。自分の上から
退けようとルキアスの服を掴むが引っ張ったところでびくともしなかった。

「何だよ、往生際が悪いぜ」
「そ・・・な事言われ・・・ても・・・・っは・・ルキ・・・目隠し・・・もう取ってくれ・・・」
「何でだよ。見えるのは・・・嫌なんだろう?」
「・・・このまま・・・じゃ・・・おかしく・・・なりそ・・・だ・・・。それに、俺ばかり見られているのは・・・」

ずるい、と掠れた低音が囁くのに一瞬胸を高鳴らせ、ルキアスはそっとメークリッヒの後頭部へと手を回し、タオルの
結び目を解く。目隠しを取られたメークリッヒはぎゅっと閉じていた瞳を開く。そうすれば目元は朱に染まり、金の瞳は
涙で潤んでいるのがよく分かる。今まで目が見えなかった分、普段と変わらぬ表情に見えていたが、それが
露になるともう充分なほどにルキアスの愛撫に感じていたのが知れた。安心したルキアスはメークリッヒの目尻に
軽く口付けて、手を動かす。蜜をたっぷり指に絡め、それを更に奥まで移動させ、ひくりと既に収縮を始めている蕾に
塗りつけていく。指が細いからか思ったより簡単に内へと忍び込めた。

「あ・・・ルキアス・・・・そこ、は・・・」
「・・・・?男はここに入れるんだろ?」
「・・・・・・・・だが・・・・」

分かっていても実際にされると恐怖にも似た感情が押し寄せる。けれど内襞を遠慮なく探っていた指先が柔らかな
内部の中で唯一堅さを持つ部分に触れると、頭が白くなりそれどころではなくなった。ひっきりなしに啼くメークリッヒに
ここがいいのだと知らされた少年は意図して同じ場所を何度も行き来する。

「ああ、アンタのそういう顔初めて見た・・・・」

うっとりとした蕩けた声が上から降って寄越される。ずっと凛とした白い横顔しか見れなかったのに、今この時は
真上から、しかも普段は到底見せる事がない艶めいた表情を自分一人だけが眺める事が出来て、誰にとも分からぬ
優越感が込み上げてきたルキアスは、柔らかく、愛おしげに微笑んだ。

「・・・・ルキ・・・ア・・・」
「アンタの事、全部オレにくれよ」
「!・・・・・ぅ、あ・・・んんんっ」

完全に天を向くメークリッヒの中心を弄りながらルキアスはつい先ほどまで指が入り込んでいたその場所に自分の
欲望を押し付け、押し入った。まだ幼いそれでも受け入れる側にはかなりの圧迫感と苦痛が押し寄せる。
しかしそれを分かっているのかいないのか、ルキアスは心持ち楽しそうにメークリッヒの中心を扱き、流れ落ちる蜜を
掬うと興味があるのか指と指の間に粘着質に絡まり伸びるそれを舐め取っていく。

「や・・・ルキアス・・・・やめろ・・・・」
「・・・・なんか苦いな、コレ」
「だからやめろと・・・くっ・・・・んん」
「苦いけど・・・・アンタがそういうやらしい顔するならもっと舐めてもいいや」

響きだけは子供らしく、けれどそれを口にする表情も言葉もとても十五歳には思えぬ淫らなもので。知らず、
メークリッヒは内部に埋まっているルキアス自身を締め付けた。予期せぬ快感にルキアスもどちらが攻められているのか
分からぬような甘い吐息を零す。込み上げてくる吐精感を眉間に皺寄せて何とか耐えるとルキアスは細い腰を動かす。

「ひっ・・・・あぁ、ん・・・・・」
「・・・・ッ、メークリッヒ」

初めての事で要領を得なかった動きも、先走りが潤滑剤代わりになり、次第に円滑になっていく。
荒い呼吸と甘い声、それから結合部から漏れる卑猥な音が互いを高みへと上り詰めさせて。一際強く、ルキアスは
狭い最奥を突き上げると、身体の硬直により搾り取る勢いで顫動を繰り返すメークリッヒに誘われ、その内部をすら
白く染め上げるかのように飛沫を放っていた。

「あ、ああ・・・・んぁあっ・・・!」

自分の内に熱い熱を注がれ、その計り知れない衝撃にメークリッヒもずっと震えていた欲望から精を解き放ち、
シーツが作り出す白の世界に浸るように長い睫毛を伏せた。



◆◇◇◆



まだ疲労の残っているうちから行為に走ってしまったせいか、本来なら余るほどの体力があるはずのメークリッヒは
深い深い眠りについていた。それを真上から覗き込みルキアスは満足げに息を吐く。ほんの数分前の乱れようが
嘘のように清らかな寝顔。肌も髪も白くて、雪のようだと汗の引き始めたこめかみをなぞる。けれどそれは雪のように
触れた箇所から溶けるようなことはなく。手のひらに優しい感触を残す。

「・・・・おやすみ、メークリッヒ」

ずっと見つめていた白い横顔が、目前の少しあどけない寝顔と入れ替わるように記憶に刻まれていく。
もう、横顔しか見れない悔しさを感じる事もない。それどころか、誰も知らない彼の表情を今日知ったのだ。
きっと暫くは優越感に顔の綻びが消せないだろうとルキアスは自分の両頬を手で押さえる。
それから過去の罪の意識で悪夢に魘され続けていた少年は、そんな事を微塵も感じさせぬ幸せそうな表情で
メークリッヒの隣りへとその身を横たえ、優しい夢の縁へと誘われた。




fin


ふう、キリ番漸く消化です。遅くてすみません。
というかルキアス君初めてなのに目隠しプレイってどうなの?(殴)
他のCPと何か差をつけねばと暴走した結果がこれです。あれー?
でもルキアスは結構ませてると思うのですよ。可愛いけど←?
いや、なんかもうすみません。土下座しながら読経したいと思います・・・・!



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