誰にだって醜い感情の1つや2つはあると思う。
オレの場合は救いようのないくらいの────独占欲だった。




独占欲








前々から気にはなっていた。
ローランディアの英雄カーマイン=フォルスマイヤーは一時的とはいえ、確かに敵であった人物たち、
バーンシュタイン王国のインペリアルナイツたちと異常なまでに親しい。

アイツ等には色々と煮え湯を飲まされてきたはずなのに。
まあ、その点ではオレも他人のこと言えねえけど、な・・・・・。

ホント何でガムランなんかに騙されちまったんだろう。
好きな奴のことを信じてやれずに命を狙うなんて馬鹿にも程があるってもんだ。

ガックリと肩を落とし、ゼノスはカーマインの方へと視線を移す。
そこには憎らしくなるくらいに仲良さげに話すカーマインと二人の男の姿があった。
他でもない、帝国最強と謳われるナイツ筆頭アーネスト=ライエルとオスカー=リーブスである。

以前はそんなでもなかったのだが、ゲヴェルを倒してからというもの何年も前からの親友みたいに
仲が良いこの3人。
仲間として行動を同じくしているオレでも入っていけないような、そんな壁を感じる。
単にこの3人が飛び抜けた美形揃いってこともあるんだろうけどな。

だが、だからこそこっちは気が気じゃない。
ライエルとリーブスは男のオレの目から見ても抜け落ちたところのない、早い話がイイ男共だ。
今はカーマインにその気がなくても将来的にアイツ等に惚れないっていう保証もない訳で。
しかも現にライエルとリーブスの方には、オレの目が節穴じゃない限りカーマインに気があるように見える。

・・・・・・・ってオレ、そこまで判ってんなら黙って傍観しちまってるのはマズイじゃねえか。
先手必勝を相手に決められる前にこっちがカーマインを捕獲しておかねえとな。

遠巻きに3人を眺めていたゼノスはパチリと自分の両頬を叩き、ズカズカと今も尚何やら話し込んでいる
3人の方へと近づいていった。




「おい、カーマイン」

「・・・・・・・・・・・?」

大きめの声で目的の人物を呼ぶとふわりとした所作で黒髪が振り返る。

「どうしたんだ、ゼノス?」

「あー、えっとそろそろ時間だから呼びに来たんだよ」

休暇は夕方までだろっと言って西日が差し込んでいる王城の大きな窓を指す。
するとカーマインは綺麗な双眼を見開いて滅多に見せない焦りの表情を見せる。

「あ、もうこんな時間か。悪い、話しすぎた」

本当に申し訳なさそうに眉を顰めて2人の男に謝罪すると美麗な青年は自分を呼びに来た男の元へと
走ってきた。

「本当にすまないな。話の続きはまた今度」

「ああ、またな」

「次回を楽しみにしてるよ、カーマイン」

オレとの距離を半分程埋めたところでカーマインは振り返ってライエルとリーブスに小さく手を振った。
その様がかなり可愛くて思わず抱き締めてしまいたくなったがさすがに人前では、と堪える。
せめて肩を抱くくらいはいいよな、と勝手に言い訳し、カーマインの細い肩を自分の腕の中に引き込んだ。

「・・・・・・?何だ、ゼノス?」

「別に何でもねえよ。ほらサッサと皆のとこに戻んねーとおっさんとティピが煩いぜ?」

「あ、ああ・・・・そうだな」

話題を変えて役得を興じれば背後から何やら好からぬ視線を感じ、チラッとそっちを見遣ると先程とは打って変わって
端正な顔に怒り、というか憎悪にも似た感情を乗せた2人の男の姿が映った。

ゲッ、マジでアイツ等カーマインに惚れてんのかよ。
オレの読みも案外馬鹿に出来ねえ・・・・・・なんて言ってる場合じゃねえ。
あの2人を敵に回すっつうのは抜けてるオレでも危険だっていうことは判る。

こりゃ早いとこ手を打たねえとな。
などと青年の肩を抱く男が邪まな考えに思いを馳せていることも知らず、カーマインは仲間の元へと歩を速めた。



                         *****



「・・・・・・・・ッ」

カーマインは低く呻くと華奢な肢体を今夜泊まる宿屋のベッドへと沈めた。

「おい、大丈夫か・・・・・・・・?」

先程集合時間に遅れた罰としてカーマインはティピの十八番、『ティピちゃんキック』を見舞われていた。
あれだけちっこい身体のどこにそんな力があるんだかもろに喰らったカーマインは軽く意識が飛びかけたらしい。

「・・・・・大丈夫だ。ったくティピの奴、思いっきり蹴飛ばしてくれたな・・・・・・・・」

未だにヒリつくらしい額を擦りながらカーマインは金銀妖瞳を薄い瞼で覆い隠した。

「大丈夫そうには見えないけどな。
 そうだ、痛くなくなるお呪いって奴をやってやろうか?」

「・・・・は?何だそれ・・・・・・・・・は!?」

カーマインが言い切る前にそっと額へと唇を押し当てる。
するとカーマインは驚愕を露にし、ビクリと身を竦めた。

「・・・・・・ゼノス、何するんだ」

グイッと細腕でオレを引き剥がそうとするカーマインに薄く笑むと、逆にその腕を掴んで押さえつける。

「何するか、はこれからのおまえの返答次第だな」

「・・・・・・・・・?」

「おまえ、ライエルかリーブスに惚れてんのか?」

「・・・・・・・・・・・・・はあ?」

不躾な質問だとは判っていたが訊かずにはいられなかった。
対するカーマインは何でそんなことを訊くんだとでも言いたげな表情でオレを見上げている。

「・・・・・・・何の話だ?」

「何のって・・・だっておまえアイツ等と異常に仲良いじゃねえか。それでオレ・・・・・・・」

「・・・・・あの2人は確かに好きだけど、友人としてだ。だから・・・・・・その、そういうのじゃない」

どこか照れた風に頬を朱に染め、視線を外すカーマインが酷く愛おしく感じられてゼノスは薄く開いたカーマインの
唇を強引に塞ぐ。

「・・・・・ん、ふう・・・・・・・んんっ」

逃れようと青年が身動きするのを許さず、ゼノスは奥の方へ隠れていた舌を自分のもので絡めとり、吐息すら奪う
かのように激しく吸い上げた。

「はっ・・・・・何を、・・・・・・・やめ」

呼吸も侭ならぬ状態で抵抗しようにも腕に力が入らずカーマインはゼノスに為すが侭になる。

「・・・・・・オレは、おまえが好きだ。だから・・・・・・おまえが欲しい」

「!!」

「嫌なら・・・・今ここでそう言ってくれ。でないとオレは・・・・・・・」

おまえを抱く、と淡く色付いた耳元に吐息と共に吹き込むとカーマインは目に見えて身体を強張らせた。

「・・・・頼むから・・・・・・・・何か言ってくれ」

「・・・・・・・・・・お、れは・・・・・・・」

「何だ?よく聞こえねえよ」

「・・・・・・・俺、ゼノスにキスされても・・・・・・そりゃあ驚いたが・・・・・嫌ではなかった。
 ・・・・・・・・・・・だから・・・・・・・多分、俺もゼノスのこと・・・・・・・・好きなんだと、思う」



一瞬、思考が止まった。
今カーマインは何て言った・・・?
『オレのことを好きだ』と・・・・・そう言ったか・・・・?

慌てて眼下の綺麗な顔を見下ろすとさっきよりもずっと紅くなっている。
それに瞠目しつつ、あまりの嬉しさについ顔が綻んでしまう。

「・・・・・・・何笑ってるんだ」

「いや、嬉しくってよ。そんなビクビクしなくても大丈夫だって。初めてなんだろ、オレは優しくしてやるぜ?」



                         *****



この時、恐らくオレはかなり性質の悪い笑みを浮かべていたのだと思う。
普段はこれでもかってくらい気丈なカーマインが小動物みたいに怯えてるんだからな。

「ゼノス、ちょっと待っ・・・・・・・あっ」

「悪ぃけど待てねえよ」

慌てるカーマインをベッドに押し付け桜色の唇に再度キスを落とし、衣服に手を掛け、そのまま唇を下降させ各所に
跡を刻む。

「あっ・・・・・んん」

首筋に、鎖骨に、肩に、胸に緋色の印を残しながらゆっくりと愛撫を施し、ふとカーマインがどんな表情をしているのかが
気になってそっと覗き見る。
すると異彩の双眸はきつく閉じられ、額には汗で張り付く漆黒の髪が光り、頬はうっすらと赤らんでいて。
『妖艶』って言葉はコイツのためにあるんじゃないかなんて下らないことを考えてしまった。

「あ、あう・・・・・はっ、ああ・・・・・・・」

薄く形の良い唇から堪えきれないというような切なげな喘ぎが漏らされオレはニッと口角を引き上げ、僅かに震える
カーマインの中心を弄る。
優しく、キツく緩急をつけて扱けばみるみるうちに熱を集めて。
背を撓らせ、シーツを握り締めるカーマインの張り付いた髪を払い、解放を望む自身を口腔に招き入れ、熱い舌を這わせる。
ゾクリと背筋に氷でも落とされたみたいにカーマインの肢体は大きく跳ね上がり、軽く先端に歯を立て、吸い付けば
叩きつけられる精。

それを飲み下し、達したばかりの敏感な身体の内部に指を埋める。
初めは侵入を拒んでいた器官もだんだんと指を奥へと誘い始め、内が柔らかくなってきたところでズルリと指を引き抜く。

「うっあ、あ・・・・・あンン」

一際高く声を漏らし、涙目で見上げてくる澄んだ瞳に口付けゼノスは今さっき慣らした青年の内壁へと押し入る。

「ひっ、あ、あっ・・・・・やあっ・・・・・ッ」

「くっ、大丈、夫か・・・・?」

イヤイヤと頭を振るカーマインの黒髪を梳き、零れ落ちる涙を唇で拭って宥め、改めてゼノスはカーマインに
腰を打ち付ける。

「ん、やっ、はぁ・・・・・・ああっ」

「・・・・・カーマイン・・・・好きだぜ・・・・・・・」

言いながら一気に動きを速めると腕の中の青年は艶やかな嬌声を上げ、大きく身を震わした。

「ひ、あああああっ!!」

「うぐ・・・・・・・!」

絶頂を向かえ、白い肢体は蜜を迸らせ。
その内壁にゼノスはキツく締め付けられ、間髪入れずカーマインの最奥へと大量の熱を注ぎ込んだ。



                         *****



「いや、だから悪かったって」

翌朝、半ば強制的に抱いた形になってしまったカーマインへと謝ると、ギロッとそれは初めて見るような鋭い視線を
向けられる。
はっきり言って人1人くらいなら簡単に射殺せそうなくらい、だ。

「・・・・・・・俺は君のことを好きだと思うとは言ったが・・・・・・あの“行為”を許した覚えはない」

「・・・・・・うっ、そりゃ歯止めが効かなくってだなぁ・・・・・・・・」

「俺を捕まえておきたいのならせいぜい反省することだ。この借りは高くつくぞ」

「ううっ・・・・・・・はい」

殆ど見ることのない青年の怒りの表情にゼノスは今度からはちゃんと了承を取ってから事を進めようと思い直す。

「・・・・・にしてもカーマインって怒るとおっかねえな・・・・・・」

などと愚痴を溢すと、それがカーマインの耳へと届いたらしく。

「・・・・・・・ゼノス」

にっこりと怖いくらいの氷の微笑を浮かべ、カーマインがオレの名を呼ぶ。
オレは嫌な予感を覚えつつも引き攣った笑みで訊き返す。

「な、何だ・・・・?」

どうやらまたオレの読みは当たったようで。
綺麗に微笑んだままのカーマインはくるりと後ろを向き。

「やっぱりゼノスなんかよりアーネストやオスカーと仲良くしとこう」

「そ、そんな〜。本当に悪かったって反省するからそれだけは止めてくれ、頼む!」



その後ひたすら謝り続けて何とかカーマインを引き止めたものの、これから暫くはご機嫌取りに励まなくては
ならないなとゼノスは大仰な溜息を吐き出したのだった。


★教訓
この世には独占するのが非常に困難な人物もいると学習すること。




fin





・・・・・・・・・・・(><)
も、ももも申し訳ありませんPie様。
超駄文、言い訳の仕様がないくらい駄文。<本当だよ全く
一応ゼノ主で裏チックなものを書いたつもりなのですが時間的にゲヴェルを倒した直後だと思って下さい。
それから俄然リテイク受け付けてますので気に入らねばバシッとお申し付け下さいませ★


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