「コリンから見た世界ってどうなってるんだ?」

そう何気なく口にした言葉が、ゼオンシルトの一日を大いに狂わせる事になるとは、
この時点の彼には知る由もなかった。



fairytail




それは忙しい日々の合間に漸く数日とはいえ、休暇をもらえたある日の事。
ふよふよ空に浮いていたコリンは、何を思ったかぽすりと金髪の柔らかな髪の上に座り。
ばあ、と逆さまに緋色の瞳に映り込む。そんな彼女をゼオンシルトは瞬きしながら見守った。
何とも反応が鈍い。つっまんなーいと言いつつ、コリンは自分からしたら鏡とも言える大きさのルビーの眼差しに
映る自身を見て楽しげに遊び始める。

「えっへへー。アンタの目ってぴかぴかだね。良く映る〜♪」
「・・・・・・そう?」
「うんうん。何か宝石みたい。ねえねえ、アンタにはさ、世界がどんな風に見えるの?」

やっぱり紅いの?なんて無邪気に聞きながら、未だに逆さまの状態で長く水色の髪を揺らす。
コリンからしたら人間とは未知の存在で興味深いのだろう。ゼオンシルトから見た彼女がそうなように。
だから、気づいたら言っていた。

「そういうコリンから見た世界ってどうなってるんだ?」
「へ?アタシから見たら?そうねー、みーんな大きく見えるわね」
「・・・それだけ?怖くないのか。自分より大きいものばかりだろう?」

頭に血が上ってきたのか、コリンは顔を上げてゼオンシルトの頭の上にどっかりと腰を下ろして唸りつつ考える。
確かに、この世界にはコリンより小さいものはそんなにない。人間だって相当な脅威となる大きさだ。
それでもあまり彼女に危機感がないのは、気が大きい方ではないゼオンシルトにとっては不思議な事で。
小首を傾げば頭上の少女は大いに慌てた。

「ひゃああ、こら!危ないじゃない!!落ちちゃうでしょ!」
「え、あ・・・ごめん」
「幾ら羽があるって言っても急には飛べないんだからー、気をつけてよね!」
「だからごめんって。・・・・・それで?怖くはないのか?」

真剣に謝った後、まるで何事もなかったかのように同じ質問を繰り返すゼオンシルト。マイペースな奴、とは
コリンから見た彼の印象。しかも悪気がないのだから性質が悪いかもしれない。呆れて溜息一つ零すと
少女は座っているのは危ないと踏んだのか、再び飛び上がり。

「そんなに気になるんなら、なってみればいいじゃない」

変な事を言う。なってみればというのは彼女の大きさに、という事だろうか。無茶を言うにも程がある。
そんなに簡単に大きさを変えられるものならきっと皆しているに違いない。面白そうだもの。
ゼオンシルトは唇を尖らせた。

「なれるわけないだろう」
「なれるってー。だってこの間ファニル小さくなってたもん!!」
「・・・・ファニルが?」
「本当だもん、嘘だと思うならファニルに聞いてみなさいよ!!」

コリンちゃん、嘘はつかないもん!腰に手を当てて堂々と言い放つ彼女の言葉を受けてゼオンシルトは
ほんのちょっぴりだけ考え、そこまで言うならファニルに確かめてみよう、と決めた。

「ファニルは休みの日は研究室にいるんだよな?」
「そうだよー。偶には外に出ろって言ってるのにね、篭りっきりなの!」
「ふうん。そういえばコリンはファニルの研究に付き合うためにいるんじゃなかったのか?」
「あー、妖精の魔素の事について、だっけ?何かそれより優先して欲しいって言われてる研究があるんだって」

どうやら、その優先して欲しい研究とやらが終わるまで妖精の研究はお預けらしい。
道理で休みだというのにコリンがふらふらしているわけだ。ファニルの研究室へと移動しながらゼオンシルトは、
何ともいえない納得をして、自分の前をふよふよ浮かんでいる妖精を軽く突付く。

「なあによー」
「ずっと飛んでて疲れないのかなって」
「・・・・落とさないなら座ってあげる」
「じゃあ落とさないから、座っていいよ?」

差し出された指先に掴まって、導かれるままにコリンはゼオンシルトの肩へと座る。そこが別に指定席でも
ないというのに、落ち着いた感があった。お互いが何処となく楽しそうに笑って。そうこうしているうちにファニルの
研究室前へと着いてしまった。

「・・・・研究の邪魔にならないかな?」
「邪魔してもしなくても、失敗ばっかりだから大丈夫よ」
「そうかなあ・・・?」

ぼやいて、ドアをコンコン。慌てたように返事がしたかと思えば、次の瞬間甲高い悲鳴が聞こえて、
何かが落ちる大きな音。

「・・・・・ほらね」
「い、いや今のは俺が悪いんじゃ・・・・じゃなくてファニル大丈夫か?」

まだ承諾は得てないが、物音が気になったゼオンシルトはドアを開けた。するとそこには研究書に半分ほど
埋もれた哀れな少女の姿が。慌てた拍子に机周りにたくさん積まれたそれを倒してしまったようだ。
小柄な彼女の身体を押し潰すように広がる本をゼオンシルトはせっせと拾って元の状態に戻す。

「だ、大丈夫かファニル」
「は、はい〜ゼオンシルトさんでしたか・・・すみません、助かりました」
「ごめん。俺が脅かしちゃったのかな」
「あ、違うんですよ。私がそそっかしいだけで・・・あ、コリンちゃんも来てたの。何か用事ですか?」

パタパタと服のほこりを叩いて、まだ本を直しているゼオンシルトを手伝いつつもファニルは尋ねる。
それにゼオンシルトはぽりぽりと頬を掻いて。

「えっと・・・コリンが言ってたんだけど・・・ファニル小さくなれるって本当?」
「・・・・・小さく?あ、フェアリーキャンディの事ですか?」
「フェアリーキャンディって何?」

蜜色髪が隣りの亜麻色の髪の少女に向けて首を傾ぐと、少女はポケットをごそごそ漁って、ピンクの包みの
可愛らしいキャンディを取り出した。

「これ、昔私の家で読んだ古書に作り方が載ってて・・・・舐めると妖精さんくらいの大きさになれるんですよ」
「ああ、だから”フェアリー”キャンディ・・・」
「はい。何だか本来は偵察用に開発されたものみたいなんですが、
コリンちゃんと遊ぶのに丁度いいかと思って作ってみたんです。ゼオンシルトさんもお一つどうですか?」

ぽとり。手を出せば少女の小さな手からゼオンシルトへとそれは受け渡される。

「ありがとう」
「いいえー。あ、ただそれ自然と戻るには24時間掛かるんです」
「そうなの?」
「はい。だから安全なところで且つ休暇中に使用して下さいね」

危険なところだと踏み潰されちゃいますよと釘を刺すファニルにゼオンシルトは頷いた。
確かに場所を選ばなければ危なそうだ。コリンのように飛べるならともかく、ただ小さくなるだけなら
気をつけないと犬や猫でさえ脅威の対象になるだろう。そんな事を考えているゼオンシルトは余所に、
コリンは赤紫の瞳をキラキラと輝かせ。

「ねーねー、ゼオンシルト。早く小さくなって一緒に遊ぼうよー♪」
「・・・・・ちゃんと話聞いてた、コリン?」
「聞いてた、聞いてた!そうだ、折角だからキャリィに乗って冒険ごっこしよー」

仲間が増える事が嬉しいのか、聞く耳持たないコリンはゼオンシルトの髪を引っ張って急かしだす。

「こ、コリンちゃん。外は危ないですー」
「だーいじょうぶ、いざとなったらアタシが守ってあげるから♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

それはそれで嫌だなとゼオンシルトは思ったが、コリンは止まらない。物凄い勢いで髪の毛を引っ張り、
嫌がるゼオンシルトをキャリィ屋の前まで連れて行く。

「・・・・・・本当にやるのか?」
「当たり前でしょ!ほらほら、あの人キャリィに乗るみたいよ!早くキャンディ舐める!」
「え、フリーパス持ってるんだから自分で乗・・・」
「あれが最後の一匹!」

行っちゃうよ〜とあまりに大声でコリンが言うので仕方なくゼオンシルトはファニルからもらったキャンディを
口の中に放り込む。ピンクの包みだったからそうかなとは思っていたが桃の味がする。甘い。
意外に美味しくてころころ口の中で転がしていると、ゼオンシルトの身体に異変が起きた。
見る見るうちに縮んで、周りのものが大きくなったような錯覚を受ける。パチパチ目を瞬いていると、
視界には自分より少し背の低いコリンの姿。

「うわー、ゼオンシルトちっさくなったー」
「・・・・・コリンが大きくなったんじゃないのか?」
「違うよ、アンタが小さくなったの!それよりほら、早くキャリィに乗るの!」

と、言われても縮んだゼオンシルトにとって数メートルでさえ、結構な距離だ。すいすい飛んでいく
コリンを恨めしそうに見つめつつ、言う事聞いておかないと後が煩そうなので頑張って走る。
乗り手が荷物を積んでいる間にキャリィのしっぽをするすると登って荷物の中にコリンと一緒に紛れ込んだ。

「うっぷ、乗り物酔いしそう・・・・」
「ちょっとアンタ吐かないでよ」
「・・・・大丈夫。それにしても本当に小さくなっちゃったな。周りが皆大きすぎて何が何だか」
「そうなのよー。妖精は離れて見ないと何が何だか分からないのよねー」

距離感を掴むのにも苦労する。ただの人間が巨大なモンスターのように映るくらいだ。
改めて妖精って凄いなと感心するのはゼオンシルト。自分より遥かに大きな生き物といつも一緒に居るのに
あんまり怯えた感じもしないし、相当肝が据わってるんだなーなどと尊敬すらするくらいで。

「コリンから見た世界ってこんな感じなのか・・・・」
「えへへー、凄いでしょ。迫力あるでしょー」
「うん、見飽きない感じ・・・・でも風で飛ばされちゃいそう」

そよ風に木々の葉が揺らされているのを見守ってゼオンシルトはぽつりと漏らす。
それにコリンは笑って。

「あ、気をつけてないと本当に飛ばされちゃうわよ。あーあー、ファニル今度は大きくなるお菓子作って
くれないかなー。そしたらアタシもゼオンシルトから見た世界が分かるのにー」
「・・・・そんなに楽しくないよ?」
「えー、だって大きくなったらユリィの奴にギャフンと言わせられるし!」

あー、気持ちよさそー!と楽しげなコリン。いつもは小さく見える彼女が自分と同じくらいの大きさで
目の前に居るのは非常に不思議な感覚で。暫くはあちこちを見て遊んでいたゼオンシルトだったが、ゆっくり
上下するキャリィの上で揺られているうちに眠くなってきた。うとうとと舟を漕ぎ始め、しまいには寝息を
立てて眠りについてしまった。

「ねーね、ゼオンシルト・・・・あれ?」

何も話さなくなったゼオンシルトに気付いてコリンは声を掛けると、当のゼオンシルトは気持ち良さそうに
眠っていた。前々から知ってはいたが本当にマイペースな上によく寝る。

「ちょっとー、冒険気分が半減じゃない!」

つまんないよーとコリンはゼオンシルトの身体を揺するが、一度寝入ると中々起きない彼はやはり起きない。
いつもは妖精と人間でどうにも越えられないサイズ差があるため仕方ないと思えるが、今のゼオンシルトとコリンは
ほぼ同じ大きさ。なのに、全く起きない。

「もー、起きないんなら悪戯しちゃうもんね!見てなさいよー」

一向に目覚める気配のないゼオンシルトに鼻息荒くしてコリンは悪戯決行を試みる。自分の髪の毛を結わく
ためのリボンをポケットから取り出してゼオンシルトのふわふわの髪をそれで結びだす。

「うーん、これよりこうした方が可愛いかな」

色々試行錯誤しながら、最終的にカチューシャのように髪の下にリボンを通し、頭上で蝶々結びをしてやると
いかにもらしい感じになった。自分の作品の出来にコリンはご満悦になる。

「お、イイ感じ♪お人形さんみたーい。ゼオンシルトみたいな妹欲しいなぁ」

何か間違っている気がするが、兄弟のいないコリンにとってそれはひどく魅力的なものだった。
ぷにぷにと寝ているゼオンシルトの頬を突付いたり抓ったりしてみる。

「アハ、面白ーい。ゼオンシルト早く起きないかな〜♪」

最早冒険ごっこ中だというのも忘れてコリンはひたすらゼオンシルトが起きるのを待った。
しかしいつまで経っても彼は起きない。やがて気持ち良さそうに寝こける彼につられたのか、コリンも
眠たげに瞼を擦り・・・・。

「ふぁ〜、眠くなっちゃった。お休みぃ」

律儀に告げてゼオンシルトの横にころんと寝転がる。可愛い寝顔が仲良く二つ並んだ頃も、行き先も知らぬ
キャリィは休まずゆっくりと何処かに向けて歩き続けていた。ことこと、ことこと。リズムよく足音は響き。
何ともいえないのどかな時間。スクリーパーを追っている時には味わえないそれ。・・・・・が。
どんなに平和で穏やかな時間であろうとも、可哀想な事に不幸体質を持って生まれてしまったらしい
ゼオンシルトの身に不運は訪れ。

べしゃ。

キャリィの乗り手の荷の積み方が悪かったのか、道程の途中で荷物はキャリィの背から落ち、
それに紛れていたゼオンシルトとコリンも同様に地面に投げ出された。

「「い、ったぁ〜」」

色の違う声がハモる。荷物がクッションになってくれたおかげで怪我はなかったものの、落下の
衝撃は相当なものだった。寝起きの悪いゼオンシルトでさえ起きるほど。

「うえ〜ん、腰打ったぁ」
「大丈夫かコリン・・・・っと見つかる、こっち」

ただ乗りしてたのがばれると気まずい。そう考えてゼオンシルトは腰を擦っているコリンの腕を
引っ張って近くの茂みに隠れた。改めて確認すると今までキャリィに乗っていたのは行商人らしい。
恐らく各地から維持軍に仕入れをしてくれてる人だろう。落ちた荷物を丁寧に拾い、積み直すと
急いでいるのか再びキャリィに跨って先を急いだ。

「ちょっと、行っちゃうわよ」
「ああ、うん・・・。でもそこに街がある」
「あ、本当だ。じゃあいっか。帰る頃にはアンタも元に戻ってるだろうし」

あの街で時間潰しましょ♪とコリンはすいすい飛んでいく。やはり狡いと思わざるを得ない。
そんな彼女の後をゼオンシルトはやはり黙々と追う他なく、街の入り口に辿り着くまでに一時間ほど
掛かってしまった。整理の行き届いた道ならもう少し早く辿り着けたのだろうが、でこぼこな砂利道をこの姿では
厳しい。少し走っただけなのに汗まみれになってしまった。



◆◇◇◆



「・・・・・・・・・疲れた」
「何、もうバテたの?情けないわねぇ。
宿屋に行けば知り合いの妖精が誰かいると思うからちょっと待ってなさいよ。水もらってきてあげる」
「・・・・・・・頼む」

憔悴しきった掠れ声を耳に留めてコリンは街中へと飛んでいく。対するゼオンシルトは道標の前にある
大きな岩に腰掛けて暫し休憩する事にした。頬をすり抜ける風が気持ちよかったが、これ以上強くなると
危ないなと一抹の危機感をも同時に呼び起こした。小さいというのも楽ではない。

「うーん・・・やっぱり普通が一番だな」

ないもの強請りなんてするものではない。あとどのくらいで元に戻れるのかとぼんやり考えていると
誰かが街から出て来た。その人物に思い切り見覚えがあったゼオンシルトは隠れようとしたが間に合わず。
岩の上に座った小さな一見すると妖精のような青年を見つけたその人物は歩み寄ってきて。

「・・・・・・・・何をされてるのです?」

心なしか冷たい声が降って寄越される。予想していたとはいえゼオンシルトの身体は震えた。
何故なら今声を掛けてきた人物は会う度冷たい態度で接してくるからだ。今はただでさえ小さくなって
周りのものとの大きさの違いに怯えているというのに。

「・・・・・・黙っていては分かりませんよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「妖精ごっこなら余所でおやりなさい。それとも親指姫ですか?」
「?」

問われた内容の意味が分からずゼオンシルトは首を傾ぐ。その動きに合わせて彼の頭上でリボンが
ひらりと動く。コリンの悪戯を知らないゼオンシルトには目前の人物の揶揄が全く伝わっていなかった。
それが分かったのかゼオンシルトの前に立ちはだかる大きな影は彼と目線を合わせるためにか屈んで。

「頭、リボン付いてますよ。親指姫」
「!!?」
「まさかご自身が小さくなった事にもお気づきでないのでしょうか」

指摘され、頭に付いているらしいリボンを一生懸命探すゼオンシルト。その後の問いには首を振る事で
答えた。どうも驚きかそれとも恐れのためにか声が出なかったからだ。ぱくぱく口を開閉し、喉を指で示して
声が出ない事を訴えれば、吹き飛ばされそうなほど大きな溜息を目の前の人物は吐き出し。

「声が出ないのですか?」

頷くとまた溜息。

「本当に維持軍の方々は次から次へと面倒を起こしてくれますね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方・・・ゼオンシルト、でしたか。
こんなところに居て誰かに見つかったらこれ幸いとばかりに捻り潰されてしまうかもしれませんよ?」

ここはゼルドックですから。苦く笑って言う。

「そんな小さな姿で潰されてしまったら骨も躯も拾ってもらえないかもしれませんね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・流石にそれは維持軍といえど可哀想ですから、私が保護して差し上げます。よろしいですね?」

その問いにゼオンシルトは逡巡したが、彼の言う通り平和維持軍に並ならぬ敵意と憎悪を抱くゼルドックの
住人ならばやりかねないと怖くなって、その申し出にこくこくと何度も頷く。

「そんなに頭を振ったらもげてしまいますよ、ゼオンシルト」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「一応、憶えていて下さるとは思いますが私はグランゲイル軍大尉、ルーファスです。改めてお見知り置きを」

前に二、三度お会いしましたよね。確認され、ゼオンシルトは頷く。こう言っては何だが、ルーファスが
ゼオンシルトを憶えている方が意外だった。他軍の新米の一兵士の名前をわざわざ憶えてるとは普通思わない。
それも快く思っていないなら尚更。それでもルーファスはゼオンシルトの事を見知り置いたという事は、
彼がよほど律儀な人だという事だろう。感心してゼオンシルトは微笑んだ。

「・・・・・・?何を笑っているのですか」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ああ、声が出ないのでしたね。すみません。取りあえず、私の手に乗って下さい、移動します」

まるで貴婦人に差し出すかのような優美な所作で伸びてきた腕。紳士な立ち居振る舞いに
ゼオンシルトは握り潰されるかも、なんて危惧を抱く事なくゆっくりと手のひらへと移っていく。
念のため落ちないようにルーファスの指にしっかりと捕まると彼の方を仰ぎ見てにこり。

「そうしてると、本当に親指姫みたいですね」

そう告げたルーファスの笑みは、苦々しさが消えて何処か微笑ましそうだった。




NEXT


リクエスト小屋より「チビ化ゼオンでルーゼオ」なんですが、
例の如く長くなってしまいそうなので前後編です。流石に前中後には
なりませんのでご安心を。しかしフェアリーキャンディとかうさんくせっ(自ら)
ある日突然原因不明で○○化という同人の暗黙の了解が何だか嫌で無理やりこじつけて
みましたが失敗した感大有りで申し訳ないです。早めに後編UP致します〜。
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